北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日本と中国 将来の日中友好最大の弊害、何故中国は日本を過度に脅威視するのか

2014-08-16 23:56:02 | 国際・政治

◆中国の歪曲した歴史事実が生んだ対日脅威論

 我が国が防衛力を中国の領域拡大を期した海洋進出に合わせ対応しますと、中国側は必ず反発します、それは何故か。

G12img_9609 有りもしない脅威を中国は勝手に醸成していないか。将来の日中友好最大の弊害となり得る命題故に関心を強く持つところではありますが、多くの留学生とその昔対話し気付いたことなのですが、日本の軍事力を過度に恐れる背景、それは中国共産党の歴史観に影響された教科書により、日本の軍事力を余りに過大評価してる、という部分が大きい。

G12img_4914  具体的には、中国の教科書において日本の支那派遣軍に対し、兵員数や装備水準や兵員練度といった軍事力全般で優位に立っていたとする八路軍、今の人民解放軍ですが、こちらが教科書毎の記述では八路軍連戦連勝を記しながら、日本軍が全般では優位に立っていたため、実は日本軍が物凄く強いのではないか、という行間の読みがあるという事でした。

G12img_8403 もちろん、領土気野心達成に対して、つまり日本の領域を制圧するために日本防衛力が大きくては実行できなくなります。中国は建国以来、東トルキスタン、チベット、インド、ソ連、ヴェトナム、フィリピン、とほぼすべての隣国に侵攻してきましたが、1950年代後半から、達成できていません。

G12img_1048 そもそも中国側がアメリカに対し西太平洋の中国側への割譲を求め、海洋そのものが自由で誰のものでもないとした海洋国家観と対立している昨今の背景は、西太平洋程度を聖域化し日本を含め影響下に置かなければ、中国の防衛線を維持できない、という強迫観念に基づくもの。

G12img_6863 例えば、2000年代初頭における中国の歴史教科書では、南京事件について中国側の圧倒的優位にあったものの日本側が八路軍を制圧できない事に業を煮やして、首都南京を制圧し人口の五倍以上の市民を虐殺した、としています。第二次上海事変以降の軍民犠牲者を包含し犠牲者数を算出したといわれるのですが、こう記述しているとのことでした。

G12img_6221 しかし、戦闘詳報などを読み解けば、日本側が包囲時には兵員数で圧倒しており、そもそも発端の第二次上海事変そのものが中国軍の外国人居住区への攻撃が発端となったことは記されていません。この点で開戦の意図が中国側の教科書では読み取りにくく、更に、何故優位な中国軍が自国民を守らなかったのか、という視点に繋がってしまう、ということ。

G12img_3747 中国側は日本軍の十倍以上の兵力を以て対峙し、個々の戦闘では日本軍に大打撃を与えていて快勝の連続であったが、日本軍の前進を結果的に阻めていなかった、何故か、と留学生に問われたことがありました。幸い、戦闘詳報は大学図書館書庫にもありましたので、日本側の配置は防衛庁防衛研究所の戦史研究ではこうなっている、と示すと納得されたものです。

G12img_9145 言い換えれば、十倍の戦力を持ちながら勝った勝ったと記しつつ全般では圧されていた中国軍と教科書に記されているため、中国の教科書を正直に理解するならば、人民解放軍地上軍150万と陸上自衛隊14万が全面衝突した場合、人民解放軍が敗北し北京や南京に上海といった主要都市を抑えられるのではないか、という不安があるそうでした。

G12img_0233 日本では小説に仕上げてもリアリティが無さ過ぎて出版さえも成り立たないでしょうが、自衛隊が全力で中国大陸に進出し、人民解放軍と十数万対数十万の大会戦を展開、陸上決戦で人民解放軍を自衛隊が破り、結果大陸各地で散発的なゲリラ戦を挑む人民解放軍を自衛隊が掃討する、主要都市は自衛隊に占領され軍政下に置かれる、こうした現実の恐怖感が中国にはある、ということ。

G12img_0276  正しい歴史観を、と我が国に求める中国は、実のところ矛盾点、連戦連勝なのに敗走を続ける、という矛盾点を共産党の歴史教科書として国民に押し付け続けてきました、そして日本に対する有り得ない恐怖感を国民全体が共有知として醸成させてしまったわけです。

G12img_3624 中国側としては歴史の事実、八路軍は志願した低練度の軽歩兵主体であり、正規軍である国民党軍は指揮系統と練度が稚拙であり、未整備道路に強く砲兵を有し半機械化された日本軍の歩兵師団に兵力で圧倒されていたこと、中国側が遅滞戦術に焦土作戦を用いていたため、逆に民心が親日的となった地域がある事、これを共産党統治の維持という視点から教えられないため、現状に陥ってしまった。

G12img_6388 結果的に歴史と向き合えという言葉は、史実と向き合う日本と統治上必要な虚構に付き合うよう主張する中国、これでは平行線を辿る事となります。しかし、日本に対する過度な脅威と恐怖を、中国共産党は自ら構築してしまい、統治の都合上これは是正出来そうにありません。

G12img_1234  我が国としては、主たる任務が国土防衛と主権維持であるため、大陸に攻め込む意図は国民の総意として本当に皆無である。境界線と領域はサンフランシスコ平和条約により定められたもので中国側が奪取をもくろむ島嶼部領域は日清戦争以前の日清間で合意が成立しているため、それ以上領域を拡大する意図はない、このあたりの意図が伝わらない。

G12img_4725  逆に、中国側にとっての悲劇は日本の軍事力を過剰評価し、結果的に一人相撲というべき軍拡を続け、特に人民解放軍が有事の際に日本の大陸侵攻を防げないのではないか、という恐怖を実力で抑えなければならず、具体的には中国側の教科書にある十倍の戦力で敗北という歴史を直視し、辛うじて経済力で日本に対抗し得る水準の中国に日本と比較し十倍の軍事力を求める無言の世論がある。

G12img_2602  その軍事費が中国にとっての大きな枷となって負担を与えています。このあたり、歴史を政治都合ではなく研究により支え観念的な加筆を抑えれば払拭できる一方、共産党統治維持には都合が悪いため負担に耐え続けなければならないという二つの両立できない難題が、自ら生み出した日本への恐怖を醸成し、在りもしない脅威への軍事的備えが両国の友好を阻み続けているという印象を受けました。

北大路機関:はるな

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