北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北部方面隊火力戦闘演習と富士総合火力演習、一般公開実弾演習の実施と支援体制

2014-08-24 23:20:41 | 北大路機関特別企画

◆15000名招待の展示訓練へ膨大な準備

 北部方面火力戦闘演習、北部方面隊創設30周年を記念し冷戦時代に実施された一般公開演習です。

Fsimg_0217 本日は富士総合火力演習が行われましたが、実はこの準備は非常に大きな準備と計画、演習の表に出てこない下準備とともにおこなわれているものでして、その比較として、北部方面隊火力戦闘演習と富士総合火力演習、一度きりの大演習と毎年恒例の行事という視点から見る事としましょう。

Fsimg_6782  このおはなし、富士総合火力演習の一般公開は本日実施され、多くの一般応募者とともに防衛政策の転換期にある昨今の自衛隊公開演習は海外からも注目を集めたとのことですが、一般公募の見学の競争率が十五倍に迫るものとなりました、そこで当方が話として聞くのは全国の方面隊でも同様の火力演習を一般公開できないか、というもの。

Fsimg_6776 即ち競争率の大きな演習一般公開は関心度の高さなので北部方面隊の矢臼別演習場、東北方面隊の王城寺原演習場、中部方面隊の饗庭野演習場、西部方面隊の日出生台演習場で連隊規模の火力展示演習を行えないか、つか見たい、会場が多くなれば見れるチャンスも増えるはずという本音だ、とのお話しでした。

Fsimg_0114 方面隊毎の展示訓練は可能なのでしょうか。北部方面隊火力戦闘演習、実は過去に一般公開の実弾演習として行われています。二十年ほど前に東北方面隊も王城寺原演習場において総合戦闘展示演習を行っています。特に三十年前におこなわれた北部方面隊火力戦闘演習は、聞くところによればそれは凄い規模の展示であった、とのこと。

Fsimg_6384 1982年10月14日、北海道大演習場北恵庭地区において北部方面隊火力戦闘演習は実施されました。一般の招待客を中心に15000名が見学、当時の富士総合火力演習、当時はまだ総合火力展示演習と呼ばれた時代ですが、1980年代の見学者の規模と比べますと北部方面隊火力戦闘演習のほうがやや多いという規模です。

Fsimg_0371 この北部方面隊火力戦闘演習は北部方面総監渡部陸将が統裁官となり、方面総監の傍らには総監部幕僚と共に北部方面隊の戦略予備第7師団長、道北第2師団長、道東第5師団長、道南第11師団長、と北部方面隊の精鋭四個師団師団長が一堂に会するという陣容で視閲しました。

Fsimg_0145  執行部隊の主力は第72戦車連隊、状況開始と同時に一列に車両部隊が進入、富士総合火力演習では一発二発と撃つものなのですが、対戦車誘導弾と無反動砲の一個対戦車隊16基/門同時射撃から始まり、奥に並ぶ16の標的が同時に命中し爆砕されるという幕開け。

Fsimg_6821_1  ヘリコプター8機による普通科中隊の空輸と緊急展開展示、同時にC-1輸送機10機からの空挺降下が中隊規模にて実施、ヘリボーン部隊とエアボーン部隊は地上で進出した装甲車両部隊と即座に合流、このあたりで規模として現在の富士総合火力演習よりも規模が大きい。

Fsimg_6807_1 73式装甲車も20両単位で展開し、75式自走榴弾砲8門とともに協同行動を展示、戦車も同時に18両が射撃展示を行った、とのこと。当時ですから戦車は74式戦車ですが、富士総合火力演習でも小隊射撃まで、中隊、それも当時の増強中隊の射撃展示は、ちょっと今の演習場環境では一般公開、想像できません。

Fsimg_6396 北部方面隊火力戦闘演習は、富士総合火力演習の現在の規模よりも大規模に実施された、ということですが、実はその後、今に至るまで実施されていません。仮に毎年実施していれば、富士総合火力演習以上に注目を集めたでしょうが、それではなぜ一回しか実施されなかったのでしょうか。

Fsimg_6645 北海道大演習場を舞台としたこの演習ですが、毎年実施に至らなかった最大の理由は負担の大きさです。北海道大演習場に幅2kmと奥行き3kmの特設射撃展示場を開設、ここに15000名が着席できる仮設席を渡河器材等を用いて応急設営しています。

Fsimg_6751 会場設営、この建設には第3施設団が三週間、年度訓練計画を変更し設営に専念しました。施設団は3000台分の駐車場を設営、演習場の奥で行われるため、新たに演習場と駐屯地の間に膨大な交通量に備え百間道路が建設、見学者は北恵庭駐屯地に入場門を設置し大型バス50台を借用しピストン輸送したとのこと。

Fsimg_7004  VIP輸送用にはUH-1が20機用意され、札幌市内の真駒内駐屯地と北海道大演習場をピストン輸送、報道関係者や市町村長に国会議員などVIPは恵庭からの輸送分を含め500名を輸送したとのことですので、この輸送だけでも一つの演習となってしまうほどと言って過言でないでしょう。

Fsimg_0212 演習冒頭に一個対戦車隊同時射撃という幕開けで始まったこの北部方面隊火力戦闘演習は使用した弾薬量も膨大なものとなりました。具体的には全弾必中を掲げたため、各師団より抽出した弾薬と訓練要員を集成し実施した、とされ、更に演習場を一定期間占有し、方面施設団がかかりきりの準備、これを毎年行うには師団毎の訓練管理体制に支障を来します。

Fsimg_0330 かくして、北部方面隊創設30周年として実施された北部方面隊火力戦闘演習は一度きりの展示となりました。さて、富士総合火力演習は、静岡県の御殿場という首都圏に近い立地であり、招待客は移動にそこまでの苦労はありませんし、富士急行バスなどの協力もあります。

Fsimg_6579  しかし、会場設営や抽選会と誘導など、演習は実弾射撃の展示と共に指揮系統と計画立案と準備及び遂行能力が試される瞬間ともいえるわけです。運営は民間に丸投げすれば、という声があるかもしれませんが、予算面からも統制面からも安全面からも、現実的な案とは言えません。

Fsimg_6513 富士総合火力演習は、見栄えの良い実弾射撃の迫力に単に圧倒されがちですが、戦車が発砲し命中したので凄ぇ、という水準にとどまらず、毎年数万が見学する行事を滞りなく独力で計画し実施している、という部分だけでも、自衛隊の能力を内外に示す機会となっているのかもしれませんが、一方で他の方面対にもこの規模の演習を行えるだけの支援を求める事、これは残念ながら無理というべきでしょう。

北大路機関:はるな

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