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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

普天間飛行場移設問題 第三海兵師団戦闘部隊と不可分の空中機動手段

2009-12-11 20:33:04 | 国際・政治

◆普天間をグアムに移転できない事情

 オーストラリア南方海域を、南極大陸から分離した巨大な氷山が北上中とのことである。全長19km、幅 8km、面積は 140k㎡に達するという。もっとも、これは普天間基地代替に使えないのだが。

Img_2496  普天間問題について、最初に、何故、グアムへの普天間移転が不可能なのかを明記しよう。海兵隊のヘリ部隊は、沖縄に残る海兵隊戦闘部隊との間で一体の関係があるのだ。在日米軍の総力は約5万名。この中で、沖縄駐留は23000名、内海兵隊は15000名である(岩国の海兵航空部隊と併せ16000名)。在沖縄米軍部隊の主力は、嘉手納基地の第18航空団、そしてキャンプコートニーの第三海兵遠征軍だ。普天間基地の海兵隊ヘリコプター部隊は、この第三海兵遠征軍に所属している。

Img_1769  第三海兵遠征軍は、第三海兵師団、第三十一海兵遠征群、第一海兵航空団、第三海兵兵站群、司令部直轄部隊などから編成されている。この中で、近接戦闘を含め緊急展開する地上部隊としての能力を有する第三海兵師団の編成は以下の通り、●第三海兵連隊(ハワイ:カネオヘ・ベイ)●第四海兵連隊(沖縄:キャンプシュワブ)●第十二海兵砲兵連隊(沖縄:キャンプハンセン)●第三海兵偵察大隊●第一戦闘強襲大隊。

Img_9950  海兵連隊は、陸上自衛隊の駐屯地祭のような観閲行進、訓練展示を伴う創設行事は行わず、オープンキャンプで模擬店と少数の装備を並べるだけであるので、その実態は分かりにくいのだが、通常海兵師団は三個海兵連隊を基幹として編成されているので第三海兵師団は縮小編成で、師団戦車大隊や両用強襲大隊を隷下に持たず、戦闘強襲大隊にLAV-25装輪装甲車を有する軽装甲攻撃中隊、AAV-7水陸両用強襲車を運用する両用強襲中隊が配属されている。

Img_9888  米軍再編に伴う海兵隊7000名グアム移転により、海兵隊は、第三海兵遠征軍司令部、第三海兵師団司令部、第十二海兵連隊本部がグアムに移転、第三海兵兵站群、司令部直轄部隊も一部が移動する。この結果、沖縄本島南部の施設が返還の対象となり、普天間飛行場は代替施設に移動、普天間飛行場481㌶全面返還、牧港補給地区274㌶全面返還、那覇軍港地区56㌶全面返還、キャンプ桑江68㌶全面返還、陸軍桑江燃料施設16㌶全面返還、キャンプ瑞慶覧643㌶の一部返還が行われる(どうでもいいが、このヘリの写真は海自のMH)。

Img_0041  グアム移転ののち、海兵隊は沖縄に以下の戦闘部隊を残す。第三海兵師団第4海兵連隊、第12海兵連隊砲兵部隊、第1戦闘強襲大隊。この中で、第4海兵連隊は、キャンプシュワブに駐屯しており、このキャンプシュワブ沖合に普天間基地代替飛行場が移転されるわけだ。キャンプシュワブでは、第1戦闘強襲大隊による揚陸訓練も実施されており、揚陸支援に当たる第1海兵航空団のヘリコプター部隊、つまり普天間の部隊は、航続圏内に海兵連隊が駐屯している必要があるわけだ。

Img_9577  海兵隊は、大統領令のみを以てして対外任務を遂行することができる緊急展開部隊だ。陸海空軍は大統領令とともに、議会の賛同が無ければ対外作戦を実施することはできず、この点で海兵隊の即応性は異なる。こうしたうえで、海兵隊は、独自の航空戦力と独立戦闘が可能な軽量装備を中心として編成されているため、第一海兵航空団のヘリコプターは、沖縄に残る第三海兵師団戦闘部隊とは不可分のものであり、グアムにヘリコプターだけを移転することはできないわけだ。そして、海兵隊の沖縄におけるポテンシャルが不要といえるような国際関係が樹立されるまで、戦闘部隊の沖縄前方展開という態勢は不変なのでもある。

HARUNA

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