現場をまわっているときは、できるだけ野外の虫を観察できそうな場所で昼食をとるようにしている。
先日12月11日には、海老江人工干潟のそばの河川敷で昼食後の散歩をした。でかいカニの穴がグラウンドの端にボコボコあいていた。アシの枯れ茎を割ってルーペでのぞきこんでいると、生きたツメダニっぽいのが、茎の奥に逃げこんだようにみえたので、その周りの何本かも含めて持って帰った。
ところが、持ち帰ってバラしてみても生きたツメダニは幼虫が数個体出てくるだけで、成虫は古い死骸しか出てこない。ゆっくり探している時間もないので、死骸をプレパラートにしてみた。
ハマベツメダニCheletomimus (Hemicheyletia) wellsiだった。
このダニは植物上から採取されたり、室内塵から検出されたりしている。
アシの茎の中からでてくる生き物を調べると、ケナガコナダニによく似たコナダニや、ヒラタチャタテによく似たコナチャタテの一種なども出てきて、室内の生物相を連想させる。
家屋内でみつかるダニの進化史っていうのは、
1)乾燥地や枯れた植物の中で生活する種
2)1の中から動物や昆虫の巣の掃除屋やその捕食者が現れる
3)2の中から動物の体表寄生種が現れる
4)以上の種の一部がヒトの巣(家屋)にも入り込む
などと、ダニの研究者はみんな考えているのだろう、たぶん。
というわけで、枯草のダニは仕事と無関係ではないわけだ。
道草にはリッパなイイワケが詰まっていたとゆーわけではない。
バキバキと枯れアシを割っていると、ブチっとフサヤスデをつぶしてしまった。ついでに前から気になっていた尾端の毛をみてみた。
全然違う分類群にありながら、ヒメマルカツオブシムシの幼虫とフサヤスデは本当によく似ている。防御用の毛も似ているかというと、・・・全然似ていなかった。
フサヤスデのはクリップ状の構造になっていて相手の体に引っかける方式だ。これはこれでスゴそうだ。
ヒメマル幼虫の槍状毛のほうは、簡単に取り外せそうな外観だが、トビイロケアリなどで試すと完全に相手の動きを封じている。北欧神話のフェンリルを縛ったヤツみたいに、無害そうにみえて丈夫な鎖だ。(つまり、仕組みが分かるようで分からない)。