北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

レアアース問題 太平洋海底レアアース資源発見はシーレーン防衛へ影響を与えるか?

2011-07-06 23:41:16 | 国際・政治

◆推定900億トン、陸上埋蔵1000倍の海底資源

 F-15墜落や南海地震津波予測の話が気になりますが本日はレアアースの話題。太平洋底でのレアアースが確認されたとのことです。

Img_8777  日本が現在の経済活動は勿論、省エネルギー政策や太陽電池を含めた次世代エネルギーの開発にはレアアースの確保が死活的重要性を占めることになります。これらに依存する話が出つつもレアアース確保に関する国家的中長期計画の話が出てこない事が、真剣に考えていないのか、という事だったのですが、太平洋底で確保できるのであれば話は変わってきます、しかしそうなればシーレーン防衛の範囲も変わってくるのではないか、と。

Img_2512  このレアアースですが、現時点の採掘状況を見ますと陸上埋蔵量の多くが中国により算出される部分に依存する状態であり、他方で中国政府による輸出制限によりその価格は半年間で四倍以上に高騰する状態が続いています。中国からのレアアースへの依存背景には、中国産レアアースの価格が低かった事に起因するので、他国でも生産再開を行う事は可能ではあるのですが、一度閉鎖した採掘体系の再構築には時間を要する事が、この価格高騰により示されている状況。

Img_7450  そのレアアースですが、冒頭に記したとおり、東京大学を中心とした研究チームが太平洋海底に含まれる泥の中に大量に含まれる事を調査し判明しました。その埋蔵量は推定で900億トン、陸地に埋蔵されているレアアースの1000倍に達するとのことで、深海底に埋蔵されていることからその採掘技術については今なお研究を要する部分もあるのですが、採掘技術の開発により乗り越える事が出来る可能性があります。

Img_5589  ハワイ周辺海域とタヒチ周辺海域の公海部分。今回の調査により判明した埋蔵海域はアメリカやフランスの排他的経済水域以遠を含めたハワイ周辺海域とタヒチ周辺海域に広く分布しているとのことで、公海上の資源は国際海底機構により利益配分が討議され決定されるのですから全て日本のもの、とする事は出来ないのではあるのですが、中国からのレアアース供給制限に打撃を受けた日本の資源戦略には、新しい可能性を示すといえるやもしれません。

Img_9021  しかしながら、中部太平洋と南太平洋という非常に遠い海域と日本との間の、これまでシーレーンとしてあまり注目されてこなかった海域が、日本の将来に関して一部をを左右するレアアースの宝庫である、ということは必然的にこの海域での自由通行、特に米仏のポテンシャルを現状維持させることが、非常に大きな問題ともなってくる訳です。

Img_9787  ここでどうしても考慮しなくてはならないのが、中国の接近拒否戦略、地政学におけるリムランドとハートランドを再度構築するような、中国本土への米海軍による影響力を拒否する装備体系の構築で、この結果としてマリアナ諸島までの海域を含め中国海軍の動向が活発化する、という一点、そして接近拒否戦略以外にも潜水艦勢力による日本へのシーレーンの脆弱性を叩く体制を採ることによる示威能力の保持。

Img_9668  これらを考えますと、日本のシーレーン防衛政策はかつての鈴木内閣時代に提示された一千浬シーレーン防衛を越えて南西諸島重視としつつも実質的にはインド洋を考えて任務範囲が拡大している海上自衛隊のシーレーン防衛体系には、新たに南太平洋におけるシーレーン防衛体制の確立という必要性が生じてくる事を忘れる訳にはならなくなってくるでしょう。

Img_2805  難しい話です。現在のように任務はシーレーン防衛と沿岸防衛に災害派遣という従来に加えて弾道ミサイル防衛からテロ対策に海賊対処から国際人道援助まで際限なく増大する中で人員と予算と艦艇は削られる、という状況ではどうしても難しい。しかし、日本から離れた海域でのレアアース採掘を行うか、国際情勢に左右されない形でのレアアース安定確保の道筋を立てることは繰り返すように死活的問題ですので、この点も日本の“政策”として考えなければならないといえるでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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2 コメント

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軍事オタク 様 こんにちは (はるな)
2011-07-19 12:44:45
軍事オタク 様 こんにちは

フィリピンの場合はスービックとクラークフィールドと同様の基地負担を考えてもらうしかないと思うのですが、米軍再編後では、ちょっと無理でしょうね。

自衛隊は現状の防衛大綱の水準ではフィリピンに長期間予期し力となるだけの規模を展開させる能力は無い、これは確かだと思うのですが。

そういえば、随分前に普天間をクラークフィールド跡地に移転出来ないか、当時の連立与党にあった社民党は検討してみては、と書いた事がありました。グアムよりは”まだ”現自治的だろう、という事で。
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対中国で、フィリピンは米との軍事的な繋がりを再... (軍事オタク)
2011-07-07 10:01:34
対中国で、フィリピンは米との軍事的な繋がりを再構築しようとしています。

日・米・フィリピン・ベトナムの政治的・軍事的な繋がりを強化して、対中国戦略を練るべきですね。
将来は日米フィリピン等の合同軍事演習やさらに踏み込んで、フィリピン基地の日本自衛隊、憲法改正後だと名称変更して自衛軍?利用も考えられるでしょう。可能性が一番あるのは哨戒機の派遣からですかね~

南半球のオーストラリア等も含めて、強力な包囲網を構築したいものです。
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