北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑯・・・空母脅威に備える次期戦闘機と新弾頭Ⅱ

2014-10-06 22:04:24 | 防衛・安全保障

◆一兆円規模の開発費を数十年間で段階開発

 我が国戦闘機開発は各国が一兆円を超える開発計画を数十年間に区分し段階を組んで進めています。

Bimg_2262  次期支援戦闘機。“将来戦闘機関連事業(412億円)将来戦闘機に関し、国際共同開発の可能性も含め、戦闘機(F-2)の退役時期までに開発を選択肢として考慮できるよう、国内において戦闘機関連技術の蓄積・高度化を図るための実証研究を実施”、平成27年度防衛予算概算要求概要記述はこの通り。

Img_9151  次期戦闘機構成要素に関する研究は、単純にこの412億円で戦闘機を開発することは不可能である、と言い切る事は余りに総計で、例えばこの水準の開発費を十五年単位で継続しただけで単純計算では6000億円程度の開発費を形状し開発することができるのだ、ということができるでしょう。

Img_8712_1  しかしそれだけではなく、次期戦闘機開発に必要な各種構成要素は分割され、いうなれば航空機開発関連の予算そのものの本流が一元化されているという形をとり部分部分が此処に開発がとん挫した場合での全体に影響しないようパズルのピース一つ一つを時間をかけ開発されていまして、かたちになろうとしているところ。

Himg_3304  精密模型を週刊で部品を販売し長期間に莫大な資金を投じて完成品をくみ上げる某週刊誌方式で、国家規模でディアゴスティーニ方式か、と驚かれるかもしれませんが、実態はどちらかというと大学の学部と博士前期課程に後期課程を通じて専門研究者を養成する方式と似ているかもしれません。

Img_4577a  将来戦闘機関連事業(412億円)には、主としてエンジン部分、レーダードーム技術、ヘルメットマウンデッドディスプレイ技術、以上が盛り込まれています。エンジン部分はタービンブレードや燃焼室などの部分、既に研究開発されているエンジンの構成要素をシステムインテグレーション技術により統合されます。

Fimg_9488  部品全体は素材などから個々の技術が寄り集まって開発されるのですが、これを一度に開発するには少々技術的障壁が大きく、例えば防衛省は防衛庁時代にT-1練習機用エンジンを開発した際にはタービンブレード技術が稚拙であったため燃焼室からの高熱に耐えられず溶解してしまうなどの問題が生じました。

Img_0439  このため、例えばT-4練習機用エンジンなど既に国産開発されたエンジンも技術的習作の部分を量産し、次の開発に活かすというあたかも鰻屋のタレのように積み重ねその都度完成部分を製品化しつつ、次の開発に繋げてきました、此処が漸く戦闘機用低バイパス比エンジンの水準にちかづいてきた、ということ。

Timg_2924  レドーム技術は、既にスマートスキンレーダー技術という開発が開始されている部分、機体の側面や主翼にレーダーとしての機能を盛り込み、機体の側面方向や後方部分に対してレーダーによる警戒を行う研究が進められていますが、この部分を更にレドームの技術から進めるもの。

Img_2631  レドームはスマートスキンをそのまま航空機に装着した場合、超音速飛行により膨大な高熱エネルギーが空気摩擦により生じるためスマートスキンを高熱が損壊してしまう可能性がありますため、主翼部前面レドームと機首レドームへ応用させる技術の研究が来年度から始まるということ。

Gimg_0425  加えて、ヘルメットマウンデッドディスプレイ技術はF-15戦闘機近代化改修用に既に開発されていますが、軽量化しつつ広視野角を確保する技術開発が開始されるということになるのです、が、平成27年度防衛予算概算要求概要に示されているのはこの通りですのでこれだけで戦闘機開発は達成できません。

Img_317909  先端技術実証機ATD-Xは、この中で如何なる位置づけにあるのか、と言いますと、海上自衛隊の試験艦あすか、のような位置づけにあるといえるもので、ATD-Xがあの大きさの機体に充分な戦闘機としての実用的な性能を保持出来ればそのまま実用化という選択肢もあるのですが、実現できなければ過渡的な試験機というものになります。

Img_6370  実用、例えば超音速飛行性能を有しレーダーと火器管制装置に2000km程度の航続距離と850km程度の戦闘行動半径、もう少し日本の防衛正面の転換で必要とされますが、それと5tから8tの武装搭載量を備えていればそのまま戦闘機として通用しましょう。

Nimg_8522  逆にあの機体規模でそれだけの性能を盛り込むことが出来たならば十分最新世代戦闘機として対応可能で、すぐにでも量産すべきですが、具体的な要求性能ではなく飛行実験において国産開発された先進技術を実証するための試験母機という位置づけの機体にはそうしたものは盛り込まれていません。

Gimg_9999  実証機とは何を実証するのか、これまで開発を丹念につづけ、既に蓄積した多数ある個々の新技術は応用次第で戦闘機に発展しうる実用性をもつもので机上段階と部分試験の形を総合的な航空機開発に耐えるものへ昇華しているものを実証する、実証機とはいうなればこういうもの。

Nimg_8697_1  平成27年度防衛予算概算要求概要に盛り込まれた技術開発はどちらかというえば、平成40年代を見据えた新戦闘機開発に向け、ATD-Xに搭載して試験するための構成要素を研究し、将来開発に繋げるものといえ、これまでの分散された膨大な技術開発が総体として機能するための土台を構成しているといえるでしょう。

北大路機関:はるな

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コメント (1)
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