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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

アメリカのリスク 大統領選にみる変容と国際公序再構築【17】 わが国平和主義政策への影響

2016-11-08 23:02:16 | 国際・政治
■形式的平和か平和的生存権
 アメリカ大統領選挙、先ほど投票が開始されました。

 アメリカ大統領選挙、三時間前から投票が始まり、あと12時間ほどで大勢が判明することでしょう。今回の大統領選は、国務長官時代私用メール問題によりクリントン氏の優位が崩れた事で、トランプ氏の躍進に繋がっており、支持率は僅差となっていますので、本当に投票結果が読めません。場合によっては排他的で一国主義の政府が誕生する可能性も否定できず、昨今の大きなリスクとなっています。

 日本にとってのアメリカの今回の大統領選挙を経てのリスクは、不確定要素が大きくなる、ということでしょう。最大のリスクはトランプ氏が提示しました在日米軍撤退示唆を軸とした、我が国防衛負担のアメリカがアジア地域から関与度合いを薄める示唆へ平和憲法から重武装中立や武装平和維持体制への転換を含めた要求が大きくなる部分に他なりません。

 トランプ氏が大統領へ就任すれば、日本への防衛負担の要求は、例えばレーガン政権時代以上の規模で、アメリカ軍駐留経費負担金を他国と比べ二桁多い我が国に支出を更に強化させる要求があり、防衛費には上限が実質的に含められている事から、米軍駐留費を負担することで防衛費を在日米軍駐留経費分担金が大きく圧迫するということになるでしょう。

 クリントン氏が大統領に当選した場合でも、同盟国との協同を強化する方針は示されていますので、在日米軍の撤退までの大きな要求や負担増大の要求は無いものの、世界政治における安全保障という分野から自衛隊、日本の防衛政策の関与する度合いの増大は要求される見通しですので、結局のところ我が国防衛力を外向きへ転換する圧力へ、繋がります。

 独立国である以上、自国を時億の防衛力だけで自己完結する防衛力整備が、独自防衛力整備という観点から望まし事は確かですし、限定侵攻であれば冷戦時代にソ連軍の侵攻へ対処する能力を整備していましたし、大陸からの軍事力が南西諸島に侵略した場合でも、専守防衛、国土を戦場とした粘り強い防衛戦闘を展開する事で充分対抗する事は可能です。

 しかし、日本の防衛は我が国は海洋国家であり食糧自由律に限界があると共に世界との交易により経済力を維持し、巨大な工業力を化石燃料の輸入により機能させているという実情から、シーレーンを維持し、周辺地域での海洋航行自由原則を担保し、世界規模での資源産出地域の安定による恩恵から国家を運営している実情を視れば、観方は変わってくる。

 限定戦争に留まらない本土への大規模攻撃を抑止するには巡航ミサイルを潜水艦に搭載し待機させる策源地攻撃能力整備による報復的抑止力が必要となりますし、資源地域の安定を図るには日本本土を遠く離れた中東アフリカ地域などへ地域安定へ防衛力を投射し、当該地域への関心度を強く示す必要も考えられ現行憲法の臨界点を考えなければなりません。

 これは不確定要素の問題ですが、国際公序を牽引するアメリカが、例えば一国主義、アメリカ第一主義という美名のもとで牽引者から対外政策への関与の度合いを低めるならば、規範の制定への影響力が失われ、日本は独自に地域秩序や資源外交を軍事的裏打ちの下で推進させねばならず、自国領域の外に関しても重要影響事態として対応する必要が出る。

 アメリカの外交政策はこれまで一貫性がありましたが、今後はこの崩壊という危惧が、一国主義の提示により生じました。アメリカの政策が不明確になるという事は日本の防衛政策に影響を及ぼしますが、自主防衛とは言うに易し、行うのは難し、だけではなく、何処まで日本が現在の平和を謳歌できるのか、形式的平和主義に拘るのか平和的生存権維持に重点を置くのかという政策を突き付けられます。不確定要素の大きな時代へ転換するかもしれない、これこそは最大のリスクといえるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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