北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

総火演2014 平成26年度富士総合火力演習,日本最大の公開実弾演習は明日本番!

2014-08-23 23:43:11 | 北大路機関特別企画

◆富士総合火力演習の傾向と対策

 富士総合火力演習2014、明日本番が実施されます。そこでこの演習について本日は触れてみましょう。 

Fsimg_2590  鋼鉄の塊が高速で地皺の狭間を滑るように地形を無視し疾走、迷彩色と相まって間合いを詰められるまで気付かせず疾走は複雑な蛇行を繰り返しその軌道を予測させぬまま一閃、轟音、刹那風圧、叩きつけるように光閃一筋標的破砕、同時に他車が多目標同時破砕、そのまま地形の蔭へ、一瞬の出来事だ。

Fsimg_39_26  富士総合火力演習、富士学校が主催する公開実弾射撃演習です。富士学校とは富士駐屯地に本校を置き陸上自衛隊の各種装備や戦術などを近接戦闘や対機甲戦闘と長距離戦闘を主軸として研究し高等教育を行う教育機関で幹部自衛官等に対し教育を行っています。この一般公開演習がこれ。

Fsimg_5972  六月から七月にかけ、富士学校が一般見学者を募集しまして、警務隊立会いの抽選会を経て当選者に見学招待券が送られます。実弾射撃というものは一般では中々見る事が出来ませんので、この行事の人気と見学券の抽選倍率は物凄いこととなっています。

Fsimg_2752  万一、我が国が本土を侵略された際、日本国憲法では専守防衛を軸とした防衛が自衛権の行使手段と解釈されているため、自動的に本土決戦となります。そうした際、陸上自衛隊はどのような装備を以て、如何にして侵略を排除するのか、万一を考えるならば関心をもつところでしょう。

Fsimg_0719  そこで、旧軍では歩兵科といわれた近接戦闘を行う普通科職種、旧軍では機甲兵といわれた戦車による対戦車戦闘を行う機甲科職種、旧軍では砲兵科と呼ばれた長距離戦闘を行う特科職種が、各種装備を実弾射撃の展示を通じて威力を展示し、実際の行動を展示することが富士総合火力演習、ということです。

Fsimg_0781  富士総合火力演習は、前段演習、後段演習、夜間演習、の三部から構成されており、前段演習と後段演習については入場が公募制となって入り例年物凄い競争倍率を誇っています。しかし入場券が入手できなかった場合でもWeb中継を見る事が出来、今年はスカパー生中継も行われるとのこと。

Fsimg_0942  広報行事でして、見学に際しての注意点は幾つか。傘は使えません、豪雨でも使えませんので雨合羽の準備を。交通手段を確保し夜明け前に並ぶことが出来れば一般用スタンド席は用意されていますが、そののちはシート席となります。何より怖いのは熱中症、水分だけは充分に準備を。人口密度は凄いですが、声掛けと挨拶で相互の荷物番を。

Fsimg_6031  在って嬉しいポリ袋、シートに防滴に貴重品目印に。カメラは頭上も一瞬で、譲り合いが大切後ろにもひと。帰りのシャトルバスは数時間、脚力に余裕があれば徒歩一時間の板妻門バス停より路線バス利用も手段の一つ。迷ったときは隊員さんに聞こう、など。

Fsimg_2031  さて、広報は大事です。例えば、戦車は一見写真を見ただけではどのくらいの速度を発揮し移動目標を相手に戦闘を展開できるかは未知数ですし、何故高価な装甲車を多数揃えなければならないか、大砲の能力を単純な破壊力以上に把握するにはどうすればいいか、という命題は自衛官を経験するか実際に戦闘に巻き込まれなければ理解できません。

Fsimg_0831  しかし、必要性を手遅れになってから痛感しては意味が無い訳ですし、前述の通り我が国は専守防衛として本土決戦に追い込まれるまで外交交渉を続け、最後は国内で本土決戦を行うことが平和につながる、という憲法を支持しているのですから、さて我が国の自衛隊は万一の時にどのくらい頼れるのか、と理解することは主権者として大切な事です。

Fsimg_6280  自衛隊は予算により、予算は国民の血税より成り立っていますので、装備品はしっかりと整備され、高度な能力を維持し、万一の際の国民の負託に応えられるよう練度を保っているので、今後ともよろしくです、という手段として、広報が行われ国民と自衛隊をつないでいる、というもの。

Fsimg_4662  前段演習は、各種装備の展示、例えば10式戦車と90式戦車と74式戦車の射撃が高速走行を行いつつの射撃の能力を展示、装甲車は89式装甲戦闘車の火力や96式装輪装甲車の機動力に軽装甲機動車の汎用性等を展示します。

