◆夜行列車で夜間電力と非有効時間帯を活かす
鉄道の日記念企画、本日は夜行列車について。夜行列車で夜間電力と社会非有効時間帯を活かす、との視点から見てみましょう。
夜間電力の余剰という現在の全国原子力発電所停止下での電力に余裕がある時間帯に、夜間輸送を行うということは併せて夜間輸送が昼間輸送、有効時間帯での輸送需要を先取りする形ともなるのですから、特に省エネルギー輸送機関を自称してきた鉄道事業者は、この問題に積極的に取り組むべきです。
夜間輸送は、ブルートレインに代表される夜行列車が最初に思いうかべられるところですが、このほかについても併せて製造業の夜間シフトに対応する夜間の鉄道輸送全般に関する新しい視座、夜間旅客輸送需要に関する航空旅客輸送と鉄道旅客輸送の連環などが挙げられるでしょう。
寝台特急は北斗星、トワイライトエクスプレス、カシオペアの廃止を以て九州ブルートレイン全廃に続く北海道ブルートレイン全廃、これにより寝台特急あさかぜ以来のブルートレインの命脈は名実ともに終了し、電車寝台特急が僅かに東京と出雲や瀬戸を結ぶのみとなります。
他方でクルーズトレインとして旅行に特化した長距離列車がJR九州のななつぼし運行開始を契機としてJR西日本及びJR東日本において運行を開始する予定で、それまでの期間、豪華列車の代名詞としてその設備の秀逸性が認められるカシオペア及びトワイライトエクスプレス編成は維持されることとなるようです。
過去に夢空間編成として北斗星用に高度な客室空間を有する客車が導入され、その廃止により我が国でのクルーズトレインの位置づけには懐疑的な要素が存在しましたが、この部分はJR九州の成功により後追いを始める形となった模様で、これが単発的なものとなるかは現時点では未知数というところ。
課題としてはクルーズトレイン需要の見誤りで、クルーズトレイン需要は沿線需要ではなく遠方からの旅行者への需要、つまり全国での需要全体は限りがあるため、九州で成功し本州でも成り立つ、という構図よりは九州の需要を本州で充てる、というかたちにほかなりません。
夜行列車特に寝台特急は輸送機関としての需要にクルーズトレイン要素を加味したものですが、クルーズトレインはクルーズトレインそのものの付加価値により運行しているため、旅客輸送需要に左右されない、同じ意味で最低乗車率の担保となる沿線需要も存在しないわけです。
反面先んじて廃止された北陸方面夜行列車車体系や日本海縦貫線東北方面夜行列車体系について、特に北陸方面に対しては北陸新幹線の位置づけが置き換える形となり、最終的に北陸新幹線大阪開業を目指す現在の方針に鑑みれば寝台特急網は新幹線により置き換えられることとなりました。
この利便性ですが、北陸方面寝台特急や大阪からの北陸方面夜行急行の発車時間帯よりも新幹線の最終発車時間帯は早まることは必至で、隔靴掻痒というところでしょうか、始発の早朝化などの改善を行うにしても全般として旅客輸送への利便性は失われることとなるでしょう。
したがって、非有効時間帯という夜行列車運行時間内の旅客輸送需要をどう見るかにより判断されるべき命題ですが、夜行輸送需要は長距離バスやツアーバスなどによる需要が確かに存在することから、ホームライナーの延長線上の夜行急行というようなかたちの需要は算定しなければなりません。
例えば、翌日始発までの時間を利用した優等列車による需要の転換、特にバスに対し安全性での利点を強調した輸送体系の提示は求められるところです。この背景として、夜行輸送を列車に依存することで鉄道全般の輸送力を最大限活用するという大きな利点が生じてくるわけです。
併せて、季節運航など当然路線認可を経ないツアーバス形態をとっていることから明白ですが、路線維持に不安定要素が残るバスに対し法的裏付けが路線認可や運賃認可というかたちで明確化している鉄道が維持されることで、事業者よりもむしろ利用者への利便性確保という恩恵を担保できる事となるでしょう。
通勤輸送需要、夜行輸送とは体面に或る通勤輸送需要への対応について。通勤輸送需要への対応は、24時間輸送への今後の視点という形で検討しなければなりません。東京五輪2020年開幕を前に確実に終夜輸送需要への需要は、特に五輪観覧者からの要請として拡大します。
そこで比較すべき点ですが、通勤輸送需要についての海外での終夜輸送は地下鉄線のみの事例から近郊線までを輸送の範囲としている事例までありますが、一定以上の路線網を持つ諸国に対して、我が国の夜行輸送体系全廃の方向性提示は非常に稀有だ、といえるでしょう。
