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陸上防衛作戦部隊論(第六三回):装甲機動旅団再検討日本版機甲支隊、新作戦単位の研究

2017-11-08 20:15:12 | 防衛・安全保障
■装甲機動旅団構想の再検討
 前回の“陸上防衛作戦部隊論航空機動旅団、戦車とは根本的に異なる機動戦闘車の運用”から、一旦航空機動旅団案の展開をお休みし、傍論、装甲機動旅団の再論へ。

 陸上自衛隊は強くならねばなりません、専守防衛である我が国は自衛権先制行使という選択肢を持ちません、有事とは最初に攻撃を受け、最初の大規模攻撃を受けてからの立て直しに時間を要すれば、本土に着上陸されます。専守防衛は戦争防止の美徳として平和志向のわが国民の多くから支持を得ていますが、その結末は沖縄戦やサイパン戦のような国民を巻き添えにしての本土決戦です。

 しかし、我が国防衛力整備は財政難により防衛費を増額できないまま、北朝鮮弾道ミサイル実験を受けての1990年代末からの弾道ミサイル防衛、北朝鮮武装工作員浸透脅威を受けてのゲリラコマンドー対処、2000年代からの中国軍拡を受けての島嶼部防衛強化、2010年代の中国軍の急激な南西諸島周辺での行動を受けての防空再建と、陸上防衛の優先度が低く推移してきました。

 陸上防衛作戦部隊論、という本特集は、陸上自衛隊への優先度低下や任務多様化を前に、人員を更に現行人員以下まで縮小し、且つ戦車を冷戦時代の1100両から300両まで削減された現在において、雑多な編成が混在する現在の作戦部隊“師団旅団”編成を“広域師団”という統一化された大型の師団を少数編成し、日本本土が戦場であれば世界最強の部隊を編成する、という視点から部隊編制論を提示したもの。

 本特集の装甲機動旅団案は完結しましたが、続く航空機動旅団特集の前、昨年までに様々な検証を行いました装甲機動旅団の運用方法論について、新年旅行としまして九州へ展開した際に一つの文章としてまとめました。装甲機動旅団という、既に確立した自衛隊旅団編制を原型として戦車300両時代へ対応する部隊編制案を紹介しましたが、より踏み込んだ運用について短期集中掲載します。

 装甲機動旅団に関する幾つかの考察について。航空機動旅団という軽装備の普通科部隊主体の旅団に対して現在の方面隊が有する方面航空隊を配属し機動運用に充てるとの提案と併せ、戦車部隊、そして戦車の削減による攻撃衝力持続性の補完に充てる装甲戦闘車を基幹とする北部方面隊型旅団を併せ、機動力重視旅団と打撃力重視旅団とで師団を編成する。

 この師団を広域師団、とする施策を提示してきました。機動打撃力の骨幹部隊である第7師団以外、全国の師団と旅団を一旦、機動力重視の航空機動旅団と打撃力重視の装甲機動旅団へ改編し、現在進む統合機動防衛力整備として重装備を北海道に偏重させ、有事の際に防衛正面への戦力偏重と抑止力不均衡を生む可能性を払拭する事が主眼という施策です。

 元々、広域師団構想という提示は統合機動防衛力整備への欠缺を指摘すると共に、海空防衛力重視や弾道ミサイル防衛力整備等、新しい防衛正面への転換に対応するべく、政治が求めた戦車300両体制への縮小と、持続的な防衛力整備、陸上防衛体制における機動打撃力の維持という難題を両立させ、陸上防衛力を10万名規模とする視点から提示しました。

 航空機動旅団については、現在編成案を提示していますが、方面航空隊隷下に配置される多用途ヘリコプター20機を定数とする方面ヘリコプター隊、対戦車ヘリコプター16機を定数とする対戦車ヘリコプター隊、現在後継機選定の難航により定数割れ問題はありますが、空中機動力と航空打撃力は相当規模のもので、航空重視の陸上自衛隊に相応しい試案です。

 今回提示するものは、様々な再検討と運用研究、図上演習等を経て、装甲機動旅団の機械化大隊編成には、もう少し広い視点と運用の柔軟性を付与する事が出来るかもしれない、というもので、装甲機動旅団の防御における機械化部隊が有する運用の制約と、陸上自衛隊が我が国土の地形に合致させた地形防御運用体系との整合性を踏み込んで討議しました。

 機械化大隊、これは旅団普通科連隊隷下の3個普通科中隊を2個の装甲戦闘車化中隊を配置し、1個普通科中隊を既存の軽装甲機動車の転用により、機械化され装甲化された普通科連隊を編成する、というものでした。装甲戦闘車としては最低限敵装甲車を破壊できる25mm程度の小口径機関砲を搭載し、対戦車戦闘は下車展開と戦車火力へ依存するという。

 最小限度の性能、とはいえ、装甲戦闘車の調達費用は決して低いものではなく、戦車を300両まで縮小するという厳しい状況下において機動打撃力を維持するという取捨選択下残った数少ない施策に装甲戦闘車を提示したものでした、25mm機関砲は戦闘照準900mから最大1500m、機甲科部隊としての整備や運用と共通性があり、戦車よりは汎用性も高いもの。

 装甲戦闘車2個中隊に戦車中隊を加える事で、機械化大隊を編成する事が可能、という試案が、広域師団装甲機動旅団編成案の骨子となっています。既存普通科連隊からの改編に際し重迫撃砲中隊と対戦車中隊が残りますが、対戦車中隊は自走化されていますので、軽装甲機動車中隊と共に機動運用、軽快性を活かし捜索大隊を編成する事が可能となります。

 しかし、戦車中隊を一個そのまま運用するという方法論、普通科連隊に機械化大隊と捜索大隊を置く、という編成の他に戦車中隊を小隊規模で分散し、普通科中隊と戦車中隊という揃う中隊長の能力を最大限活かす、小隊規模で部隊を混成する中隊戦闘群という方式を採る事で、連隊戦闘団の防衛正面に新しい幅を持たせる事が可能となるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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