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防衛省平成二九年度予算概算要求の検証【9】 陸上総隊・水陸機動団・南西警備部隊関連予算

2016-11-07 22:21:55 | 北大路機関特別企画
■統合機動防衛力整備へ
 防衛省平成二九年度予算概算要求の検証、第9回は統合機動防衛力整備への部隊改編をみてみましょう。

 陸上総隊、水陸機動団、南西警備部隊、来年度防衛予算概算要求における陸上自衛隊の大きな改編を象徴する部隊名といえます。陸上自衛隊は全国へ均等な部隊を配置する基盤的防衛力整備から機動打撃部隊と緊急展開部隊に地域配備部隊を組み合わせた統合機動防衛力整備へ転換を進めていますが、陸上総隊、水陸機動団、南西警備部隊は象徴的なものといえる。

 陸上総隊の新編に係る整備としまして“ 陸上自衛隊における全国的運用態勢強化に資する統一司令部を新編するため、これに係る関連事業を計上”するとしまして、埼玉県の朝霞駐屯地へ 陸上総隊司令部庁舎地下部の建設費用80億円を要求しています。地下部分を構築する事で、航空攻撃やミサイル攻撃から抗耐性の高い指揮能力構築が行われる見込み。

 陸上自衛隊の陸上総隊は、現在、北部方面隊、東北方面隊、東部方面隊、中部方面隊、西部方面隊、全国の陸上自衛隊は主にこの五つの方面隊、旧軍でいうところの軍司令部隷下に部隊を運用しています。陸上総隊は、この方面隊の上級組織であり、方面隊を中央から陸海空と協同し指揮する、いわば陸上自衛隊の総司令部を置く一大事業となっています。

 方面隊は当初、陸上総隊により置き換えられ、全国の師団及び旅団などを陸上総隊が直接指揮する方式が模索されていましたが2011年の東日本大震災を契機として地方司令部の重要性が再認識され、方面隊と陸上総隊という階梯が維持されることとなりました。一方、方面隊間の支援体制や統合運用を陸上総隊が調整し、部隊や後方支援を円滑調整が狙い。

 中央即応集団として現在、防衛大臣直轄部隊が維持されていますが、この敷居脳の一部や要員が流用される事となっており、陸上総隊創設と共に中央即応集団は廃止され、陸上総隊直轄部隊に、第1空挺団、第1ヘリコプター団、水陸機動団等が置かれる事となっています。何れも高い展開能力を保有する部隊で、こちらは方面隊の枠に囚われない運用です。

 水陸機動団、“ 水陸機動団の新編に係る整備”としまして、 水陸両用車AAV-7の取得費用として11両に84億円が要求されています。海上から島嶼等に部隊を上陸させるため、海上機動性及び防護性に優れた水陸両用車を整備する、とのことです。水陸機動団は佐世保市の相浦に創設される3個連隊を基幹とした水陸両用部隊で、規模では空挺団を超える部隊の新編です。

 水陸機動団関連の整備事業は更に施設の整備を相浦駐屯地などで実施するとのことで、3.8億円が要求されました。部隊編制については西部方面普通科連隊を増強する形で3個連隊体制を整備している過渡期にあります。部隊整備と装備調達に施設整備を並行して実施していますが、一方、3個連隊の編成は人員不足下簡単ではありませんが、進められています。

 南西警備部隊、来年度予算概算要求陸上自衛隊もう一つの重要事業です。南西警備部隊に係る整備として746億円が要求されました。これは“島嶼防衛における初動対処態勢を整備するため、警備隊等の配置に関連する奄美大島及び宮古島の庁舎等の整備”とされていますが、南西諸島でも防衛空白地帯となっている鹿児島県島嶼部や沖縄県西部へ行われる。

 島嶼部防衛において、南西警備部隊の位置づけは対馬警備隊の位置づけ、島嶼部へ部隊を配置する事により、我が国土への侵攻を企図する勢力に対し確実な意思を誇示する目的で実施されます。庁舎の整備費用や装備品の調達と、746億円という的又費用が要求されています。南西警備部隊には地対艦ミサイルや中距離地対空ミサイル等も必要とされています。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (1)
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