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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ジプチ基地の概要 ソマリア沖海賊対策事案へ検討されているP-3C派遣先

2009-01-19 17:51:56 | 国際・政治

◆ジプチ基地の概要

 海上自衛隊のP-3C部隊が展開を検討しているというジプチについて、本日は掲載したい。アフリカの過酷な滑走路だけの前線飛行場、というイメージを持たれているかもしれないが、実はフランス空軍の戦闘航空団が展開している航空基地である。

Img_9535_1  P-3Cや基地の話題のまえに、まずジプチという国から。ジプチはフランスの植民地として発達し、1977年に独立。もともと1960年代に独立の是非が検討されたものの、一時はタヒチのようなフランスの海外県として留まることを選択、その後、民族運動の高まりをうけて1977年に独立したが、国内にはフランス軍部隊が駐留している。国内ではソマリアとの部族問題などにより内戦状態にあったが、現在は内戦が終結している。人口は45万、横須賀市の人口と同じくらいの国だ。アフリカ、そして紛争地ということで気になるのは政情であるが、フランス軍が駐留しているため、治安は良好だ。

Img_8086  基地においてP-3Cを運用できるのか、という点について。ジプチにはフランス軍が駐留していおり、その中でもジプチ航空基地には、航空戦闘軍団隷下の第4/33戦闘航空団が展開している。航空団は、ミラージュF-1戦闘機を運用しており、協定によりフランス空軍部隊は、ジプチの防空任務にあたっている。ジプチ空軍は輸送機やヘリコプターなどを運用しているのみであり、実質的に防空はフランス空軍が実施しているようだ。ミラージュF1は、航空自衛隊のF4と同世代で、制空・迎撃・攻撃・偵察に運用することが可能な多用途戦闘機だ。ミラージュシリーズの中でも、頑丈な二重タイヤを採用し、前線の未整備滑走路からも運用が可能なミラージュF1を派遣しているあたり、やや滑走路の状況に一考の余地を置きたくなるが、一方で、ミラージュF1の輸出実績は、ジプチ周辺のアフリカ諸国に多いという点も挙げられる。

Img_9566_1  海上自衛隊は、フランスと同様に、ジプチと地位協定を結ぶというが、ジプチにおけるフランスの位置づけについて。フランス外人部隊の機械化部隊である第13准旅団[二個連隊基幹]、陸軍第5国際混成連隊、そして陸軍航空隊ジプチ分遣隊がSA342の飛行隊を派遣している。フランス軍機械化部隊は、四輪式のVAB装甲車やVBL軽装甲車を装備している。航空隊のAS342とは、フランス陸軍の小型汎用ヘリで、愛称はガゼル、人員3名もしくは600kgの貨物を搭載することが可能で、20㍉GIAT機関砲かHOT対戦車ミサイルを搭載して攻撃任務に就けることも可能だ。

Img_0810  ジプチ陸軍は人員4000名、その六分の一が憲兵隊で、国境警備部隊、コマンド大隊などからなる軽装備の部隊である。したがって、フランス軍地上部隊のポテンシャルは大きい。第一線を知る軍事アナリストである毛利元貞氏がフランス外人部隊在隊時に所属していたのも、この第13准旅団で、120㍉重迫撃砲小隊に所属していたとのこと。当時の様子は氏の著書“傭兵修行”(並木書房 1990)にも詳しい。

Photo  哨戒機の運用基盤については不詳だが、ボーイング747の運用が可能とのことで、加えて、少なくとも訓練目的でC-160輸送機の展開は多く、米軍部隊も駐留している。仮に海上自衛隊の展開によりP-3C哨戒機の運用基盤が整えば、NATO加盟国でP-3Cのジプチ派遣を行う国も出てくるかもしれない。もちろん、課題は多い、これまで訓練で派遣されたグアムよりも遠いことは確かであるし、部品や機材の搬入にはかなりの苦労が予想される。この点、航空自衛隊のクウェート派遣などのノウハウを共有し、また、必要であれば輸送機の支援とともに対応することが前提となる。

HARUNA

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コメント (2)
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