北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

八八艦隊の日・・・新八八艦隊、ヘリコプター搭載護衛艦八隻・イージス艦八隻の統合運用

2014-08-08 12:27:10 | 北大路機関特別企画

◆統合機動防衛力と新しい八八艦隊  
 八八艦隊、北大路機関では毎年8月8日を八八艦隊の日として特集記事を掲載してまいりました。今年は統合機動防衛力の観点を加え、特集しましょう。
Efimg_0536  八八艦隊、旧帝国海軍が太平洋へ向け、戦艦八隻・巡洋戦艦八隻を以て艦隊決戦に備える一大計画を示し、戦後海上自衛隊が発足すると護衛隊群の編成として護衛艦八隻・回転翼哨戒機八機を基本編成とする作戦単位を示す言葉となりました。しかし、護衛隊群は、はるな型、しらね型のヘリコプター搭載護衛艦をより大型の、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦、建造進む、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦により置き換えられ、ミサイル護衛艦も、あたご型より航空機運用能力を付与されておりため、より多くの回転翼哨戒機を運用可能、発展的に解消されることとなっています。
Efimg_0700  ヘリコプター搭載護衛艦、全通飛行甲板構造を採用した海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦は、艦種記号こそDDHと駆逐艦を示すDDを受け継いでいますが、ひゅうが型で万載排水量19000t、いずも型の満載排水量は25000tから27000tと大きく、全通飛行甲板は護衛艦としての防護能力や索敵能力をもちながら、一見の通り軽空母としての運用にも耐えうる護衛艦として完成しており、将来的には甲板強度の高さと航空機格納庫の能力を以て、垂直離着陸運用能力があり2017年より米海兵隊が岩国において運用を開始するF-35B戦闘機も、仮に自衛隊が導入したならば運用可能です。
Efimg_0814  新しい八八艦隊としまして、北大路機関では毎年八月八日に、このヘリコプター搭載護衛艦を現在の四隻から八隻に増勢、イージスシステムを搭載するイージス艦の八隻の整備計画と合わせ、八隻のヘリコプター搭載護衛艦八隻・イージス艦八隻を以て八八艦隊とする提案を行っています。これは現在の護衛艦隊が八の部隊単位を有していることに端を発したものです。護衛艦隊は隷下に四個護衛隊群を置き、横須賀の第一護衛隊群、佐世保の第二護衛隊群、舞鶴の第三護衛隊群、呉の第四護衛隊群を置き、各護衛隊群が二個護衛隊を基幹としているため、八個護衛隊体制を採っている、というもの。
Efimg_1547  護衛隊群は二個護衛隊をそれぞれ、ヘリコプター搭載護衛艦基幹の対潜掃討部隊、イージス艦基幹の弾道ミサイル防衛兼艦隊防空部隊、に区分し、横須賀の第一護衛隊群にヘリコプター搭載護衛艦基幹の第一護衛隊と、イージス艦基幹の第五護衛隊、佐世保の第二護衛隊群にヘリコプター搭載護衛艦基幹の第二護衛隊と、イージス艦基幹の第六護衛隊、舞鶴の第三護衛隊群にヘリコプター搭載護衛艦基幹の第三護衛隊と、イージス艦基幹の第七護衛隊、呉の第四護衛隊群にヘリコプター搭載護衛艦基幹の第四護衛隊と、イージス艦基幹の第八護衛隊をそれぞれ配置、四個の護衛隊群は、即応態勢・准即応態勢・訓練態勢・重整備、とローテーションを組み、一定規模の部隊を即応態勢に置く警戒を継続的に維持しています。
Efimg_1326  しかし、イージス艦の増勢が決定し、既存のイージス艦全てに弾道ミサイル迎撃能力が付与される方針が確定しているため、ヘリコプター搭載護衛艦基幹護衛隊であっても弾道ミサイル防衛を担当することが可能となり、護衛隊群の任務区分も変化しつつあります。すると、イージス艦基幹の護衛隊についても護衛艦を置き換える形にてヘリコプター搭載護衛艦を配置し、護衛隊の任務対応能力を均一化出来ないか、という視点に至ったわけです。全通飛行甲板型の護衛艦が八隻あり二隻が即応態勢を採り、対潜対空両面で非常におおきな能力を持つ護衛隊二個が即応態勢、これは非常に大きな抑止力となるでしょう。
Efimg_4055  ヘリコプター搭載護衛艦八隻・イージス艦八隻、もちろんヘリコプター搭載護衛艦は、乗員数で、あきづき型や、たかなみ型などの二倍、建造費も三割程度大きく、仮に中期防衛力整備計画二期10年で整備したとして、建造費だけで毎年100億円、人員も10年間で650名増員の必要があり、防衛費4兆7000億円、海上自衛官4万5500名、からみますと一見可能なように見えますが、削りに削って相当無理を強いている状況で現在の人員と規模を維持しているわけですので、新しい装備を揃えるならば、まず無理を解消して後行うべき命題も多く、容易ではありません。
