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陸上防衛作戦部隊論(第七〇回):装甲機動旅団試案と新編即応機動連隊,その将来可能性検証

2018-02-20 20:08:30 | 防衛・安全保障
■即応機動連隊,年度末新編開始
 即応機動連隊の新編が今年度末より開始され、善通寺の第15普通科連隊、北熊本の第42普通科連隊が最初の改編部隊となります。

 即応機動連隊、陸上自衛隊の新しい作戦単位です。自衛隊の統合機動防衛力、つまり全国への基盤的防衛力としての部隊画一配置を見直す新しい防衛計画に基づき整備される部隊で、96式装輪装甲車やその改良型の新装甲車を主体とした機械化部隊に最新鋭16式機動戦闘車や小規模高射特科部隊と重迫撃砲部隊を統合し、独立した戦闘力を有するものです。

 統合機動防衛力整備の主眼は、有事の際の着上陸事案に際し、初動部隊として着上陸正面の部隊が防衛線を展開すると共に、即応機動連隊が駆けつけ前衛部隊を担う方針です。即応機動連隊は2017年度に最初の二個が普通科連隊より改編、この部隊を各方面隊へ配備、有事の際には全国から集合させる事で迅速な防衛体制立ち上げを期する事ができましょう。

 本部管理中隊、軽装甲機動車装備中隊、3個装輪装甲車化中隊、重迫撃砲装備火力支援中隊、機動戦闘車中隊、という陣容です。欧州の軽装甲車大隊に匹敵し、自衛隊では有数の機械化部隊といえるものですが、装輪装甲車化中隊は96式装輪装甲車の総数が十分ではない状況、自衛隊全体で400両弱しかない故、完全に充足させる事は当面の間、できません。

 装甲車の不足に際し、防弾ではなく防水布製の幌で覆う高機動車が装甲車の不足を補完します。装甲車化の連隊を全国に7個新編するのですから、ただでさえ少ない装甲車両をスクラップ&ビルドではなく統合機動防衛力整備に併せ、不足分の装甲車両を即応機動連隊所要として新たに500両程度増強する程度の施策は必要なのですが、予算難が許しません。

 自衛隊は規模から考えて、装甲車両が圧倒的に不足しています。一昔では戦車1100両にたいして装甲車が600両程度で、戦車と協同する上で不均衡という問題がありました、戦車が300両まで削減されたのですから、戦車縮小の台数分を装甲戦闘車が補えば問題がなかったのですけれども、装甲戦闘車の調達は2004年が最後、そのまま放置されています。

 冷戦時代では装甲車は少ないものの、その分は空中機動能力を重視していたわけですが、予算難と弾道ミサイル防衛などの新任務付与により少ない予算が新装備に取られ、ヘリコプター調達が停滞、航空部隊の優位も諸外国と比較し低下しつつあります。このため、装甲車両は装甲戦闘車で600両程度、軽装甲車両も1000両程度あって不思議ではありません。

 現在の予算をみる限りでは難しい事は認めますが、政治は自衛隊による国土防衛を真剣に考えるのであれば、即応機動連隊の編成を普通科連隊の基本編成としなければなりません、96式装輪装甲車はNATO等欧米の装甲車両と比較したならば、重装甲ではありませんが基本的な性能を備えています。車体は小型ではありますが、道路事情を考えると致し方ない。

 その上で我が国ではデフレ経済が長期継続したために実は取得費用は諸外国の装甲車よりも割安となっており、96式装輪装甲車の取得費用は9000万円程度ですが、この費用は輸出競争力があるほど安価となりました。ただ、96式装輪装甲車(改)として小松製作所が新型装甲車を開発、車高が高すぎる印象がありますが、当面この大量調達を期待しましょう。

 即応機動連隊という新しい部隊編成ですが、此処まで記した通り、装甲車不足により目的とした高い水準の装甲車緊急展開部隊完成までには時間を要しそうです。しかし、編成を見る限り、統合機動防衛力、自衛隊の陸上防衛を新しい水準で開拓する可能性を大いに秘めた部隊です。今回から数回に分けて、新しい即応機動連隊について考えてゆきましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2018-02-21 09:52:58
96式装輪装甲車(改)は
武装が貧弱なのと海上運航能力の欠落がきになりますね。
問題の防御力もそうですが、
まあどんどん価格が上がるけど。
大きさと予算との兼ね合いが大きいですかね~
でも25mm砲位は装備できるバージョンもほしいですねえ~
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