言い換えるならば非有効時間帯輸送需要へ対応する夜間運転要員確保の命題は、夜行列車輸送体系についての廃止という動向を受けますます困難となります。この要素は少なからず近郊線での終夜輸送体系の構築を阻害しているとみることはできるやもしれません、これは何を意味するか。
無論、非有効時間帯は路線保線の重要な作業時間であり、安易に輸送需要や要請に依拠した運行計画を求められたとしても鉄道全般の安全性に鑑みれば対応しにくい命題ではあります。反面、終夜輸送への対応は、特に航空機輸送における空港の24時間機能付与の面からの要請が大きい。
航空機輸送における空港の24時間機能付与が各国で導入されており、我が国へも24時間発着への対応が強く求められると共にその整備が進められています。この点でやはり難題となるのが空港連絡鉄道の位置づけで、現時点では空港との連絡輸送はバスのみとなり、不十分です。
空港都市間鉄道終夜運行が実現しなければ利用者は空港へ足止めとなりますので空港機能の24時間化への最大の意義がうしなわれてしまうでしょう。深夜に空港に到着しても、始発までの長時間、空港に足止めというものは如何とも不便で、サービスとしては不十分と言わざるを得ない。
夜間発着に対応するとして、航空管制やターミナルの機能時間延長は行われており、加えて空港内でのホテル整備や簡易宿泊施設整備が行われる事例は無いではないのですが、空港周辺宿泊施設が整備されたとしても都市部繁華街のような食事や入浴面での利便性は期待しにくいところ。
しかしながら福岡空港のように都市部中心部に空港が位置する事例を例外として、京阪神地区から関西国際空港まで、首都圏から成田空港まで、中部空港より名古屋市内まで、千歳空港より札幌へと言った路線の距離は比較的長く、安易に運行を求める事は、やはり難しい。
仮に列車を毎時一本としても、駅機能の維持や安全面の確保など必要な人員は運転指令などを含めれば非常に広いすそ野を必要とし、終夜運行に見合うだけの旅客機発着が定着しなければ基盤整備及び要員確保が不採算となり、それならば不十分ではあるものの空港周辺の宿泊設備強化とを期してはどうかとの空港側への視座にもつながるところ。
他方でこの分野における命題を解決すれば、空港が近郊に位置するという位置づけと併せ近郊線夜間輸送体系が期せずして異なる位置から実現することとなります。更に種や輸送が試験的なものでは無く恒常的な運行として定着するという担保が特に空港都市間輸送の実現で盤石なものとなれば、どうでしょうか。
例えば、終夜輸送路線近傍住宅地への新造成や再開発という新しい需要を掘り起こす事ともなるわけです。言い換えれば空港都市間夜間輸送基盤に乗じて運行路線を同時に近郊終夜輸送路線へ転換するというものです。こうしたならば、非常に限定された地域ですが社会全体産業全般の非有効時間帯の活用へ目処がつくやもしれません。
加えて、夜間運転要員確保は寝台特急を含む長距離夜間輸送にも弾みをつける事となり、現在アもつ列車に限定されている夜間輸送に旅客輸送の再活性化という大きな転換点が迎えられるやもしれません、これは夜間要員確保と夜間旅客輸送需要の不一致がまねいたのみ。
総需要は存在するものの既存の夜間輸送体系は旅客輸送需要の方式に合致されないため他の交通手段に流れているのみであり、言い換えれば需要はいまの他の輸送機関等を見る限り、確たる規模で存在するものの、夜間旅客輸送場の質的命題をとらえちがえて生じているものなのですから。
無論、大規模ターミナル全体を維持する必要は無く、首都圏であれば東京駅や新宿駅の全ての機能を維持するのではなく、夜間輸送用の限られた空間以外は施錠し対応し、本数を局限化し省力化に尽力すべきでしょう。この点で宅地開発の項目と重なりますが停車駅についても大きな検証要素と成ります。
新幹線の夜間輸送についてですが、保線の時間を考えた場合得策ではありません。特に運行システムが大きく、安全性を考えた場合には安易に旅客列車を運行させられないほか、高速鉄道故の夜間走行についてどうしても避けて通る事のでき無い命題、騒音に問題も大きい。
しかし、新幹線夜間輸送への需要は長く指摘されているところでして、夜間輸送体系に関する特集記事に在って、鉄道輸送の優位性確保の観点から多少は検証してみる事としましょう。幾つかが考えられますが、現実的視点としましては長時間停車方式や新幹線リレー号方式等が考えられるところ。
