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航空防衛作戦部隊論(第四四回):航空防衛力、C-2輸送機が拓くアメリカ後方連絡輸送

2016-11-17 22:07:00 | 防衛・安全保障
■C-2輸送機の戦域間輸送能力
 C-2輸送機は長大な航続距離を有します、具体的にはフェリー航続距離か2t程度の搭載であればアメリカ本土と日本本土を無着陸輸送が可能です。

 アメリカまでの航続距離があれば、緊急調達物資の第一線搬入が容易となる、列線整備ユニット、AMRAAM等弾薬、チャフやIRフレアー等、稼動状況によっては戦闘機用エンジンの本体を含め現代航空戦闘では急速に消耗する資材が多く、また日本でライセンス生産が行われているものでも同規格部品の補充を受ける事で稼動率と損耗復旧速度は向上します。この為日米防衛協力のための指針、所謂日米防衛ガイドラインにおいては、こうした装備品の供給について日米での合意が為されました。

 これは制定当時、自衛隊の弾薬を米軍へ供与できるという部分ばかりが強調され、日本のアメリカの戦争協力という視点で世論といち部市民団体などは騒ぎましたが、日本が必要とする米軍の大量備蓄資材をそのまま供給を受けられることを意味し、日本国内の米軍弾薬、そしてアメリカ本土の地球規模での作戦を支える膨大な防衛資材を臨時受領する事も可能となった点の方が実のところ大きい訳です。

 現時点では航空自衛隊は30機程度の取得を計画していますが、実際問題として生産ラインが構成され慮さんが開始されたばかりの航空機であるため、今後必要であれば製造する川崎重工へ増産を要請する事で生産数を増勢する事が出来るという強みがあります。そして航空自衛隊の航空消耗戦へ対応するには新しい輸送任務が加わるでしょう。

 日本本土からアメリカ西海岸トラビス空軍基地まで距離にして8600km、川崎重工が海外向けに提案したC-X民間輸送型では最大搭載量37t、フェリー航続距離10000kmが提示されていました。この場合、アメリカ本土へ飛行し、米軍弾薬などの供与を受け、その帰路ホノルルかヒッカム空軍基地において給油、若しくは空中給油機からの給油支援を受けつつ無着陸で日本本土へ戻り物資を、という太平洋を越えた兵站輸送が可能となります。

 これはC-130では不可能であった戦域間輸送で、C-2輸送機であればホノルルかヒッカム経由で一日での往復が可能ですが、C-130輸送機を用いた場合、グアム、バックホルツ、ホノルル、トラビス、と経由地を十分取ったうえで給油を行う必要がありました、往復すれば四日間を要します。C-130はアメリカ製で米軍において大量に用いられている為、中継地での整備支援を受ける事も可能ですがC-2はボーイング767やボーイング747と同型のエンジンを搭載し世界中の空港で整備支援を受ける事が可能です、これは運用受難性を高める。

 そして、C-130ではグアムのアンダーセン基地を経由しなければ、勿論、南鳥島飛行場や硫黄島航空基地を経由する事も可能ですが、グアムのアンダーセン基地は北朝鮮の中距離弾道ミサイルや中国軍の巡航ミサイル及び中距離弾道弾の主要攻撃目標となっていまして、有事の際には一時的に使用不能となる可能性が高く、勿論それ以上に日本本土の自衛隊基地及び米軍基地も攻撃目標となるのですが、太平洋を越えた兵站線を確保する観点から、さらにグアムを経由する必要のある輸送機から、一挙に2t程度の搭載では航続距離でアメリカ本土まで飛行できる新型機が導入される、ということ。

 今日まで自衛隊は後方地域を北海道北部に対する北海道南部、南西諸島に対する急襲、というような地理的主観から認識していましたが、C-2の輸送能力はその長大な航続距離から後方地域に同盟国アメリカの本土を含み、其処からの連絡線を構築できることを意味する訳です、このように戦域輸送機としての能力を持つC-2輸送機が有する戦略的意義は非常に大きくなります。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (2)
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