北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南海地震津波最大6m、梅田・難波も浸水の想定と大阪府が発表

2011-07-07 22:54:53 | 防災・災害派遣

◆防災計画を根本から再検討する必要性

 小松左京の日本沈没ではありません、大阪府の被害予測の話です。津波で梅田も難波も日本橋も呑み込まれる、今回大阪府が作成した浸水被害予測について、今までの想定では文字通り想定外でした。

Img_3368  想定南海地震、現在、海底早期警戒網が構築されつつあるのですが、発生と同時に緊急地震速報を通知する早期警報は実施できたとしても予知までは難しいという実情、そして過去の南海地震を見てみますと、ほぼマグニチュード8以上の巨大地震で宝永南海地震はマグニチュード8.6という非常に大きな地震が発生しているのですが、津波が梅田や難波まで、とは物凄い規模です。

Img_0790 大阪府が津波浸水予想図 最大6メートル、13市町で被害想定 ・・・2011/7/7 2:45:  大阪府は6日、従来の防災計画の2倍の高さの最大6メートルの津波が大阪湾を襲った場合を想定し、新たな浸水予想図を公表した。大阪市や堺市など、府内の13市町の約200平方キロメートル(居住人口約165万人)が浸水し、浸水面積は従来想定の6倍を超える恐れがあるという。

Img_0623  東海・東南海・南海地震を想定した津波の高さを従来の2倍に引き上げた理由について、大阪府の橋下徹知事は同日の定例会見で、「東日本では想定の2倍程度の津波が来たと聞く。科学的な根拠を詰めたものではないが、もし2倍の津波が来たらどうなるのかという警告的な意味で決めた」と説明した。

Img_0325  府は今後、関係自治体と連携し、3階建て以上のビルなど避難場所の選定を進める。 従来の防災計画の想定では、水門などが閉鎖できない場合に津波で浸水する恐れがあったのは、大阪湾岸の約30平方キロメートル。津波高が2倍になると、淀川河口部から津波が約10キロにわたって遡上し、大阪市中心部の梅田(キタ)や難波(ミナミ)などを含め、浸水面積は約6.7倍に広がる恐れがあるという。http://www.nikkei.com/news/local/article/g=96958A9C93819A91E2E4E2E0968DE2E4E2E5E0E2E3E39391EAE2E2E2;n=9694E3E4E3E0E0E2E2EBE0E0E4E5

Img_3081 ◆俄には信じがたい話ですが、想定南海地震の最大規模の津波が発生した場合には大阪の中心部まで津波が到達する可能性があるとの想定を大阪府が発表しました。その到達範囲には梅田と難波が入っており、地下にターミナルを有する阪神電鉄や近鉄難波駅、京阪淀屋橋駅と中之島駅を含む主要な鉄道網は水没することを意味しています。

Img_6670 そして津波は大阪の中心部を蹂躙したのち、大阪府庁と大阪城の手前まで遡上、東海道本線沿には梅田の大阪駅を乗り越えた後新幹線新大阪駅間近まで到達するという想定でした。もちろん、これは最大規模の想定であるのですが、想定外が起きたのが東日本大震災、余り想定外と油断する気にはなれません。

Img_3138  信じられますでしょうか、梅田地下街等は津波にのみ込まれ、かわいらしいリサとガスパールの人形は勿論津波が運ぶ海底汚泥により地下街や鉄道地下ターミナルは恐らく数カ月単位での使用不能に陥る事でしょう。この浸水地域は大阪府だけで13市町村165万人と京都市の人口を超える規模。

Img_3311 当然津波は遠く神戸三宮などを襲い、これらの地域でも甚大な被害を及ぼすことになります。和歌山、鳴門、徳島、小松島はこの大阪と神戸に到達する以前に正面から津波へ襲われる事になり、この地域は沿岸部に人口が集中している事が被害をより大きくするという考えるだけで難しい実情。

Img_7165  この被害だけでも対処にはこれまでの災害対処想定を大きく改めなければ、東日本大震災による津波とは比較にならないほどの大被害をもたらす事だけは確かです。そこに、今回の想定は連動型の地震を含めていますので、東南海地震による中京地区への、東海地震による東海道沿岸への被害が加わるという事。

