北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:航空自衛隊E-X,次期早期警戒機に関する幾つかの考察①

2014-10-28 22:59:01 | 防衛・安全保障

◆自衛隊が80年代に早期警戒機を導入するまで 
 最初に訃報、元タイ大使で外交評論家の岡崎久彦氏が亡くなられました、謹んでご冥福をお祈りいたします。
Gimg_0046_1  さて。次期早期警戒機について、本格的選定が始まるとの報道が幾つか出始めてきました。防衛省は来年度予算概算要求や中期防衛力整備計画に新早期警戒機の取得を盛り込み、早ければ年内に指針を示す、とのこと。概算要求の項目で触れた話題ですが、そこで今回から数回に分け、早期警戒機の位置づけや運用の歴史、更に航空自衛隊の新早期警戒機の候補について掲載してゆくこととしましょう。
Simg_8712_1  早期警戒機、自衛隊では空中警戒機と呼称されますが、航空自衛隊は1976年のMiG-25函館亡命事件発生に際し、低空を飛行するMiG-25を地上のレーダーサイトが捕捉し続けられず千歳基地を緊急発進したF-4戦闘機に対し適切な誘導を行えなかったことを反省として導入されています。
Img_2653a  レーダーの電波は直進します。電離層に反射させより遠距離のものを大まかに把握する技術がありますが、基本的に電波の直進性から反射波を標定するのがレーダーであるため、レーダーは山頂など高い標高の位置に配置されるのですが、地球は丸い為地平線の内側を極超低空飛行する目標は地平線を超えない限り探知できない。
Nimg_8340  航空自衛隊の防空監視所に置かれるレーダーは概ね探知よりが450km以上といわれ、近年は弾道ミサイル等を700km以上の距離を隔て探知するのですが、電波が直進する事は不変であり、それならば低空飛行し接近する目標を掃気に感知するにはより高い場所にレーダーを置けばよい、この視点が早期警戒機導入の背景です。
Img_8956  航空自衛隊は長時間を飛行し要撃管制などの展開へ管制官を搭乗させ適切な情報処理と共に行うE-3早期警戒管制機の導入を希望しましたが、1970年代の我が国に在って一機300億円に達するE-3Aの導入が希望されましたが取得費用の面からあまりに降下であり実現していません。
Oimg_8811  E-3は最低でも一機300億円を超える航空機ですが、1977年度の防衛予算では満載排水量4000t級の護衛艦はつゆき型が117億円にて要求されており、小型護衛艦いしかり型が65億円、当時としては世界的にも大型フリゲイトといえる護衛艦の2.5倍で、小型護衛艦ならば2個護衛隊の所要数に匹敵する費用をE-3は要していました。
Gimg_5245  もちろん、航空自衛隊はローテーションを組み常時1機を上空大気とする運用体制を構想していましたので、1機ではローテーションを組むことは不可能であり、整備予備や待機と交代の機体を想定すれば一箇所を空中警戒に当てるだけでも最低4機が必要、日本海上空と北海道上空を警戒するには最低でも7機が必要となります。
Onimg_2996  そこで航空自衛隊はE-2C早期警戒機の取得方針を定めます。E-2Cは米海軍が空母艦載機として開発した小型の早期警戒機で、E-3のように脅威情報標定や要撃管制等の能力は地上へのデータ送信により地上に任せ、非常に狭い為飛行時間も空中給油を受けない状態でのE-3の半分以下となりましたが、取得費用は三分の一にて対応出来ました。
Eimg_1967  E-2Cは、空母艦載機であったこともあり、航空自衛隊の要撃管制システムへの編入にプログラム改修を筆頭として時間を要し、その運用体制が完全に確立し完成したのは導入後十年を経てのものですが、航空自衛隊は13機を取得、アメリカ海軍を除けば二桁のE-2Cを導入した初めての空軍となります。
Eimg_3302  航空自衛隊は当初8機のE-2C取得計画を立てましたが北海道上空及び日本海というような二か所以上での警戒を想定し、取得数は11機へと拡大し、更に予備機を加え現在では13機のE-2Cを導入しました。E-2Cは青森県三沢基地へ配備、航空攻撃から重要な早期警戒機を守るためシェルターに1機1機を格納しています。
Img_6610  こうして三沢基地は航空自衛隊第三航空団に米空軍のF-16航空団や航空自衛隊の北部航空方面隊司令部をもつ自衛隊最大規模の基地となり、戦闘機だけで日米80機が展開、嘉手納基地の50機や厚木基地の空母航空団の50機を越え、其処に二桁の早期警戒機が配備されることで航空基地としては日本最大の規模を有することとなりました。
Himg_3152  しかし、周辺事態対処などが求められる1990年代を見据え、航空自衛隊の任務範囲拡大やシーレーン防衛への航空自衛隊任務増大等を俯瞰した場合、航空母艦を持たない日本が本土の基地よりE-2Cを運用する事には限界がありました。これが現在のE-767導入へと繋がった形です。

北大路機関:はるな

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