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180000アクセス突破特別企画 日本最新鋭イージス護衛艦“あたご”

2007-09-12 23:37:33 | 先端軍事テクノロジー

■舞鶴の最新艦

 OCNblogアクセス解析によれば、本日1500時頃、Weblog北大路機関はアクセス解析開始から180000アクセスを突破したとのことである。本日は、180000アクセス突破特別企画として、海上自衛隊の最新イージス艦の特集を行いたい。

Img_6254_1  護衛艦“あたご”は、海上自衛隊史上最大の護衛艦として2007年3月15日、三菱重工長崎造船所から海上自衛隊への引渡式が執り行われ、自衛艦旗を受領した。“あたご”は、佐世保基地での補給を受けた後、3月19日、第三護衛隊群第63護衛隊所属の護衛艦として、母港の舞鶴基地へ入港した。

Img_5660_2  さて、本日は、安倍政権が約一年間の志半ばにして辞意を表し、テロ対策特別措置法延長は暗礁に。インドネシアではスマトラ沖にてマグニチュード8.2の大地震が発生、アパッチロングボウが13機で陸上自衛隊への配備が終了するとの外電が入り、特別企画どころではないのだが、何分状況が把握しきれない。従ってテレビ東京系列の番組よろしく変更なしで、予定通りの記事としたい。

Img_5714_1  DDG177ミサイル護衛艦“あたご”は、14DDGとして計画され、基準排水量7700㌧、満載排水量10000㌧、全長165.0㍍、全幅21.0㍍、ガスタービン二基による出力は100000馬力、最大速力30ノット。武装は5インチ速射砲1門、20㍉高性能機関砲二門、Mk41型垂直発射機より各種ミサイル96発、90式艦対艦ミサイル8発、324㍉短魚雷三連装発射管二基である。

Img_5724  写真は“あたご”と満載排水量2900㌧の“あぶくま”型護衛艦である。3000㌧前後というのが世界の標準的なフリゲイトの規模であるが、大きさが余りにも違うことに驚かれよう。この“あたご”型以前は、満載排水量9500㌧のイージス護衛艦“こんごう”型4隻が海上自衛隊最大の護衛艦であったが、この“あたご”型により満載排水量10000㌧を超えている。なお、現在、来年三月の就役に備え、三菱重工長崎造船所では二番艦“あしがら”が建造中だ。

Img_5767  この“あたご”は、1932年に就役し、ミッドウェー海戦、南太平洋海戦、第三次ソロモン沖海戦、マリアナ沖海戦に参加したのち、主力部隊である第二艦隊旗艦として臨んだ1944年のレイテ沖海戦において戦没した重巡洋艦愛宕の名前を継ぐ艦であり、艦名の由来は京都近郊にそびえる名山の一つ、愛宕山である。

Img_5759  この“あたご”型を“こんごう”型イージス護衛艦と比較した場合、最も端的な違いは航空機の運用能力である。“あたご”は、上部構造物後部にヘリコプター一機を搭載する格納庫と、艦が動揺している状況下でもヘリコプターを安全に下ろすことができる着艦拘束装置を装備することが可能である。

Img_6267  後部格納庫は、“あさぎり”型、“むらさめ”型、“たかなみ”型の場合、両舷にまで格納庫を伸ばすことで、非常時には二機を搭載出来る容積的な余裕が盛り込まれているが、本型の場合、ミサイル護衛艦に不可欠なミサイルの垂直発射装置(VLS)の設置場所を確保する観点から片側を格納庫ではなく、VLSの設置に充てている。

Img_6278  ステルス性の追求も本型の特色で、上部構造物や船体はレーダーの反射を最小限に抑える角度が徹底して盛り込まれている。更に、従来の網目状のマスト(ラティスマスト)から、レーダー反射が少ない一本のマストに所要の装置を置く方式(モノポールマスト)を海上自衛隊の大型護衛艦として初めて採用しており、“あぶくま”型の船体設計から始まった護衛艦のステルス性追求も、遂に艦全体に至った。

Img_6769  イージス護衛艦“みょうこう”と、奥の“あたご”。艦橋左右にあったスーパーバード衛星通信アンテナを“あたご”型では艦橋容積確保の観点から移動し、更に上部構造物のステルス性追求も、“こんごう”型よりも徹底されて設計されている。1993年より就役した“こんごう”型を元に、発展させた“あたご”型である。

Img_6247_1  続いて上部構造物。本艦が搭載するイージスシステムは、対空戦闘ネットワーク(SPYレーダー・火器管制装置・射撃指揮装置)と連動する意思決定システムネットワーク、乗員に情報を表示するディスプレイ群、即応性保持システムと、以上の全てを結ぶイージスLANシステムからなり、この一連の装置を指すものである。これが艦の各種レーダーやデータリンクなどとも繋がっている。

