害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

アナタカラダニは卵から赤い

2009-04-19 14:36:14 | 自然観察

神戸で建物清掃のお仕事。害虫駆除業務といっても、ウチでは機械の裏にもぐりこんでゴミをかき出したり、窓枠に溜まったゴミを除去ということが多くて、実際は掃除業務に近い。
外壁のコンクリートの目地には、コケ類やら干からびた緑色の皮膜状のものがくっついていたので、フイルムケースに入れて持ち帰ってみた。Balaustium_eggs
緑色皮膜は拡大して観察してみると、アオミドロの乾燥品という外観なので藻類だとおもう。
あとでプレパレート標本もつくってみよう。
藻類に水滴を落とすと、よく吸水して膨らんだ。藻類の表面には赤い小さなルビーのような卵が付着していた。ほとんどは1つずつ散在していたが、3~5個ほどが集まった状態で生みつけられている場所もあった。まるで、鳥の巣の卵みたい。一番大きな5×9mmほどの藻類のカケラからは、22個の卵をみつけた。
てことは、建物全体で考えると軽く万の単位で卵がありそう。
この卵は、ここで毎年大量発生するアナタカラダニの卵と考える。文献に出てくる形態の記述ともよく合う。
それにしても不思議だ。8月頃にはほとんど見かけなくなるが、そのあたりから、ずーーーうっと卵の状態で過ごすというわけだ。よっぽどマズイ卵に違いない。普通は他のダニなどに食べられてしまうだろう。

同じ場所で採取したコケには、アナタカラダニの成虫が隠れていた。成虫は皆メスでオスが採集された例は無いそうだ。Balaustium_adult
機敏に動き回るが、あの炎天下で見せる奇妙なジグザグ行動はしなかった。アナタカラダニが花粉を好むことは分かるが、ジグザグ行動が地表に落ちた花粉探しのためとする意見はナットクしかねる。むしろ海浜の岩礁地帯でみられるような、強い日差しの下で活動するハシリダニなどの赤い前気門類たちと何らかの共通点があるように感じる。

アナタカラダニに関しては、問い合わせなどが多いワリに、こちらも情報が無いので困る。なんかワカランヤツですが、ゴッツイ悪いやつでもないんでほっときましょうや、という説明では、洗濯物を汚された主婦の方々の怒りを鎮めることはできないし。発生源の効果的な清掃方法とか、簡便な対策がみつかるとよいのだが。