Img_9145 唯一楽観的な要素は、大阪市、神戸市に到達する津波は加太岬と淡路島に挟まれた由良水道を通り大阪湾に侵入する為、その衝撃力は幾分か押さえられており、昨年に東日本を襲ったチリ地震津波のような浸水型の浸透となるはずで、沿岸部を除けばゆっくりと浸水する被害からは高層階や高架橋等へ退避する事で避難する事が可能でしょう。

Img_9202  もっとも、地下街は脱出できなければ高い確率で人命にかかわる事態となりますので、地下街からの脱出は非常に重要な課題となるのでしょうし、同様に低層住宅からの緊急避難についても迅速さが求められるのですが、これは早期警報で対処可能です。

Img_3485 この南海地震が想定する津波は、海上自衛隊小松島航空基地、徳島航空基地、海上自衛隊阪神基地、加えて中部方面隊で唯一水陸両用車の置かれる和歌山駐屯地、航空部隊の置かれる徳島駐屯地という大規模地震の際にこそ機能しなければならない基地に対し襲う危険性があります。

Img_2752  小松島航空基地の哨戒ヘリコプターは呉基地の艦艇部隊を支える極めて重要なSH-60JとSH-60Kを運用していますし、徳島航空基地には救難ヘリコプターUH-60JAが、阪神基地は掃海艇部隊が展開しているのですが、この地域には欠かすことが出来ない艦艇拠点です。

Img_3251 加えて防災拠点として機能しなければならない関西国際空港と神戸空港が津波により機能を喪失します。また、被害想定の中には大阪府庁こそ被害想定範囲には入っていませんが、大阪市役所は海に没する事になります。大阪府庁ですが、臨海部への移転を府知事が構想している旨を幾度か公言しているのですが、これも止めるべきでしょう、府庁舎が真っ先に津波の被害にあってしまいます。

Img_7290  また臨海部に位置する神戸市役所は阪神大震災では無事ではあったのですが、今回想定される津波では津波によりこちらも呑み込まれてしまうでしょう。伊丹空港と大阪第一空港である八尾空港、八尾には中部方面航空隊が展開しているのですが、こちらが頼りとなります。

Img_3746  ううむ、小松島航空基地はもともと旧海軍の水上機基地として開庁した為文字通り海沿いに基地があり、スロープで降りられるほど、昭和南海地震でも浸水の被害があり、恐らく今度の南海地震でも空中退避を行う時間的余裕はないだろう、と基地で聞きました。

Img_9844  海上自衛隊でも大型クレーン等でヘリコプターを浸水しない高さまで緊急つり上げを行う事が出来ないかを検討したとも聞くのですが、想定東海地震との連動地震を警戒して、東海地震発生とともに即座に空中退避を行い、可能ならば八尾駐屯地か伊丹空港、舞鶴航空基地か洋上の艦艇に退避する事が出来れば、何とかなるかもしれません。

Img_2242_1  しかし、防災道路の建設、特に自衛隊の災害派遣部隊や続いて救援物資、復旧に必要な建設車両の展開する内陸部の津波と地滑りに対応する道路建設は一朝一夕にできるものではありませんので、これをどう建設するか、また基地と駐屯地については沿岸の小松島航空基地と徳島航空基地、徳島駐屯地、海岸線から300mの和歌山駐屯地については航空機の防護と移転も念頭に置いて考えるべきでしょう。

Img_3154  とにかく、阪神大震災により一度大打撃を受けたこの地域ですが、地震そのものによる被害に加えて津波の直撃を受ける地域、そして今回の大阪を中心とした都市部の被害の危険性が指摘されている訳です。同時に東海地震と東南海地震が発生する事を考えれば、自衛隊による対処能力は完全に想定外となります。

Img_3247  これだけではなく、難波よりも海側は豊臣秀吉以降の大規模な埋め立てなどの開発により誕生した地域という事もあり、津波後に長期間に渡り水が引かない長期浸水被害が発生する危険性、更に海像には液状化現象なども発生する事を忘れてはなりません、想定外という言葉を使わない場合にはどうするべきなのか、今から出来る事を考えなければ恐るべき結果に繋がる危惧があります。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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2 コメント