Img_6799  Windowsにも95やme,XPがあるように、イージスシステムにも各種のバージョンがあり、“あたご”型が搭載するイージスシステムは、最新型のベースライン7.1である。なお、このイージスシステムが得た情報をもとに、迎撃を展開するのがVLSに収められた各種ミサイルである。ミサイルは垂直に収められており、砲と艦橋の間にある部分に64発、後部格納庫横に32発が納められている。

Img_6800  イージスシステムの眼にあたるのが、八角形の巨大なタイルのようなSPY-1D(V)である。これは一面が4000以上のレーダー素子より形成されており、従来のイージス艦に搭載されていたSPY-1Dよりも小型高速目標への対処能力が向上、脅威度を増す新型対艦ミサイルへの対処能力を向上させている。

Img_6804_2  “あたご”型は、従来のOTOメララ社製5インチ砲ではなく、米海軍が装備を進める5インチMk45Mod4という砲を搭載している。62口径という長い砲身を有するこの砲は、高い命中精度を有し、米海軍ではこの砲より発射する射程117kmの射程延伸誘導砲弾を、主に対地目標制圧用に開発中である。

Img_6803_3  接近したミサイルに対して使用する近接防御装備として、レーダーとバルカン砲を合せた20㍉高性能機関砲と、電波攪乱用のチャフを搭載している。20㍉高性能機関砲は水上の小型船舶に対しても発射可能なブロック1B型である。写真右端には、チャフロケット発射装置が写っている。

Img_6818  こちらは後部に設置された20㍉高性能機関砲。20㍉高性能機関砲が対水上射撃を行う際に用いる光学照準器が、白いレーダーの横に設置されている。監視カメラのようなものがそうで、これにより武装工作船や自爆ボートなどに対して有効な反撃を行うことが可能となる。右下にみえる窓は航空機発着管制室。

Img_68082  マスト基部。右下の灰色の丸いものがUSC-10衛星通信アンテナ。マスト基部の白く丸いアンテナがスーパーバード衛星通信アンテナ。パラボラアンテナ状のものはミサイルを管制するSPG-62、これは後部にも二基が設置されている。その前にみえる小さなアンテナが5インチ砲管制用のMk46OSS光学式照準装置。マストの上の方にみえているのがOPS-20航海レーダー。SPY-1D(V)の真上に見える凸凹の箱状のものがNOLQ-2B/ECM電子戦装置。

Img_6808  上から解説。一番上のお皿がタカンORN-6航法装置で、その下の皿にのっかった箱状のものがNOLQ-2B/ESM電子戦装置。で、その載せているお皿がUPX-29敵味方識別装置、少し下の白い鐘状のものが潜水艦情報をやり取りするQRQ-1Bヘリコプター用データリンク装置、写真の下の方に写っているレーダーがOPS-28E対水上レーダーである。これら全部覚えられたら体験航海の時尊敬されるかも。

Img_6801  ガスタービンエンジン用の煙突が二つ並んでいるが、その谷間には、90式艦対艦ミサイル四連装発射機が二基装備される。右側の煙突の根元には、二本の巨大糸楊枝状のものが置かれているが、これは右舷左舷にあり、11㍍型搭載艇(内火艇とか作業艇ともいう)が搭載され、その下には324㍉三連装短魚雷発射管がみえる。左側の煙突のあたりには、カバーが被せられた複合型作業艇が見える。

Img_6222  イージスシステムの性能は様々な資料があるが、実情は機密という見え難い状況にある(だからスパイも欲しがる)。450km程度先の目標が発見でき、ノイズの無い高空を飛ぶ弾道弾などであれば探知距離は更に伸びる。約900の飛翔体を同時追跡、21目標に同時対処可能であるといわれる(世界の艦船581・661・675・678を参考)。

Img_6205_2  搭載する迎撃用ミサイルは、スタンダードミサイルSM-2で70~100km(高度により異なるのだと推測)。弾道弾を迎撃するSM-3となると射程は1000kmを越える。こうしたイージス艦5隻が護衛艦隊の一翼を担い海上自衛隊基地や日本周辺海域やテロとの戦いにおいて、抑止力を発揮している。

Img_5747  以上が最新鋭護衛艦“あたご”である。冒頭にも述べたが、満載排水量10000㌧の“あたご”は、同じくイージス艦の“みょうこう”と共に第63護衛隊を編成、イージス艦二隻を有する海上自衛隊最強の護衛隊として、日本海を経てわが国や周辺諸国へ及ぼされる脅威に鋭い睨みを利かせている。

Img_6445_1  なお、今回掲載した写真を撮影したのは、舞鶴展示訓練において乗艦した第三護衛隊群旗艦“はるな”艦上からである。満載排水量6800㌧、1973年就役の護衛艦ながら、二門の背負式5インチ砲やスマートな上部構造物は、昨今の最新鋭艦には無い力強さを醸し出している(乗員の皆さん、ありがとうございました)。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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4 コメント

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外電のアドレス送り忘れていました (スザク)
2007-09-14 00:43:28
外電のアドレス送り忘れていました
以下に引用文

Japan to halt AH-64D Apache orders after 13th airframe
By Seiji Hirokawa

Tokyo's planned final purchase of one Fuji Heavy Industries/Boeing AH-64D Apache Longbow attack helicopter in fiscal year 2008 will halt orders of the type for Japan's army after just 13 airframes way short of the 60 originally sought to replace the service's current Fuji Heavy Industries/Bell AH-1S fleet.

