北大路機関

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もがみ(FFM01)三菱重工長崎にて本日進水式-重巡洋艦最上を継承,二番艦くまの共に来年竣工

2021-03-03 20:12:00 | 先端軍事テクノロジー
■3900t型は護衛艦もがみ型へ
 もがみ。3900t型護衛艦として海上自衛隊が大量に導入する新型艦の一番艦が本日長崎にて進水式を迎えました。

 もがみ。これは二番艦くまの先行で命名式が執り行われ一番艦が命名されない事には本型を何型の二番艦かと云えなかった為に、漸くの一歩です。もがみ型護衛艦は、はつゆき型、あさぎり型、冷戦時代末期に大量建造、この冷戦時代の遺産と云うべき護衛艦が2010年代に入り急激に増大した中国海軍脅威へ対応できましたが、旧式化したこれらの後継という。

 基準排水量3900t、もがみ型護衛艦は名前こそ沿岸護衛艦を意味するDE,ここに伝統的に冠せられた河川名を踏襲していますが、その排水量は旧海軍の天龍型軽巡洋艦や軽巡洋艦夕張以上に大型となっています。はつゆき型が2900t、あさぎり型が3500tでしたので大量建造される護衛艦ではあるのですが、相応に大型化し厳しい将来の任務へ臨む事となります。

 30FFM、こう称された背景には一番艦と二番艦の予算が平成30年度予算において要求されたためでした。平成30年度予算概算要求では本型2隻が964億円で要求されまして、財政難から1隻へ縮小されるところを毎年2隻を建造する目的の艦であるとして大臣折衝で2隻建造が実現、2隻922億円を初度費は別として建造しています。それが、もがみ、くまの。

 もがみ。三菱重工業長崎造船所にて一番艦として2019年10月29日に起工されました、もがみ型護衛艦、命名されたのは本日でして、本日午前中までは3900t型護衛艦や30FFMと呼称されていました。二番艦くまの、こちらは三井E&S造船玉野艦船工場にて一日遅れの2019年10月30日に起工しているのですが、一番艦建造最中、タービン破損が見つかる。

 くまの進水式2020年11月19日に執り行われています、こちらは順調に建造がすすんだためでして2022年3月に竣工する予定となっています。もがみ竣工も同時期が予定されているのですが、進水式で三か月半も期間が空いていますので、同時に竣工できるかは定かではありません。ただ、現在6番艦まで予算が通り3番艦から5番艦までは長崎で建造です。

 最上。護衛艦もがみ、は旧海軍の巡洋艦最上の名を継承する護衛艦としては二代目となります。重巡洋艦最上は日本海軍草創期の通報艦最上艦名を継承した二代目ではあるのですが、太平洋戦争に参戦した巡洋艦最上は数々の海戦に参加し、マレー作戦、バタビア沖海戦、ミッドウェー海戦、マリアナ沖海戦と戦積を数え、最後はレイテ沖海戦に散りました。

 いすず型護衛艦もがみ。旧海軍の最上は戦後海上自衛隊においても強く印象付けられるものであり、1961年に護衛艦いすず型3番艦としてその名が継承されています。いすず型とは小型護衛艦、一番艦いすず、は旧海軍において水雷戦隊旗艦として又対潜掃討部隊旗艦として活躍した巡洋艦五十鈴の艦名を継承したもので、護衛艦としての任務も対潜でした。

 FFM,こう称される本型はフリゲイトを示す“FF”と機雷戦や多機能を意味する“M”を冠している新型艦ですが、海軍の巡洋艦最上も、多種多様な運用を担いました。最上型巡洋艦はロンドン海軍軍縮条約下で軽巡洋艦を艦砲6インチ砲まで、排水量1万tとしていまして、元々5000t程度であった軽巡洋艦は一万トンに何門6インチ砲を積むかが重視される。

 軽巡洋艦として建造された最上型はロンドン軍縮条約が期限切れとなりますと、艦砲を8インチ砲に換装、これにより条約型戦艦に対し限定的ではありますが対抗できる打撃力を保持します。しかし日本海軍はミッドウェー海戦以降、水上打撃力が航空打撃へ移行すると共に最上を航空巡洋艦へ改装し、水上爆撃機10機を運用する新区分の巡洋艦としました。

 FFMは、流石に航空巡洋艦になる事は出来ませんが、127mm艦砲とSEA-RAM個艦防空ミサイル及び17式艦対艦ミサイルを搭載し、多目的ドックに無人艦艇、SH-60哨戒ヘリコプターを搭載しますが、将来はVLSに国産AAM-4艦対空ミサイル技術を応用したA-SAM新艦対空誘導弾や、射程が大幅に延伸される地対艦ミサイル艦載型を装備する方針です。

 ちくご型護衛艦くまの。現在建造中の二番艦くまの先代は護衛艦ちくご型に続く護衛艦二代目でした。そして今回は護衛艦いすず型もがみ続く護衛艦二代目、この意味するところは。海上自衛隊は本型を22隻と大量に建造する方針です、故に11隻が建造された護衛艦ちくご型、4隻とはいえ短期間で整備された護衛艦いすず型の名を継承した、といえます。

 三菱重工業長崎造船所は有名な長崎市のグラバー園対岸にありましてイージス艦こんごう筆頭に多数の護衛艦を建造し、旧海軍も戦艦武蔵等強力な艦艇をこの造船所にて建造しています。建造の様子は対岸からも良く見えまして、護衛艦もがみ建造の様子は今年いっぱいから護衛艦として竣工する来年まで、長崎の情景の一つとなるのかもしれませんね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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4 コメント

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意外です (渋川雅史)
2021-03-03 21:20:58
旧海軍艦名を引き継ぐ場合は、一番艦のそれは避けるのが通例だと思っていましたので。
返信する
イージス艦 (はるな)
2021-03-03 22:38:08
こんごう以来ですかね
返信する
予想が外れた (mori)
2021-03-03 22:42:07
三菱長崎では「三隈」を建造したことがありますので、今回の艦も「みくま」になると思っていたのですが、普通にネームシップの名前を継承したようですね。
ところでこの艦、就役後はどこに配属になるのでしょうね? もし呉に配属されたら、DD-106と合わせて「五月雨を集めて速し最上川」ということになって面白いのですが。
返信する
大分県に (はるな)
2021-03-04 00:13:58
mori さま こんばんは

配属ですか、配属先の掃海隊群とは無関係で佐世保辺りにとも何とも

閑話休題、三菱長崎といえばあの戦艦ですが、実は大分県に、武蔵川、という河川があったりします
返信する

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