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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

戦略爆撃機B-52を自衛隊超長距離シーレーン防衛用に売り込み

2009-01-31 13:05:02 | 防衛・安全保障

◆20年前に横田へ飛来した怪鳥の噂

 F-22が30日、嘉手納基地にて報道陣に一般公開されたとのこと。これが日本への売り込みか否かは、評価の分かれるところである。しかし、20年前、怪鳥が日本に売り込まれていたとの噂があった。

Img_9466  1989年、日本では海上自衛隊が続々とP-3Cを配備しており、かつて鈴木首相が表明した一千海里シーレーン防衛構想が着々と実現に向かっていた時代。航空自衛隊も、これを援護し、且つ対米貿易黒字の相殺のためにも役立つということで早期警戒管制機の導入や空中給油機の導入を検討していた時代のお話である。他方、世界を見渡せばいよいよ冷戦は終局に向かいつつあり、7月にソ連海軍のスラヴァ級ミサイル巡洋艦、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦など3隻が米海軍のノーフォーク基地を親善訪問、続く八月にはアメリカ海軍のイージス艦トーマス・S・ゲイツ、ミサイルフリゲイトのカウフマンがソ連海軍のセバストポリを親善訪問していることに、当時の緊張緩和の様子が端的に示されている。

Img_9496  そうしたなかで、744機が生産され、一機だけの搭載量で第二次世界大戦中に使用された前爆薬の破壊力に匹敵するだけの核爆弾を搭載し、24時間体制での哨戒任務につき、また、ヴェトナム戦争では絨毯爆撃を担ったB-52戦略爆撃機も、その役目が終わろうとしていた。今日でこそ、アフガニスタンなどで、上空に長時間滞空し、地上からの座標送信に応じてGPS誘導爆弾をリアルタイムで投下し、地上部隊の作戦を支援する、戦略爆撃機による近接航空支援任務が付与されるようになって久しいが、冷戦が終結しようとしている当時、グアム島の第43爆撃航空団には新しい任務が付与されていた。それは、洋上攻撃仕様のB-52による哨戒や対水上攻撃の任務である。

Img_9446_1  1989年8月19日、20日にかけて行われた恒例のアメリカ空軍横田基地フレンドシップデーでは、横田基地には1965年6月27日以来24年ぶりにB-52爆撃機が着陸、来場者に一般公開された。この時に飛来したのはB-52Gで、193機が生産された機体、現在現役の機体はB-52Hであるが、G型はこの一つ前の型である。B-52による24時間体制の核パトロールは1991年まで継続されているのだが、横田にて一般公開されたB-52Gの装備はかなり特異なものだった。

Img_5800  B-52Gの主翼下兵装パイロンには、ATM-84A-1Cハープーン空中発射型とMk56対潜機雷、Mk60キャプター機雷が装着されており、機体内部の爆弾倉には、Mk52機雷が装備されていた。この装備でのB-52Gの飛来に、一部では自衛隊の超長距離シーレーン防衛用にB-52Gを売り込んでいるのではないか、という噂が流れたようで、この内容などは、月刊丸の通巻520号に触れられている。もちろん、単なる噂ではあるがB-52G、シーレーン防衛で海上自衛隊か航空自衛隊が装備することになっていれば、当然、P-3CやXP-1よりも搭載量や滞空時間が長く、任務対応能力も向上するのだろうが、あの巨大な機体が配備される基地には、一種想像できないような情景があったことだろう。

Img_2065   ちなみに、2000年代に入ってのち、オーストラリア空軍のF-111C/G戦闘爆撃機、イギリス空軍のトーネードGR.4攻撃機の後継にJDAMを搭載したB-1Bが売り込まれたことがある。これは用途廃止される32機のB-1Bのうち、8機を地上展示や博物館展示に回し、残る24機の機体を、部品予備としてアリゾナ州のデイビスモンサン基地に保管する予定であったのを、保管するよりも24機あれば、一個飛行隊8機と予備機4機でもって二個飛行隊を編成できる、として、イギリスとオーストラリアに売り込んだもの。しかし、価格面で折り合いがつかず、実現には至らなかった。これについては月刊航空ファン通巻601号に記載がある。あたかもF-16でも売り込むようにB-1B売り込むなよ、と考えるのは小生だけではあるまい。

Img_0975_1_2  もっとも、この種の話は装備品が退役間近になると、どうしても出てくるもので、空母キティーホークをインド海軍に売却しようとか、S-3艦上哨戒機を消防用に使えないかなどなど話としてはよく出てくるものではある。他方、商談が成立する場合もあるため、すべて、与太話と片づけるわけにもいかず、B-52Gについては、どこから囁かれだした噂なのか、気になったりもする。

Img_0025  B-1Bに関する余剰機売り出しという実際の話を聞くと、もしかしたらばB-52Gの自衛隊売り込みという話は多少現実味があったのかもしれない。B-52Gは、その任務をB-52Hに譲り、第一次戦略兵器削減条約の削減対象となったことでほぼ全機が廃止されている。B-1BやB-2と比べて経済性の高い米空軍のB-52Hは2045年まで維持され、延命措置の上で運用が継続されるとのこと。仮に、の仮にではあるが、海上自衛隊の哨戒機として採用されていたらば、XP-1の開発も無くなっていたか、相当遅れていたかもしれない、と想像してみるのも一興か。

HARUNA

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コメント (2)
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