害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

オオスズメバチのコナダニ

2011-02-27 15:01:38 | 自然観察

特定の部位の毛の数が種の分類に使われている昆虫やダニのように、ヒトも頭部の毛の数で分類されたりすると、ウチの会社の上層部も属の移行が避けられないか・・・などと眉を寄せながら高齢化する社員たちを見渡して様々な危惧を抱く昨今である。立場が危険になる考察はさておいて、オオスズメバチの巣のカケラからコナダニがわいてきたので、毛の生え方などを調べてみた。
ダニの毛というのは分類で重視されているだけあって、勝手気ままに生えているようなものではない。ヒトでいえば指が何本あるかに匹敵するくらい重要じゃないかと思う。

オオスズメバチの古巣が欲しいとアチラコチラにお願いしていたのは、ダニが欲しかったのではなくキスイムシ科のSpaniophaenusを狙っていたため。結局集まったのは、巣材のカケラが少々混じった土(神戸市)だけというテンション下がりまくりな物体であった。それでも、キスイムシ科の幼虫がでてきてワクワクしたのだが、先日確認できた成虫は、あーウチの畳の下から時々出てきますよソレとか他人からいわれそうな普通な雰囲気がただよいまくるキスイムシの一種Cryptophagus sp.だった。

あまり興味深くないキスイムシと一緒にみられたコナダニのほうは、自分の趣味的に興味深い種だった。いくつかの文献をあたってみて、ムクロコナダニの一種 Acotyledon paradoxa Oudemans, 1903 と同定できた。鳥の巣とか動物の体表とかから見つかっているらしい。Acotyledon_paradoxa01 

日本産土壌動物(1999)で検索するとネダニモドキになるけれど、付節に先が膨らんだ剛毛がない点で異なる。土の中からでてくる長毛が少ないめなコナダニというと、日本産野生生物目録(1993)に載っている範囲では以下の属がある。属の和名は目録に示されていなかったので、種の和名から適当に抜粋して利用した。シロアリ類に、この辺の属のヒポプスがよくついているので、シロアリ屋としても要注目なグループ。
シュビーブダニ属 Schwiebea(最近の和名はミズコナダニ属)
ネダニ属 Rhizoglyphus
ネダニモドキ属 Sancassania(=ゴミコナダニ属 Caloglyphus)
ムロコナダニ属 Cosmoglyphus (=Murodania, 最近の和名はヘラゲアシナガダニ属)
ムクロコナダニ属 Acotyledon

目録にはAcotyledonが2種(ムクロコナダニ A. corporis, イエシロアリコナダニ A. formosani)しか掲載されていないが、世界ではたくさんの種が記載されているので、今後日本でも種数が相当増えていくと思う。

ムクロコナダニ A. corporisがどんな報文に載っているのか調べられなかったので、探してみようと思っている。お墓をあばいてみると、ご遺体にびっしりとダニがたかっていて、掘ってる人の絶叫が墓場に響き渡ったなんていうような変な空想ばかりしてしまうが、多分コープスブライド的な状況とは無関係なのだろう。

Acotyledon_paradoxa02

Acotyledon_paradoxa03