The decision to stop Apache orders has been taken due to the type's high unit cost, and as a result of Japan's annual procurement model, under which the nation would take around 20 more years to complete its planned purchase. Fuji, which will this year complete a new licence production facility for the AH-64D, will receive compensation from the Japanese defence ministry following the decision.

With only enough aircraft being acquired to equip one Apache squadron, the army will extend AH-1S operations until a new replacement plan is been determined through a future White Paper. Fuji delivered Japan's first AH-64D in March 2006, and the type participated in an army firepower demonstration in late August.

ttp://www.flightglobal.com/articles/2007/09/10/216559/japan-to-halt-ah-64d-apache-orders-after-13th-airframe.html

一個飛行隊所要分のみの調達ということは、中央即応集団か第12旅団に集中配備するということなのかな
返信する
アパッチ13機、・・・、信憑性は別の議論として... (はるな)
2007-09-14 20:57:48
アパッチ13機、・・・、信憑性は別の議論として、明野と霞ヶ浦の教育用所要分と開発実験団飛行実験隊所要分を除いたら、縮小編成で8機の一個飛行隊分しか残りませんね。

12機で一個飛行隊ということですので、仮に当初の60機が達成されれば、教育訓練を明野か霞ヶ浦に集中させ、教育所要分を第五対戦車ヘリ隊か木更津の第四対戦車ヘリ隊で教導運用という、少々無茶ではありますが、この方法でなんとかなったような。

アメリカの州兵なんかにはA型がかなり余剰で出ていて、オランダなんかも旧型を放出させているとJANE’Sに書かれていましたから、その気になれば調達は可能だと思うのですが。

オーストラリア陸軍はユーロコプタータイガーがヘルファイアの実射に成功したとのことですし、この点も影響あるのかな?

ちなみに豪州陸軍が01年12月21日に仏ユーロコプター社との交わした契約によれば、22機のユーロコプタータイガーで、調達価格は13億オーストラリアドル、米ドルで10億ドルとのこと。4機を直輸入、18機をノックダウン生産、一個飛行隊定数は6機。調達完了は2008年4月予定。
返信する
三菱重工の快挙です!さっそく引用。新しいフロン... (スザク)
2007-09-15 00:07:52
三菱重工の快挙です!さっそく引用。新しいフロンティアは20世紀の南極から21世紀、月へ!!

月周回衛星「かぐや」打ち上げ成功
月周回衛星「かぐや」を載せて打ち上げられたH2Aロケット 三菱重工業は14日午前10時31分、宇宙航空研究開発機構の月周回衛星「かぐや」を搭載した大型ロケット「H2A」13号機を、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げた。 「かぐや」は打ち上げから約45分後にロケットから分離し、打ち上げは成功した。 これまで国が行ってきたロケットの打ち上げを、今回はじめて民間企業に移管した。アポロ計画以来の本格的な月探査を行う「かぐや」を予定通り宇宙へ送り出し、ロケット民営化は幸先のよいスタートを切った。 今回の打ち上げ費用は、宇宙機構の時とほぼ同じ約110億円。 「かぐや」は太平洋のチリ沖上空約390キロ・メートルでロケットから分離し、地球を回る長円軌道に入った。約5日かけて地球を2周した後、地球から38万キロ・メートル離れた月へ向かう。 「かぐや」は、重量3トンの主衛星と、いずれも50キロ・グラムの2基の子衛星で構成され、開発費は約320億円。約20日後には月周回軌道に達して2基の子衛星を分離、エックス線や赤外線など14種類にも上る観測機器の調整などを行う。 月の元素や鉱物の分布、地形や重力などの観測を始めるのは12月になる見通しで、それから約10か月にわたって月の起源や進化の秘密に迫るデータを集める。 今後、米国や中国、インドが衛星打ち上げを予定しており、「かぐや」は、月探査ラッシュの先陣を切る形になった。 今回の打ち上げを含め、H2Aロケットは05年2月以降、7回連続で打ち上げに成功したことになる。(2007年9月14日11時31分 読売新聞)
ttp://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070914it03.htm
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こんばんは (はるな)
2007-09-15 21:02:30
こんばんは
 月探査は、学術的や産業面での意義と同じくらいに、国威発揚としての意義もあるのかもしれませんが、日本では冷淡というか、冷静ですね・・・。
 小惑星イトカワのはやぶさによる探査成功なんかは、海外の方が大きなニュースになったということを考えるとソフトパワー面の方が大きい影響を出すのでしょうか。
 他方で、月面でのレアメタルの存在などで、新しい研究などが進展すると良いのですが、運搬費用を考えると、学術的な意義の域を出ないかもしれません。
 余り詳しいことは専門外ですが。
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