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【京都幕間旅情】伏見稲荷大社,弘法大師空海と淳和天皇そして清少納言と後三条天皇との所縁

2021-09-23 20:01:02 | 写真
■千本鳥居織り成す大社の夜景
 千本鳥居は伏見稲荷大社の象徴的情景ですが、稲荷山に至る此処を歩みつつその深い歴史を振り返ってみましょう。

 伏見稲荷大社は歴史は平安遷都に先立つ長い歴史を湛えていますが、その始まりは秦氏の私社であったのもまた事実です。しかし転機を迎えます、天長4年こと西暦827年、淳和天皇が稲荷大神に初めて従五位下の神階を贈り国として保護することとなったのですね。

 淳和天皇は、薬子の変により廃位された高岳親王代わり立太子した桓武天皇嫡系の天皇、そして東寺造営の資材へ稲荷山の木々を用いた事で不穏な出来事が続き、これを機に神階を贈り鎮める事を願ったとされます。これは社殿創建から長く、空海の時代ともかさなる。

 空海と稲荷神との縁も伝承されているものでして、大陸留学から密教経典とともに帰国し、かの聖地熊野で修行中に励んだ弘法大師空海が、田辺に投宿した際に不思議な長身の老翁に出会ったとされています、その老翁は自らを神と名乗り弟子に迎えると伝えたという。

 老翁が稲荷神であったとされるこの逸話は、空海が機縁を感謝しつつ密教布教の使命があるとして固辞し、しかし天皇の勅命で京都に寺院を造営する為、ぜひその地にて祀りたいと約束を交わしました。後に当時へ稲荷神が空海を訪ねた事から饗宴でもてなした、と。

 稲荷祭として祭事も和銅4年こと西暦711年壬午に初午大祭を執り行う事となり、これは江戸時代まで祇園祭と葵祭とともに京都を代表する祭事として定着しますが、私社です。そして延喜8年こと西暦908年には藤原時平の寄進により社殿が造営される事となります。

 藤原時平は菅原道真を大宰府に左遷したことでも知られる人物ですが、元々は社殿が山頂にありましたものが、この頃から山麓に社殿を広げる事となりまして、山頂まで昇る必要も無くなり多くの町衆が参拝する、現在の伏見稲荷大社の形が徐々に形成されてゆきます。

 後三条天皇、延久4年こと西暦1072年に天皇として初めて行幸します。この後三条天皇は平安朝の頃に大きな影響力を及ぼした藤原家の家系ではない天皇で。宇多天皇以来170年ぶりといい、かの桓武天皇による当地の再来を期した天皇としても、知られていまして。

 延久の善政、後にこう称される後三条天皇の統治は、延久の荘園整理令や延久蝦夷合戦の勝利による陸奥最北部までの統治など、転換点となる治世であり、藤原氏との距離を置く姿勢は、秦氏の私社からはじまる社殿への行幸へと繋がった、ともいえるのでしょうか。

 清少納言は、しかし枕草子に伏見稲荷参拝へ大変な苦労とともに稲荷山を上る様子を記していまして、山麓に遷座したといいましても山頂に本殿を置き、いわば奥ノ院のような扱いとしていたとも受け取れ、当時の方の体力では、参拝は大変だったのかもしれませんね。

 平安時代には広く社殿を並べた伏見稲荷大社は、鎌倉時代には神仏習合が進み、今日とは一風趣きを新しくした信仰が既にあったという。室町時代になりますと、室町幕府6代将軍足利義教は当社を手厚く保護、本殿そのものを山麓に遷座、稲荷山を御神体としました。

 室町時代にはこうして山麓が栄え、こうして応仁の乱の時代となりますと栄えた社殿は細川勝元陣営が稲荷社に陣を置き、応仁2年こと西暦1468年、山名宗全側からの総攻撃を受ける事となる。総攻撃により、稲荷山は山頂まで焼き尽くされる事となり灰燼へ帰した。

 応仁の乱の被害は物凄いものが在ったのですが、時間合掛かりましたが復興し東夷よりも遥かに栄えて今日に至ります。実は一頃、夜間も観光客がかなり多く参拝に難渋する季節もあったのですが、昨今はまあご承知のCOVID-19により静かな風景が、広がっています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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