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さよならOH-6D観測ヘリコプター【1】自衛隊円満退役とは言い難い宙に浮き続く後継機問題

2020-02-17 20:01:13 | 先端軍事テクノロジー
■軽快万能機”OH-6”の終焉
 相馬原駐屯地にて第12旅団祭が挙行された昨年の四月にラストフライトが行われたOH-6の飛行は、来るべきものが来たという印象でした。

 OH-6観測ヘリコプターについてはいよいよ今年度末、自衛隊での運用が終了します。OH-6Dといえば災害時に最初に離陸し情報収集にあたる航空機で、観測ヘリコプターとしてはOH-6Dの方式は詳しくは後述しますが現代戦闘の運用には厳しい評価もあり得る一方、陸上自衛隊と海上自衛隊では過去に練習ヘリコプターとしても運用されていました。

 Mission complete任務完了として華々しく退役記念飛行展示が航空学校にて執り行われましたが、しかし大丈夫なのか、という印象も禁じ得ません。こういいますのもOH-6Dは後継機OH-1の調達失敗により、事実上後継機無き退役であり大幅な航空機純減となる為です。東日本大震災の様な災害がもう来ないならば、円満退役と言い切れるのですが楽観だ。

 AH-6特殊作戦ヘリコプターとして世界を見渡しますと観測ヘリコプター以外の用途にて運用する事例もあり、また警察用航空機としてテロや銃火器対策にも活用、ボーイングではAH-6Wとして有人飛行も可能な無人ヘリコプターとして提案されており、取得費用もボーイングによれば自衛隊が運用するOH-1観測ヘリコプターと同程度に収められています。

 タマゴ型のヘリコプターとしても親しまれるOH-6は、OH-6JからOH-6Dへ変遷を続けた航空機でした。もっとも観測ヘリコプターとしてはもともとOH-55観測ヘリコプター、完全な二人乗りの着弾観測航空機として運用された機体の後継で、特科火砲の着弾観測を航空観測員と共に実施するものですがOH-55は操縦士と観測員しか搭乗できませんでした。

 OH-55が本当に観測任務以外に用途が限られていたのに対し、OH-6には後部に2名用座席が配置されており、一定の多用途機としての性能を有する点が特色です。しかし、OH-55とOH-6を比較した場合は、もちろん操縦系統やエンジン出力での優位性はありますが、昔ながらの観測員が双眼鏡により着弾観測を行うという部分においては共通性があります。

 観測ヘリコプターとしてのOH-55とOH-6,そしてもう一つの共通性は双眼鏡による着弾観測は地対空ミサイル性能が向上し第一線へ普及する昨今にあっては生存性が大きく左右される、という難点があるのです。ただ、無人航空機に安易に置き換えられるかと問われた場合は難しく、たとえばMQ-8無人ヘリコプターやRQ-1無人偵察機などは数が揃え難い。

 MQ-8のような高性能機種ならば観測は勿論偵察に攻撃まで、充分性能を有していますが、無人機として概して想像される機体、クワッドドローンのような航空機では迅速な目標地域への進出は不可能です。すると着弾観測員を地上に配置し適宜携帯無人機を運用する、選択肢となるのですが、着弾観測員の配置には航空機ほどの迅速性や機動力はありません。

 結果、着弾観測はより高性能の航空機が担う、具体的には自衛隊で言えば機数不十分のまま製造終了となったOH-1観測ヘリコプター、アフガニスタンでのISAFではイギリス軍などが派遣したWAH-64戦闘ヘリコプター、アフリカ地域での安定作戦ではフランスがEC-665戦闘ヘリコプターを投入、優れた目標監視能力や評定能力が威力を発揮させている。

 幸いこの中間を担う航空機として、オーストラリアのインシツ社製スキャンイーグル無人偵察機が遅蒔きながら自衛隊でも配備が本格化しました。それほど速力はありませんが滞空時間が長く、また取得費用も戦闘ヘリコプターと比較し現実的な数値に抑えられています。ただ、これは観測任務に限定した構図でいわばOH-55の時代に戻ってしまいました。

 OH-6Dの退役は、この機体が有していた意外なほどの多用途性能、具体的に表現するならば大規模災害に際していち早く離陸し情報収集を行う、という、実のところ着上陸や島嶼部防衛よりも今日いまこの瞬間に起き得る蓋然性の高い事態に重要な位置づけを有しています。他方で、観測ヘリコプターとしての用途を考えるならば、最低限求められる性能が。

 99式自走榴弾砲や17式自走榴弾砲の射程は40kmに達する為、少なくとも数十km以遠の着弾観測、それは敵地対空ミサイル脅威圏外からの運用を行うという意味を多分に含めてですが、機材の搭載が求められ、たとえ機体をTH-480のような限りなく安価な航空機とした場合でも、観測機材の費用を合計しますとOH-6Dよりも高価な装備となるでしょう。

 多用途機なので安価な性能を、としていったん採用してゆきますと費用を圧縮し必要な機数を揃える上で有利となり得ますが、逆に今度はUH-1J多用途ヘリコプターや新鋭のUH-2多用途ヘリコプターと多用途ヘリコプター予算枠を奪い合い両方とも必要な機数を配備できない最悪の状況となります。ただ、ここで世界を見渡しますと興味深い動きが。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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