Efimg_2262  一方で、ヘリコプター搭載護衛艦は汎用性が大きく、もちろんヘリコプター運用中枢艦としての対潜掃討や災害派遣の基盤としての運用も大きな能力を発揮しましょうが、将来的に海上自衛隊がF-35Bを導入した場合地域防空能力が向上、という遙か先の展望を行わずとも、例えば陸上自衛隊が導入を決定しているMV-22可動翼機の拠点や空中給油装置をMV-22へ追加搭載してのヘリコプター部隊や給油方法から既存の米軍MV-22では試みられていませんが、MV-22の高速飛行性能を持ってのE-2C早期警戒機への空中給油による警戒時間延伸、輸送艦の補完能力としての航空機運用能力など、導入することで既存装備の効率運用に資するものは非常に多いわけです。
Efimg_3090  また、航空優勢確保、特に南西諸島を見据えた場合、F-35Bを艦上運用すれば那覇基地の補完になる、という短絡的発想だけではなく、例えば機動施設隊とCH-47輸送ヘリコプターに空路投入可能な施設車両と併せ、脅威かもしくは既に巡航ミサイル攻撃などを受けた離島空港に護衛艦の防空支援下で急速展開しF-15戦闘機の運用基盤を構築、併せて護衛艦からの整備補給機材の搬入を行い、滑走路の拡張や補修、C-2輸送機とともに、戦闘機部隊の運用基盤を構築するという手法に投入するのならば、手元の装備を比較的簡単に防空圏での欠缺を埋め、南西諸島防衛強化に投入することが出来る。
Efimg_4419  もちろん、対潜掃討能力の大幅な向上は、潜水艦による我が国海上交通路への攻撃をかなりの面で封殺できます。特に航続距離が大きな原子力潜水艦をこうした用途に投入可能な国がりますが、原子力潜水艦の数は増勢中であるものの多くは無いため、ヘリコプター搭載護衛艦と固定翼哨戒機の連携により、脅威対象国の全ての原子力潜水艦を早期に無力化、撃沈を意味せずとも基地に封じ込められるならば同じように目的と達したという意味を含めているのですが、対応可能です。いうまでもなく、キロ級潜水艦は海上自衛隊潜水艦のように外洋に進出しますし、その行動範囲全てを封じる事となれば至難ではありますが、この難題にヘリコプター搭載護衛艦が寄与することは言うまでもありません。
Efimg_0934  自衛隊は統合機動防衛力を今後の防衛計画の指針としていますので、北大路機関としては昨年度末からの特集としまして地域部隊の5個の大型師団への改編を提案、陸上自衛隊改編案の師団指揮機能化と機甲師団以外の全師団の機動旅団改編と、装甲機動旅団・航空機動旅団を基幹とする大型師団を創設、装甲機動旅団は第11旅団型の総合近代化旅団編成に方面特科部隊の多連装ロケット砲を付与、航空機動旅団は方面航空隊を移管し第12旅団型の空中機動を重点とし対戦車ヘリコプター隊を持つ即応近代化旅団型を志向、方面隊を地域司令部とし機動力と指揮通信機能強化を背景に防衛力とする提案を行ってきました。
Efimg_0334  陸上自衛隊は、ヘリコプター部隊の整備と地対空ミサイルの充実にかなりの重点を置いおり、地対艦ミサイルや各種対戦車誘導弾などミサイル重視の体制を採っているともいえ、特に後者は軽量であることから、既に保有するかなりのヘリコプター部隊を機動運用、つまり管区に縛られない防衛力運用に供するならば、諸外国が虎の子としている空中機動旅団を複数整備するだけの部隊規模を有しているわけです。加えて国産戦車の性能は、国土戦を考えた場合比類なき威力を発揮できる瞬発交戦能力の高さと戦域戦術両面での機動力を有しているため、ここに一定数の装甲戦闘車が増勢されるならば、仮に現役人員規模を二割程度削減したとしても全般能力は大きく高まる、として装甲機動旅団・航空機動旅団を基幹とする大型師団の提案を行いました。
Efimg_1496  手持ちの装備に一定数の新装備を加えるだけで大きく劇的に防衛力が強化される、ヘリコプター搭載護衛艦八隻・イージス艦八隻の八八艦隊案とは、装甲機動旅団・航空機動旅団を基幹とする大型師団とともに、考え得る大きな一例です。加えて統合運用体制が強化されるならば、ヘリコプター搭載護衛艦と航空機動旅団の連携による島嶼部防衛や策源地攻撃の可能性が当然高まりますし、早期警戒機や島嶼部防空支援や基地航空作戦能力強化等、勿論『どの部隊度々の任務に展開させるかの陸海空での協力と統合指揮に関する訓練態勢充実と併せる事は不可欠ではあるのですが、検討に値する案と信じる次第です。

北大路機関:はるな

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コメント (7)
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