自発的な昆虫採集でも、やっている本人が楽しいのかどうなのかわからないことがあるが、人に頼まれたりして、必要に迫られてする昆虫採集は、どう考えても楽しくない。近所の林の中を歩きながら、リクエストされたアリの一種を探していると、違う種類のアリばかりでてくる。メダケや枯れ枝を割っているとそのうち出てくるだろうと簡単に引き受けたが、罪も無いナワヨツボシオオアリやらウメマツオオアリの巣を壊すばかりで、目的の普通種はゼンゼン採れない。ハイイロヤハズカミキリの幼虫なども出てくる。あー、もうやめた!カミキリ幼虫は野鳥にプレゼントするのであまり心は痛まないが、アリはなんだかかわいそうな気がする(ヒイキか?)。気温が低くなる一方の今時分に、壊したアリのコロニーが新たに冬越しの場所を見つけるのは大変に違いない。間違えて、取り出したアリを観察用に持って帰る余裕もない。
アリ採りは飽きたので、写真撮りでもしようとぶらぶらしていると、歩道の真ん中から睨みつけてくるヤツがいた。誰かに踏まれたのか、ボロボロのオオスズメバチが前足を挙げて振っていた。右にいくと右を向く。左に通り過ぎようとすると左を向く。プルプル震えながらまだ戦えることをアピールしているようだ。止めを刺してやろうと思ったがやめて通り過ぎた。振り返るとまだこっちを向いて足を振っていた。