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【映画講評】史上最大の作戦-The Longest Day(1962)【1】ノルマンディ上陸作戦描く

2021-06-06 18:12:30 | 映画
■六月六日,欧州反攻発動
 富士総合火力演習が毎年島嶼部防衛を想定し盛上るところですが本日はあの”Dデイ”です。

 NHK-BSプレミアムにて明日6月7日1300時からの“プレミアムシネマ”放映映画に“史上最大の作戦”が放映されるとのこと。1962年のアメリカ映画なのですが、6月7日に放映する、というところがNHKさんわかっているなあ、というところでしょうか、そうその前日である本日6月6日は“Dデイ”なのですね、これに併せての戦争映画放映という。

 史上最大の作戦、1944年6月6日に実施されたノルマンディ上陸の連合国軍欧州反攻作戦の火蓋が切って落とされたその瞬間に至る人々を描いた映画で、原作はThe Longest Day,いちばん長い日。アメリカ人ジャーナリストのコーネリアスライアンが著したノンフィクションを20世紀フォックス映画が文字通り社運をかけた超大作として映画化したものです。

 20世紀フォックス映画のダリルザナックはこの作品に先んじて会社が映画“クレオパトラ”を制作しましたが、壮大な歴史叙事詩を映画で再現するという交渉な試みは、最盛期のエジプトを映画セットとして装飾品を含め再現する事となり、要するに制作費が過大となり映画会社が傾く程となったのですね。そこで、同時期に制作された本作が注目されました。

 オーヴァーロード作戦、大君主作戦と呼ばれるこの作戦は両用艦艇5000隻を一挙に投入し、ドイツ軍の警戒の薄いフランス大西洋岸へ200万の連合軍を上陸させるという途方もない作戦で、上陸した連合軍の規模は1991年湾岸戦争の4倍、沖縄戦の5倍という規模、上陸初日だけでも16万の兵員が上陸しています。そしてドイツ軍は38万が布陣していました。

 運命に立ち向かう人々を群像劇で描く映画、史上最大の作戦というものはそうしたものといえるかもしれません。なにしろ1944年当時の欧州は、1940年にフランスが降伏しフランス救援に派遣されたイギリス軍が武器さえ捨てて身一つでダンケルクからドーバー海峡を渡り撤退した後、ノルウェー含め全欧が枢軸国とその占領地、イギリスのみが生き残る。

 しかし1941年12月の真珠湾攻撃を受け、日本は枢軸国の一翼を担った事からアメリカ参戦はドイツへの参戦も意味し、巨大な工業力をもつアメリカの参戦により徐々にイギリスは不利ではない状況が醸成されています、北アフリカではエルアラメインの戦いでドイツ軍の前進を阻止し、地中海の制海権を維持、ドイツはソ連との戦いで消耗を重ねてゆく。

 オーヴァーロード作戦は、ここで西欧地域に連合軍が上陸する事でドイツにソ連との東部戦線と並ぶ西部戦線を構築させ、二方面作戦胃より戦力を分散、各個撃破を図る、という構想のもとで行われていますが、成功したというのは後世わたしたちの視点であり、当時は成功するか怪しかった、1943年にフランスのディエップへ上陸作戦を行い失敗している。

 The Longest Day、この意味するところは映画の冒頭にヴェルナーヒンツ演じるロンメル将軍が海岸線防御陣地構築を視察しつつ、"連合軍が上陸したその日の内に全てが決まる、その日が連合軍にもドイツ軍にも一番長い日となるだろう、いちばん長い日、だ"と訓示する描写によるもので、24時間以内に撃破できなければ海岸堡を捕られドイツは敗北だという。

 ノルマンディ上陸、しかし激しい戦闘は繰り広げられますが、後の作品の様な生々しい戦闘描写はありません、それもそのはず、1962年公開は終戦から17年、私たちが2003年イラク戦争を思い浮かべる程に皆さん戦争の体験者でしたので現場は知っている、あの戦争は何であったのかを思い返す、全体像と命の意味を知りたい、そうした映画だったのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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