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大阪はほとんどが平地ですからね。津波よりも蓋然... (けーと)
2011-07-08 12:04:26
大阪はほとんどが平地ですからね。津波よりも蓋然性が素人目には高そうな、河川の決壊の場合、その主要都市部ほぼすべてが浸水することになります。

自治体で浸水時の予想はかなり以前より出されていましたが、肝心の(浸水時の)避難場所がそもそもほとんどない、というのが実情だったりします。

必要がなければ高層建築は行いませんし、多人数を収容しよう、となりますとどうしても、ね。
地震や火災のグラウンドの避難場所は使えませんからね。
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こんにちは。 (ドナルド)
2011-07-09 01:40:54
こんにちは。

個人的な意見ですが、3-4mの津波を防ぎきる「防災」と、6mの津波が来ても死者をほとんど出さない「減災」とを組み合わせて対処するしかないのではないかと、考えます。

例えば沼津であれば、地震発生後9分で10m級の津波が到達すると予想されてきた訳です。では、海岸線にその2倍、20m級の巨大な堤防を延々と作るかというと、予算規模としては極めて難しい上に、沢山の家々を立ち退かせることになり(地域コミュニティーが津波を経ずして崩壊?)、残った方々も太陽の当たらない暗い街に住むことになりかねないなど、問題が多いと思います。でも、津波避難タワーの高さを20mにする事は可能であるし、今すぐやるべきだと思うのです。


小松島基地等の航空機ですが、空中退避は無理ではないでしょうか?そもそも航空機の特性として、24時間365日の即応体制で、30分や1時間で飛行隊全機を空中退避などは、不可能と理解しています。即応待機中の3-4機で精一杯ではないでしょうか?

でも、(航空機を牽引する)自動車は、エンジンを回せば1分で動くでしょう。これを使って、全機、高台へ避難させるというのはいかがでしょうか?津波が6mで、現在の滑走路の標高が2-3m程度であれば、3-4mの高台を用意すれば 6m の津波に堪えるのでは?4m程度の高台であれば、牽引車両で航空機を持ち上げる事は可能と思われます。

ただ、問題は、いつ津波が来るか分からないので、航空機を牽引して退避するための時間が読めず、人命尊重を考えれば、このような作業を現実には実施できないことだと思うのです。

もっとも大切なことは、「沖合の潮位を測定し、停電だろうか液状化が起きていようが、それをリアルタイムで基地&国民に伝達するシステム」ではないでしょうか?

最後に人員が高台に避難する際、5分前に津波の高さ情報(モデルによる予測ではなく、測定による「実測」)とともに、到来時間の予告(モデルによる予測ではなく、測定に基づく「計算」)がくれば、近くのタワー/ビルに逃げ込む事は困難ではない。

名取市の津波に遭われた方々が、徒歩中であろうと、自動車運転中であろうと、停電中の自宅の片付け中であろうと、全員があのときのNHKのTVをリアルタイムで見る事ができていたら、一体あと何名の方が救えたでしょうか?自宅に押し寄せる津波を、5分、いや3分まえに知る事ができていたら。。

国民の多くが、携帯と言う名の電池駆動の通信端末を持っているのですから、やりようはあると思うのですが。。。

今日/明日はともあれば、20年後、100年後に、「大津波警報、津波予想高さ20m」と言われても逃げない人は多いでしょう。1000年に一度の事態が、自分の存命中におきると予想している人なんてほとんどいないからです。「また気象庁は大げさな、、、」と思うのが関の山です(正常化バイアスですね)。

しかし、実際に20mの津波が街を飲み込んでいる映像を目にすれば、それが5分後に自分の住んでいる所に到達すると言われれば、間違いなく逃げると思うのです。(逃げるに逃げられない方々がいるのは承知の上で、減災を議論しております)。

地震の被害は、その瞬間に自分がどこで何をしていたかで、ほぼ決まってしまうでしょう。けれども、津波の被害は、その10分から、1時間後。情報収集と行動力で、(少なくとも人命に関わる被害は)大きく変わってくる。

はるなさんの記事を読んで、あの日に思った、ふと思い出しました。
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