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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

CALFEX2014 平成26年度米国派米日米共同訓練へ東部方面隊基幹第12旅団など参加

2014-08-11 23:37:15 | 防衛・安全保障

◆CALFEXへ10式戦車・中距離多目的誘導弾初参加

 陸上自衛隊は8月29日から9月28日まで、CALFEX2014、平成26年度米国派米日米共同訓練へ東部方面隊基幹部隊を参加させます。

Cimg_8028  派遣主力は第12旅団、CALFEXは、ワシントン州ヤキマ演習場というアメリカ本土の広大な演習場環境を利用し、普通科部隊や戦車部隊に特科部隊等諸職種機動力と火力の連携を演練し、総合戦闘能力発揮のための能力向上を目的として1994年より実施されている派米訓練です。

Cximg_1792  広大なアメリカの演習場といいますが、参考までにヤキマ演習場は四国の香川県と同程度の面積があり、周辺は無人の荒野です。自衛隊のほか、韓国軍やシンガポール陸軍にイギリス軍をはじめNATO軍も演習場として運用していまして、面積が非常に大きな、といっても米軍には更に広い演習場が足す有るようですが、ここならば、広さを心配する必要はない。

Cximg_3832_1  CALFEX2014には日米が参加し、日本陸上自衛隊は統裁官に東部方面総監磯部晃一陸将が当たり、東部方面隊基幹の部隊を派遣、第12旅団の第13普通科連隊を基幹として、第12特科隊、第1師団より第1戦車大隊、東部方面航空隊より第4対戦車ヘリコプター隊など、派遣規模は350名とのこと。

Cximg_4060  アメリカからは陸軍第7師団長が統裁官にあたり、ワシントン州ルイスマッコード統合基地駐屯の第2-2ストライカー旅団戦闘団4-23歩兵大隊基幹の300名が参加します。このため、陸上自衛隊単独での戦闘訓練の他、共同交戦を念頭に置いた訓練が行われるのでしょう。

Cximg_6470 主要装備の参加ですが、特筆すべきものがあります。自衛隊は89式小銃、120mm重迫撃砲、155mm榴弾砲FH-70,中距離多目的誘導弾、10式戦車、AH-1S対戦車ヘリコプターで、米陸軍はストライカー装輪装甲車各種を参加させると発表しました。中距離多目的誘導弾、10式戦車はCALFEX初参加となります。

Cximg_8608  一方で、第13普通科連隊が所属する第12旅団は戦車部隊を持たないもののCH-47輸送ヘリコプター8機など20機のヘリコプターを基幹とするヘリコプター隊を隷下に持ち、空中機動旅団と愛称で呼ばれたこともある空中機動重視の旅団ですが、今回、旅団からのヘリコプター部隊派遣は行われないもよう。

Cximg_9691  10式戦車は第3世代戦車及びその改良型たる第3.5世代戦車に打撃力防御力機動力全面で対抗し得る性能を持ちつつ、第3.5世代戦車と比較し二割から三割程度軽量化を実現し、一定以上の重量に耐えない国内での地形に合致した戦車として開発したもので、戦術ネットワークを組み戦闘可能な戦車として完成しました。

Cximg_6888  中距離多目的誘導弾は光波ホーミング誘導というミリ波レーダと画像認識誘導方式を複合運用し、これまでの対戦車ミサイルの多くがレーザーを照射し誘導する為に相手戦車にレーザーを検知される可能性を払拭したもので、無論施設攻撃などのためにレーザー誘導も可能ですが、レーダーにより6目標へ約5秒間でミサイルを発射し対処可能な新装備です。

Cximg_6548  アメリカ本土まで太平洋を渡り訓練を実施する目的、それは年々長射程化し高性能化する火砲などが国内の演習場環境で対応できなくなったためで、日本国内では富士総合火力演習が行われる東富士演習場で僅か3km、最大は北海道の矢臼別演習場ですが、それでも14kmの長距離射撃が安全上限度となっています。

Cximg_2693  日本の演習場で使用できない長射程の火砲が有事の際に使えるのか、という指摘はあるかもしれませんが野砲の射程や戦車砲の威力は世界でも比較的標準的なもので、やろうと思えば内陸の演習場から海上に向け射撃する方式で最大射程射撃は可能で、こうした訓練は韓国軍や中華民国軍などでも行われているもの。

Cximg_9509  しかし、日本の人口密集地域分布を考えますとどうしても住宅街や市街地上空を砲弾が飛翔することとなり、危険極まりないという実情があります。事実、例えばお隣韓国軍でもこうした演習時に誤って住宅街に155mm砲を撃ち込んでしまったり、戦車砲弾が住宅を破壊することもたびたび。

Cximg_8088  日本有事の際には、応戦しないことにより失われる国民の生命財産の方が遙かに大きいため、住民を避難させてでも火砲や戦車砲を最大射程と機動性を以て使用することとなりますが、平時の訓練ではまさか毎回住民を避難させ、もしくは付随被害を容認するよう要請することは流石にできない。

Cximg_3599  MLRS多連装ロケットシステムの最大射程は30~70km、FH-70榴弾砲の最大射程は39km、99式自走榴弾砲の最大射程は30~40km、これでは十分な訓練は行えません。その昔は北富士演習場から国有地や民有地の上空を飛翔し東富士演習場への長距離射撃訓練も行われていたのですが、昭和後期にはこうした訓練も安全上中止されました。

Cximg_6458  更に戦車砲に1m近い鉄板を貫通するAPSFDS弾が採用されますと、APSFDS弾は極超音速に加速し砲口を発射後、装弾筒というカバーを脱離させ矢の形状を以て飛翔します、これが条件によっては数十kmもの距離を飛翔するため、走行しながらの射撃、つまり行進間射撃は万一外れた場合を考慮すると演習場を飛び出す危険があり国内では安全上不可能となったわけです。

Cximg_1965  こうしてCALFEXとしてアメリカでの訓練が行われることとなりました。ちなみに、戦車砲のAPFSDS弾は2000年に00式戦車演習弾が制式化、一定距離飛翔後に摩擦熱で溶解し落下する新砲弾の開発で、富士総合火力演習などでも行進間射撃が可能となりました。またMLRSなども演習弾が開発されていますが、最大射程の訓練はやはりできない。

Cximg_3080  加えて、CALFEXは部隊規模の戦闘訓練と射撃の両立、つまり部隊の行動訓練を行うと共にその先で射撃を行う事が出来るため、行動訓練を演習場で行い射撃訓練は別に射撃場へ展開しなければならない、ということがありません。即ち非常に実戦的な訓練が可能であることを意味し、自衛隊の能力全般の底上げにも寄与します。

Cximg_8055  訓練参加部隊は例年、民間車両運搬船により火砲や装甲車両などを輸送し、揚陸と訓練場までの車両輸送は民間会社が対応、演習場において自衛隊員が整備し訓練に参加します。装備品を太平洋を越えて輸送し訓練することは非常に大きな費用を要するのですが、それに見合う成果があるというわけです。この訓練が抑止力となり、我が国を戦火の災厄から守るよう期待したいですね。

北大路機関:はるな

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