長時間停車方式は最終列車が比較的早い新幹線に在って、より遅い列車を近傍の駅に最終列車時間帯に停車させ、始発時間まで待機させ、車内で乗客は就寝しつつ、始発時間帯近くに運航を開始し、夜行列車特に寝台特急運行時代の目的地到着時間までに始発として到着できる要する、というもの。
あさかぜ、あかつき、東海道山陽新幹線にて運行する際には夜行運行の特殊性とともに以下に示す変則的な停車駅の類別、更に長時間停車を行うという乗客への明示から、のぞみ号ひかり号こだま号さくら号みずほ号ではなく、新しいかつての列車故障を充当し運行したらば、とも。
東京駅近傍の三島駅、大阪駅近傍の新神戸駅、名古屋駅近傍の三河安城駅、広島駅近傍の新倉敷駅、2300時台に発車し60分で踏破できる駅まで前進し、主要駅で扉扱いをせず停車するか、近傍のホーム維持に最小限度の要員で対応可能な駅にて改札対応せず停車することで、人的な負担は局限化されます。
ブルートレインに代表される寝台特急は客車列車方式で今日的に低速列車となっていましたが、非有効時間帯に扉扱いをせず走破することで優位性を確保してきました、新幹線は非有効時間帯に長時間停車し動かないものの、有効時間を挟み最高速度の大きさを活かして同じ時間帯の輸送需要に対応できるでしょう。
むろん、N-700Aの座席は固く、夜間には不向きです。一方で583系寝台電車のような新型車両などは新規製造しても採算が取れません。ただ、新幹線による夜間輸送の在り方としての社会実験程度であれば、実際に現在の運航時間外は長時間停車しているのみですので、需要があれば継続なければ廃止、失うものはありません。
もっとも、この輸送は新幹線に夜間のみ一回だけの途中下車を設定し、JRインのような駅隣接宿泊施設を新幹線駅に設置し、寝台料金程度で非有効時間帯の最終新幹線から始発新幹線までの時間帯を就寝できる体制を構築するだけでも、夜行列車、特に東京からの九州ブルートレインよりもかなり早く目的地に到着できるのですが。
更に一つは新幹線リレー号方式、特に新幹線リレー号として夜間快速に近い距離、400km程度を2300時発0500時着の時間として運行し、新幹線にて90分程度の距離を先んじて到着し新幹線へ乗り換える事で目的地への到着時間を短縮する、という方式は併せて考えられるところ。
東京発寝台特急富士号を、最終新幹線で名古屋にて追いつき広島まで夜間に移動し、広島駅で始発のぞみ号に乗り換える、広島から岡山まで最終のぞみ号にて前進し富士号乗り換え、浜松駅にて始発ひかり号乗り換えで東京へ、こうした変則的な利用事例は、小説の列車トリックのみならず本当に時間の無い方には愛用された方式でした。
もちろん、空港の24時間運航へ対応する近郊線終夜運行を提示した際、空港の24時間運航対応空港が広まり、国内線の深夜運行が開始されたならば、新幹線の夜間運行に意味は無くなり、併せて寝台特急の大きな競合相手ともなります。この点で地方空港は、騒音と夜間運行が問題となります。
新幹線の場合0系とN-700Aではかなり騒音の縮小措置が取られましたが旅客機はそれほどおきな騒音縮小、今回提示している方式は新幹線は夜間長時間停車、リレー号は貨物列車と同じ深夜運行ですので騒音に変化は生じないものの地方空港での終夜運行はボンバルディアDHC400のような低騒音機でも深夜発着は少々無理があるところでしょう。
事実空港の24時間対応は羽田空港の新国際線ターミナル、関西国際空港貨物ターミナルなど一部の国際空港に限られているため、夜間輸送の列車需要を脅かすような国内航空路線の可能性というものは少ないともいえ、隙間を縫うような航空輸送の在り方というものは検討されるべきかもしれません。
さて、少々脱線が過ぎた印象がありますが、都市部と近郊では夜行輸送を求める需要があり、都市間輸送についても夜行需要ではなく非有効時間帯を活用した速達性という意味での需要は存在します。この需要へ対応するには既存車両体系を以て運用を切り替えるのみでも対応できる訳です。冒頭に記した夜間電力の活用も加味した新しい鉄道の夜間輸送は検討されるべきと考える次第です。
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