北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

エボラ出血熱 感染爆発の危惧 西アフリカ地域から北米欧州中東東南アジア地域へ拡散兆候

2014-08-05 23:52:45 | 防災・災害派遣

◆感染拡大とともに実脅威以上の社会不安が懸念

 京都では疾病予防の伝統行事祇園祭が神幸祭にて御旅所へ巡る中、世界に目を移せばエボラ出血熱の西アフリカにおける感染拡大に歯止めがかかりません。

Daimg_6598  世界保健機関(WHO)は4日、西アフリカ諸国で流行中のエボラ出血熱死者が887名に達したと発表しするかについて検討を開始しました。サウジアラビアにおいて感染疑いの患者が確認、フィリピンにおいて先ほど、シエラレオネより帰国した労働者数名にエボラウィルス感染疑いの症状が確認され、フィリピン保健当局が情報収集を進めています。またアメリカ人医療関係者に感染疑いの兆候が見られたほか、イギリスにおいてアフリカから帰国し発症した事例が生じ、各国は警戒を強めています。

Daimg_6530  感染源は不明で治療法も確立しておらず対処療法により治療することとなっていますが、今年2月に西アフリカのギニアで発症が確認、3月末までに拡大阻止に失敗し、ギニア及びシエラレオネとリベリア各国の保健当局は国家非常事態委員会を設置、、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が支援に乗り出し、アメリカ疾病予防管理センターCDCと欧州連合(EU)による支援も本格化しましたが感染拡大が進み、ギニア隣国のセネガルが国境全面封鎖を開始、モーリタニアも国境を物資輸送の例外を除き事実上封鎖しました。これにより一時封じこめに成功したとみられたものの、5月末にギニア国内で感染が再拡大、同じ頃シエラレオネでも感染報告が出されました。

Daimg_6549  現地で活動する国境なき医師団によれば、6月末に事実上制御不能状態に陥った事を発表、7月末にはWHOが確認しているだけでギニア国内で415人感染し314人死亡、シエラレオネ国内で454人感染し219人死亡、リベリア国内で224人感染し127人死亡、この情報をWHOが発表した翌日にナイジェリア都市部において発生が報告されました。現在のところ死亡率は55%ですが、これは感染疑いの未発症者を含めているとされ、CDCは8月5日に米国人医療従事者発症に伴い医療関係者を含め発生地域への渡航延期勧告を実施、人道支援の平和部隊はボランティアの撤退を開始しています。

Daimg_6560  エボラ出血熱は疾病としては警戒を要する感染症ですが、その症状から社会不安を誘発する部分が、逆に被害を広めるという視点から見る必要があります。今年二月からの西アフリカでの流行はWHOにより確認されている範疇では887名ですが、エボラ出血熱は発症後高熱を発し消化器系など内臓部分から出血を皮切りに全身の器官から出血し死に至ります。感染源は接触感染であり、飛沫感染が疑われる事例もありますが空気感染は確認されていません。しかし、全身から出血し発症まで時間が短く死亡率が高いという部分が強調されているという印象です。

Daimg_6564  恐ろしい症状ですがエボラ出血熱、発症までの時間が比較的短く、保菌者は速やかに行動不能となるため、実はエボラ出血熱は新型インフルエンザや天然痘などと比較し感染力は大きくありません。このため、隔離病棟に隔離し発症遅延の対処療法を行う事と、感染者や犠牲者への接触を防ぐことでかなりの感染防止が可能なのですが、前述の通り劇的な症状を示すと共に隔離病棟に収容された場合面会謝絶となるため、親族が感染者を匿い医療機関に渡さない行動をとるほか、隔離病棟内での院内感染を疑う住民が病院に押し入るなどの状況があり、加えて欧米の医師による施術よりも伝統療法師による祈祷療法が支持されているため、感染拡大の一因となっている可能性が指摘されています。また、WHOが確認している範囲内の犠牲者、という表現は言い換えれば報告されない感染者を意味するということ。

Daimg_6612  社会不安を誘発する部分とはまさにこうした状況であり、このため、医事面での支援よりも社会科学面の支援、例えば西アフリカ地域では伝統療法師の発言への支持が集まるのであれば現地権威との連携した疾病予防策などを志向する必要がありますし、先進国への流入に対しては、単にアフリカ出身者を拒絶するというような安易な手段を選択しないよう、対応せねば感染拡大による被害以上に流通停止などによる飢餓や暴動による犠牲者と感染防止の基盤そのものが波及的に喪失する新しい危機に繋がりかねません。従って、現実的な感染予防策を採ることで、ある程度の鎮定は見込めるかもしれません。

Daimg_6660 ともあれ、サウジアラビアやフィリピンへの拡大は、現時点で感染者が医療施設に入院し新たな感染拡大の要素が現時点では、少なくとも現時点では抑制されており、西アフリカ地域でのみ現在のところ感染が拡大中です。我が国でも空路を経て感染者入国の危惧はありますが、正しい知識とともに症状の劇的な部分に気を採られず、感染の実態と対処療法とともに感染疑いの時点で隔離措置を思い切って採ることで、少なくとも西アフリカ地域以外の感染者発生国では被害を局限化可能です。今後の展開を見守りましょう。

北大路機関:はるな

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