北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑭・・・ネットワーク型戦闘への対応Ⅲ

2014-10-01 20:00:14 | 防衛・安全保障

◆宇宙空間での情報優位と衛星防護

 現代戦闘におけるネットワーク優位確立には宇宙空間の通信利用及びデータ収集体制の構築は欠かせません、この点について来年度予算概算要求を見てみましょう。

Img_2728  情報優位に関して陸海空自衛隊全般にかかわる分野には宇宙分野での対応が挙げられまして、平成27年度防衛予算概算要求概要では宇宙空間における対応に“各種人工衛星を活用した情報収集能力や指揮統制・情報通信能力を強化するほか、宇宙空間の安定的利用の確保のための取組を実施する。”とあります。

Img_6006  平成27年度防衛予算概算要求概要には宇宙関連経費420億円、弾道ミサイル防衛経費を除いてもこれだけの予算が要求されており、宇宙空間での戦域情報優位への情報通珍能力の確保や宇宙空間からの目標情報収集と共に宇宙空間における対衛生攻撃手段たる飛翔体への警戒なども含まれるもよう。

Img_8254  宇宙監視システムと2波長赤外線センサの実証研究が、宇宙関連経費420億円における大きな部分となっており、これは幾つかの構成要素から成立していて、調査研究や技術研究など来年度の研究により完成するものではないのですが、継続的に着実に推進されてゆくこととなるのでしょう。

Img_6441 宇宙関連の分野では、“宇宙を利用したC4ISR※の機能強化のための調査・研究等(52億円)、としましてその基盤に、Xバンド通信衛星(スーパーバードC2号機)の後継機の整備のための準備支援役務(2億円)、衛星通信システムの通信妨害対策に関する研究(0.3億円)、宇宙監視システムの能力具体化に関する調査研究(1億円)”などが挙げられるところ。

Img_6469  更に“衛星通信の利用(219億円)、 気象衛星情報の利用(0.1億円)、米空軍宇宙業務課程への派遣(9百万円)、商用画像衛星の利用(81億円)、Xバンド通信衛星(スーパーバードB2号機、D号機)後継機の打上げ保険の付保(67億円)”など盛り込まれまして、これらは既存技術や汎用品の応用、という範疇ですが準備の意味は大きい。

Img_4455  政策面としましては“JAXAとの協力推進”として防衛省が他の宇宙開発に暗する公官庁との協力を推進する旨示され、“政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的な実施機関である、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との協力により、効果的な宇宙開発利用を推進”、と挙げられました。

Img_0002  宇宙監視システム、これは比較的制空権の概念の延長線上に近いもので具体策として不審衛星情報、スペースデブリ等の情報、我が国人工衛星情報、など宇宙空間における必要情報に対し、地上レーダー、光学望遠鏡、軌道解析データベース、という地上の設備を以て我が国衛星を防護するための情報基盤を構築することが想定されています。

Img_6773  その手段として、地上レーダー、光学望遠鏡、軌道解析データベース、以上の三類型が我が国衛生に対し衝突の危険がある場合には回避指示を行う、更に不審な人工衛星情報を得た際には地上や海上における我が方の部隊や艦艇に対して衛星の行動経路や索敵範囲などの情報を警報として発する等おこなわれます。

Img_3356  他方で脅威情報を補足した場合での対処ですが警報と回避などに限定されていまして、言い換えれば脅威情報に接したとしても対衛星ミサイルなどを開発し宇宙空間での戦闘を展開する、というような積極的施策、宇宙空間での戦闘は全く想定されていません。

File0110  宇宙監視システムと2波長赤外線センサの実証研究について。“宇宙空間での2波長赤外線センサの実証研究(48億円)(前掲「宇宙を利用したC4ISRの機能強化のための調査研究等」の内数)中赤外線及び遠赤外線の2つの領域の波長帯を使用することで探知・識別性能が向上した防衛省の2波長赤外線センサを文部科学省・JAXAで計画中の先進光学衛星に相乗りすることにより、宇宙空間での実証研究を実施”とあります。

Img_2180  即ち宇宙空間からの衛星情報画像を遠赤外線画像と中赤外線画像で撮影し、雲量や火山灰など画像衛星情報の疎外する要素、光化学スモッグなどによる地表情報の被覆等に対しても、二つの画像を照合することで目標の画像を鮮明とし、画像情報を更に確実に捕捉することが目指される研究です。

Img_66081 この開発の一環としまして、“ALOS-2の画像利用(4億円)(前掲「商用画像衛星の利用」の内数)JAXA陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の画像を利用”との施策が行われており、実際に人工衛星を打ち上げることなく情報解析に関する研究を進めます。これらは即座ではありませんが将来における情報優位の確立に大きく寄与することでしょう。

Img_07_90  以上、要約すれば情報収集衛星用の新しいセンサーを開発し将来の情報収集衛星の能力を向上させる、併せて情報収集衛星に対するキラー衛星などの脅威を未然に探知し対処する能力を特に探知手段の複合運用について研究を行う、というものが一つ。

Img_5983  更に既存の利用可能な民間技術や画像データ情報の取得に関する分野での調整と、防衛省以外の公官庁及び公的機関が有する技術研究や技術開発の部分での提携を行うことで、同一分野での並行研究という二重研究の無駄を省く、という部分が一つ。

Img_8287  一方で、必然的に宇宙空間での優勢確立には探知と回避のみで達成する事は出来ないのですが、宇宙空間での防衛行動には国内法と国際法上の制約が、もちろん地球上でも自衛隊の行動範囲には制約があるのですが、考えなければならない部分があり、概算要求とともに将来的に課題を示しています。

北大路機関:はるな

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