Fsimg_4646  火砲はFH-70の牽引砲運用特性や99式自走榴弾砲の迅速な射撃と203mm自走榴弾砲の威力を展示、各種ミサイルや迫撃砲も射撃を行い性能を展示します。砲兵火力は射撃能力よりも標定や陣地転換が重要なのですが、まあ、このあたりは、あくまで富士総合火力演習は興味を持つ取っ掛かり、という程度ですので、ね。

Fsimg_1677  実弾射撃は三段階を分けて標的が置かれています。3kmの距離を隔て二段三段山標的が火砲の標的となり展示、1kmから1.8kmの距離に数字の台標的が置かれ戦車砲や機関砲に対戦車誘導弾の展示、800mの色の台標的をミサイルや機関銃の標的とします。戦車砲の射撃の衝撃は、離れていても凄い。

Fsimg_5499  戦車ですが、どれも鉄筋コンクリート建造物に使用される鋼換算で1mを貫徹可能な主砲を搭載していますが、10式戦車と90式戦車と74式戦車、2km以内で相手に確実な砲弾を命中させる能力を74式戦車は有し、90式戦車は走行しながらこの射撃を連射し命中させる照準機能と自動装填装置を、10式戦車はジグザグに高速蛇行しつつ部隊毎に目標を自動分担し移動目標を同時撃破可能、このあたりが見どころ。

Fsimg_2398  装甲車ですが、普通科部隊を敵の砲弾や待ち伏せから防護しつつ戦車に随伴し、敵陣地の手前まで輸送する装備です。注目点は高いので数は少ないですが大口径機関砲と対戦車ミサイルを搭載し戦車や火砲の支援を独力で補いつつ展開できる89式装甲戦闘車、ミサイルも撃ちます。

Fsimg_5074  整地では100km/hという高速を発揮し進出できる96式装輪装甲車の速度降車戦闘による小銃射撃などの展示も行われます、ヘリコプターにも搭載でき兎に角小回りが利く軽装甲機動車など、高機動車による人員展開も展示され、やはり見るべきは各種装甲車や車両の特色の違い。

Fsimg_4710  火砲ですが、注目点は99式自走榴弾砲の自動装填による迅速な射撃と射撃後の離脱、FH-70の牽引式ながら短距離では自走可能で半自動装填装置により速い射撃、203mm自走榴弾砲は離れた標的でも弾着の威力が155mm砲弾とは違うことがよく分かる威力の展示など。

Fsimg_48850  ミサイルは、最新式の中距離多目的誘導弾が世界最新のミサイルでミリ波レーダーか光学映像により目標を捕捉し短時間で連射し離れた多数の戦車を短時間で撃破できる性能、87式対戦車誘導弾の射撃まで位置が暴露しにくい小型装備故の秘匿性もなかなか。

Fsimg_5068  軽装甲機動車から発射可能で発射した際の爆風が少ないため見つかりにくく周りにも安全な01式軽対戦車誘導弾も出てくる。携帯無反動砲は命中させるために射手の練度が重要ですがその精度とともに後方爆風という特性なども実際に見るとよく分かるでしょう。

Fsimg_6124  指向性散弾地雷による広範囲の目標制圧や携帯無反動砲による射撃、小銃擲弾の一斉射撃による小銃手による面制圧展示、小銃と機関銃の射撃、装甲車からの射撃、対人狙撃銃による指揮官への攻撃の展示、車両から火器にミサイルまで展示されるものはたくさん。

Fsimg_5359  高射学校が装備する87式自走高射機関砲の対地射撃展示や航空学校の装備するAH-64D戦闘ヘリコプターの30mm機関砲による射撃展示が近年加わっており、更に迫撃砲の展示に従来の81mm迫撃砲や120mm重迫撃砲のほかに北海道の一部にしか装備されていない96式自走迫撃砲の展示も近年加わりました。

Fsimg_5882  後段演習は、実際の防衛行動をストーリー仕立てにより展示します。ストーリー仕立てですので、航空自衛隊のF-2支援戦闘機による爆撃の展示が弾着展示により演出されますし、近年は島嶼部防衛を念頭に海上自衛隊のP-3C哨戒機の飛行展示も行われています。

Fsimg_5847  実任務を想定し、空中機動部隊による初動と空からの防衛行動、偵察部隊の陸路からの展開やヘリコプターによる空路進入により情報収集、装甲部隊による迅速な展開と防御戦闘、空中からの地雷散布や橋梁爆破による防御線構築、空中機動部隊によるヘリコプターからの増援部隊展開など。

Fsimg_2761  防衛行動は続いて戦車部隊による対戦車戦闘を行い、敵の前進を停止させ、逆に施設部隊により敵地雷の処理などを実施、長距離火力支援を受けつつ最後に指揮官の判断で部隊は攻撃前進に転換、戦果拡張に向け前進し状況は終了となります。夜間演習は一般公募での公開は行われていません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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