北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

広島原爆慰霊の日 世界と共に歩む積極的平和主義か孤立覚悟の形而的平和主義か

2014-08-06 23:55:31 | 北大路機関特別企画

◆厳しい現実を突き付けられ転換点に差し掛かる

 本日は広島原爆慰霊の日です。しかし、原爆慰霊の日に絡め集団的自衛権論争を持ち込み反発する方々がいまして、この点について改めてひとつ。

Himg_6335 1945年のこの日、広島を戦略爆撃機から投下した核爆弾が蹂躙しました。軍管区司令部が置かれ、船舶工兵司令部も展開する都市ではありましたが、住民の大半は非戦闘員であり、既に慣習国際法となっていたジュネーヴ文民保護条約が禁じた無差別爆撃にあたるのではないかと考えるところです。今年の広島原爆慰霊の日は核攻撃を行った当事国であるアメリカよりケネディ駐日大使の出席があり、雨天の中出席した安倍総理とともに黙とうをささげていました。

Himg_63250 歴史上の”もし”は禁忌ですが、仮に原爆を搭載したB-29が、広島市の隣、当時は広島市よりも多くの人口を有していた呉市を標的としていたならば、当時呉軍港には戦艦榛名、伊勢、日向、以下多数の艦艇が停泊し、榛名以下3隻の戦艦が有する36糎艦砲は最高高度を飛行するB-29を迎撃可能で、艦砲によるB-29撃墜の戦果もありました、陸軍の八八式七糎半野戦高射砲や九九式八糎高射砲よりは遙かに有力で、原爆搭載機を迎撃出来惨禍を食い止められたのではないか、ふと思いつつ、だからこそ呉ではなく広島が標的であったのでは、とも。

Himg_6331 さて、我が国は戦後、非戦を近い、しかし東西冷戦という国際情勢の変化から厳しい現実を突き付けられ転換点に差し掛かり、二分された世界において国土を占有し拠点とされる危惧を起床する必要を解消すべく、専守防衛に転換し、吉田内閣時代に軍隊では無い防衛力、警察予備隊、現在の自衛隊を創設、併せて日米安全保障条約を締結するも米軍駐留規模を岸・ハーター交換公文により事前協議無き兵力展開を禁止し、岸内閣時代の方針を佐藤内閣が引き継ぎ非核三原則を発表、平和主義を堅持してきました。

Himg_6332  非武装中立では我が国土の位置そのものが戦略的要衝にあることから、東西勢力の境界線において非武装を堅持すれば一方の専有を回避すべくもう一方より先制占領されることとなります。故に本来の中立とは“国土を第三国に利用させない”覚悟をもち、スイスやスウェーデンのように国力が許す最大限の重武装と兵力動員体制を以て中立を堅持するものです。しかし、憲法上戦力を否定する我が国には、軍隊ではない軍隊という非常に曖昧模糊とした主権維持の実力組織に防衛力を抑えるほかなく、今日の矛盾に繋がるところです。

Himg_6339 厳しい現実を突き付けられ転換点に差し掛かる、これは東西冷戦の始まりと自衛隊創設にならび、現在の我が国において中国から突き付けられる現実を前に、集団的自衛権と集団安全保障体制の構築による世界と共に歩む積極的平和主義の政策への転換御行うのか、一国平和主義で自国への直接の軍事脅威が国土国民を戦火に巻き込むまで静観する戦後日本が進めた孤立覚悟の形而的平和主義を続け、特に中国が建国以来チベットやインドにソ連とヴェトナムやフィリピン等に対し侵略を繰り返し近年再度顕在化させている現状を放置するのか。

Himg_6345 広島原爆慰霊の日は、不戦の誓いを新たに、と深く考えさせられると共に、その願いを具現化した日本国憲法九条は不戦を以て平和的生存権の国民への担保を明示したものではあるのですが、主たる権利は平和的生存権であり、国家の自衛権を拒否することで生じる国民の平和的生存権侵害を認めるものでは無く、不戦の誓いを以て非武装が外敵の侵略を阻止できなかった際に、侵略からの蹂躙を看過するよう国民へ義務を課したものでもありません。

Himg_6351 一方で、我が国は防衛力を専守防衛に留め、伝統的に国土を侵略されない限り対処しないという指針を示し、言い換えるならば国土を蹂躙した敵は必ず撃破し無力化する、という国土戦を基本としてきました。つまり、抑止力の破綻は即座に本土決戦を意味するという憲法上の制約のもとで防衛力を整備してきたのですが、ここに世界と共に歩む積極的平和主義か孤立覚悟の形而的平和主義か、という視点が突き付けられているわけです。併せて一国平和主義は勢力均衡主義に陥り軍拡競争に繋がりかねません。故に世界と共に歩むか、これまで通り孤立するか、このあたりが現在、転換点において判断を迫られているところで、国民的な理解と議論が必要となっているわけです。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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