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【京都幕間旅情】三十三間堂(妙法院門蹟寺院蓮華王院本堂),平清盛実父忠盛鳥羽上皇へ贈る

2019-10-02 20:12:30 | 写真
■後白河上皇-新平家物語の世界
 不思議と人混みにも凪がある、京都の壮大伽藍とて例外ではないのでしょう、拝観へ歩み進めた三十三間堂は空の青と静寂に包まれていました。

 三十三間堂、東山区三十三間堂廻町にある仏堂です。千手観音を奉じる御堂は、妙法院門蹟寺院の仏塔となっていまして、山号はありませんが、蓮華王院本堂という正式名称を有していまして、歴史は古く、後白河上皇が自らの離宮内に創建した歴史を有しています。

 洛陽三十三所観音霊場第17番に列せられる御堂は平清盛により造営されました。三十三間堂とはその名の通り、三十三間の長大な幅を有するお堂です。後白河上皇と平清盛の関係は武家政権へ至る貴族政治の限界と共に深まった経緯があるのですが、歴史は更に遡る。

 木造千手観音立像1001躯は2018年に国宝に指定されました。御堂は残念ながら撮影禁止となっていますが、美術院国宝修理所により修理成った木造千手観音立像が安置されています。この修繕は1973年に始り、その達成は2017年という気の遠くなる大事業でした。

 蓮華王院本堂は国宝で、118.2mと梁間16.4m、二軒繁垂木出組構造となっています。桁行33間梁間3間となっていることから、三十三間堂、と呼ばれるのですね。質素な伽藍という外見ですが1930年修理により極彩色文様が虹梁下面にあり、昔は鮮やかだった、とも。

 新平家物語の世界、鳥羽上皇の治世下に平忠盛の寄進により得長寿院千体堂という最初の三十三間堂が此処に造営されました。この三十三間堂は残念ながら1185年の文治地震により倒壊しています。平忠盛は清盛の実父、鳥羽上皇はやはり後白河上皇の実父にあたる。

 平清盛の造営は、五重塔をはじめとした重厚荘厳な伽藍を築いたといいます。文治地震は年号を視れば分かる通り、壇ノ浦の戦いにより平家が断絶した僅か半年後に発生したもので、日本が最も混乱していた時期でもある事から震央は諸説あり、定かではありません。

 琵琶湖西岸や南海トラフ地震説に若狭湾震源説などはっきりとしていませんが、京都が大損害を受けた事は確か。此処で大きな損害を受けた三十三間堂は再建が成るのですけれども、1249年の火災により伽藍の多くは焼失してしまい、御堂以外は再建が成っていない。

 歴史地震、とは日本史上に数多存在し、地層や伝承から令和時代の今日にたるまで、大地の胎動が引き起こす危険を千数百年を隔てて警鐘を打っています。しかし、興味深い事にこの三十三間堂の木造千手観音立像1001躯は不思議なかたちで現在に警鐘を伝えている。

 モーメントマグニチュードや震度という概念は大正時代の関東大震災を契機として現代の形になった訳ですが、歴史地震の記載と共に三十三間堂では木造千手観音立像1001躯にあって何体の観音立像が倒れたかを事細かに記載し、正和京都地震もあの、天正地震も残る。

 文永年間の1266年、三十三間堂は再建されました。本堂西軒下の121m、通し矢で知られ、和佐大八郎総矢13053本中8133本毎分9射の記録が最高です。低伸弾道を描かねば軒に刺さる為に強力で射ねばなりません、弓矢自慢の場として江戸期には広く知られました。

 星野勘左衛門茂則という尾張藩弓術家が打ち立てた天下一の記録を若く野心溢れる弓道家和佐大八郎が破らんとした時、鬱血した和佐大八郎を助けたのは星野勘左衛門茂則、という歴史も残ります。総矢数9000本通し矢7077本の星野勘左衛門茂則は面白い歴史も残る。

 三十三間堂を心静かに拝観するならば正午前に拝観する事が良いでしょう、こういいますのも1500時には閉門となってしまいます、京都の多くの伽藍が1600時か1700時まで拝観できるのに対し、三十三間堂は早い。ただ午前中は御堂が順光、美しい拝観を過ごせる。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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