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駆け付け警護任務、第11次南スーダンUNMISS自衛隊派遣部隊(第9師団)より付与で閣議決定

2016-11-15 22:50:51 | 国際・政治
■新任務の駆け付け警護
 政府は今日、安全保障関連法案に基づく国連PKO部隊への駆け付け警護任務付与を正式に閣議決定しました。今月第9師団より派遣される部隊より新任務が付与されることとなります。

 南スーダンは2011年にスーダンからの独立が実現した新しい国です。UNMISSはこの南スーダンという新しい国家建設を支援するべく国連憲章七章措置に基づく国連安全保障理事会決議1996号により派遣が決定したもので、各国軍11350名及び文民職員と文民警察官1173名が派遣されています。司令官は現在、エチオピア軍のテスファマリアム中将で、副司令官は2200名と最大の派遣部隊を展開するインド軍のミストリー准将が務めています。

 駆け付け警護は、国際平和維持活動等に対し後方支援等を重点として参加している自衛隊派遣部隊が、自隊へ直接危険が及ばない場合においてもNGO職員や国連関係者等が攻撃を受けた場合に、現場へ駆け付けて警護の任務を遂行しようとするものです。従来法規は自隊が戦闘に巻き込まれた場合以外、警護を行う事は出来ず当事者となる必要がありました。

 新任務が付与される背景には、南スーダン情勢の混乱があります。建国後の南スーダンは主導権を巡り大統領派政府軍と元副大統領派反政府勢力との対立が激化、2012年12月21日にはジョングレイ州での戦闘でUNMISSヘリコプターが撃墜、2013年4月に輸送任務に当たったインド軍が待伏せ攻撃を受け戦死者が出たほか、北部で発生した戦闘で発生した避難民がインド軍宿営地へ保護され、攻撃する反乱軍との間に戦闘が発生しています。

 南スーダン情勢の緊迫は2013年12月19日に発生したクーデター事件で、これを受け国連は当時7600名のUNMISSをクーデター事件に伴う全土への治安悪化を阻止するべく6000名の増派を安全保障理事会が決議しました。2014年4月17日に派生したボルでの戦闘ではUNMISS部隊宿営地も戦闘に巻き込まれ、2015年の国連報告ではスーダン人民解放軍による越境攻撃が発生、今年7月11日には首都ジュバでも大規模な戦闘が発生しました。

 安全保障関連法整備以前では、邦人NGOや国連職員が攻撃された場合に見捨てる事は出来ず、1992年のカンボジア派遣では自隊が攻撃されている状況を構築するべく、戦闘防弾チョッキを複数着用し武装勢力と攻撃を受けている側の中間に挺身し、自らが撃たれる状況を醸成し、これを以て反撃する極めて無理な運用を想定していたとされます。これでは確実に死傷者が出る為、現実に対応するべく安全保障関連法の施行を以て是正されたかたち。

 自衛隊UNMISS派遣部隊は正式名称を南スーダン派遣施設隊、各方面隊から中央即応集団を通じ国連UNMISS司令部隷下に置く形となります。部隊編成は、隊本部、本部付隊、3個施設小隊、施設器材小隊、警備小隊、対外調整班、警務班、以上350名の大隊規模部隊で、現在第10次派遣隊が活動中、2011年12月の派遣命令より継続して派遣されています。

 駆け付け警護の想定は、自衛隊UNMISS派遣部隊の警備小隊が軽装甲機動車を装備しており、自衛隊宿営地が置かれる首都ジュバ近郊に限定し国連職員等が暴徒に包囲され孤立するような状況で、且つ自衛隊以外のUNMISS派遣国が対応できない場合に実施するとし、例えばUNMISS他国軍や避難民への駆けつけ警護は、政府によれば想定されていません。しかし、非常に抑制的ながら駆け付け警護は自衛隊の現実的な対応を可能としましょう。

 宿営地共同防護、今後の課題となるでしょう。これは今回の駆け付け警護任務付与に続き自衛隊へ付与される新任務となり、政府は間もなく宿営地共同防護の実施についても閣議決定する方針です。これは自衛隊宿営地であるジュバ国際空港付近には自衛隊以外のUNMISS部隊が駐屯しており、この宿営地へ攻撃が加えられた場合、自衛隊が他のUNMISS派遣部隊と協同で防衛するもの。

 政府は駆け付け警護の任務を付与すると同時に、PKO参加五原則が崩壊した場合にはUNMISS派遣部隊を撤収させるとしていますが、南スーダンでの情報収集体制へ専門部隊を置いている訳ではありません。また、突発的な事態に対して撤収する政治決定が間に合うのかという視点は手つかずであり、今年7月の戦闘では反政府勢力のT-72戦車と政府軍のMi-24攻撃ヘリコプターが交戦しましたが政府はこれを戦闘ではなく衝突としました。課題は多々ありますが、我が国は新しい国際貢献へ前進する事となりました。

北大路機関:はるな くらま
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