北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要②・・・重要施策、水陸機動防衛力整備Ⅰ

2014-08-30 23:06:12 | 防衛・安全保障

◆水陸機動団と強襲揚陸艦は九州佐世保に集約

 来年度予算概算要求における重要施策として、筆頭に挙げられるのは近年重要度が高まる水陸機動防衛力の整備について。

Mimg_4137 重要施策として水陸機動能力の付与が近年進められてきましたが、来年度予算概算要求においても完成にはいたらないものの、その整備に関して必要な装備品と部隊運用に関する、そして施設や拠点整備など必要な予算措置を盛り込んでいます。今回から三回程度に分け、これらを紹介しましょう。

Adimg_2382  我が国南西諸島について、その領域を軍事力どぁがくにより奪取しようとする隣国の行動が顕在化し、島嶼部防衛を我が国として本腰を入れざるを得ない状況となりました。キーワードとなるのは水陸機動防衛力の根底にある統合機動防衛力、島嶼部防衛に関する基盤的防衛力から同的防衛力の転換の必要性についてです。

Ndbimg_0997 統合機動防衛力は陸上自衛隊の構想としまして、我が国への直接武力侵攻に際し、第一に機動部隊の緊急展開、第二に事態周辺地域の機械化部隊の拡大阻止への展開、第三に重装備の機甲部隊の北海道からの戦略機動、という三要目から陸上防衛は構想されています。

Img_5259 機動部隊の緊急展開は、空挺部隊の航空自衛隊輸送機による展開と新設される水陸機動団の展開、機械化部隊は機動戦闘車や軽装甲機動車に火力戦闘車などの部隊、重装備部隊は平時に訓練環境が恵まれた北海道に配置し民間チャーター船等を利用し展開する。

Iimg_0354  このなかで水陸機動任務は高度な専門性、特に自衛隊が従来構築した機械化部隊戦闘や空中機動部隊による戦闘といった運用体系の応用が利かない新しい作戦能力の構築であり、必要な連携だけでも陸上自衛隊の新設部隊と共に海上自衛隊の支援部隊や輸送艦艇、それに航空自衛隊との常続的連携の維持など。

Gimg_1723  これらをまとめる指揮統制能力の整備など、大袈裟な表現では1960年代のヘリボーン部隊創設着手、1980年代初頭の機甲師団新設を端緒とする1990年代初頭の内陸誘致から水際撃破への着上陸対処方式の転換以来久々の新しい作戦運用体系の構築となります。

Img_6658  我が国は6800の島々より構成されていますので、仮にこれら島嶼部全てに部隊を張り付けた場合一個小銃班を配置しただけでも6万8000名の要員が必要となります。陸上自衛隊の人員規模を考えますと6万8000名はどうにかなりそうに見えますしが、決して簡単ではありません。

Img_4611  万遍ない配置でも分散しすぎ、小銃班程度のみとなってしまっては、確かに小銃班には小銃に加えて軽機関銃や対戦車ミサイルもありますので心強く見えるかもしれませんが、張り付けでは相手が旅団規模で進行した際に一個小銃班ではどうにもなりません。そこで、部隊を張り付けるのではなく機動運用を展開する必要が出てくる、ということが理解できるでしょう。

Img_1730h  揚陸と上陸について。揚陸能力でしたら、協同転地演習における輸送艦からの部隊展開のように、自衛隊は既に一定水準の能力を整備していますが、自衛隊の用語では揚陸は後方など周辺に脅威状況が想定しない状況下での海上からの艦艇による陸上部隊の陸上への展開をしめします。

Fimg_5946  しかし、上陸は揚陸と異なり、反撃や妨害行動などの可能性を念頭に、この排除と連絡線の確保、海岸堡確保までの一連の行動を行うものですので、従来の揚陸は北海道などの着上陸事案に対し、増援部隊を後方に展開させる念頭のものですので上陸を想定する必要はありませんでした。

Kimg_2637  来年度予算には水陸両用作戦関連部隊等の整備として190億円が要求されています。この概要は、概算要求に明示されている内容としまして、ティルトローター機の拠点整備、水陸両用車部隊の拠点整備、水陸機動団関連施設の整備、として具体化されています。

Kimg_4943  これらの部隊は、主として長崎県の海上自衛隊佐世保基地及び水陸機動部隊の原型となる西部方面普通科連隊の駐屯する相浦駐屯地を軸に、ティルトローター機の配備基地とそこに隣接する水陸両用車両部隊の施設確保に、西部方面普通科連隊を原型とする水陸機動連隊を三個程度配置する念頭で部隊の新編が計画され、長崎県と佐賀県へ部隊を集中させる方針、とのこと。装備面の具体的施策の紹介は次回に詳解を示します。

北大路機関:はるな

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