害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

丸い虫は難しい

2012-01-08 23:02:36 | 自然観察

丸っこい虫といえば、テントウムシとかミジンムシなどの科を連想する。
ゴミムシダマシとかハムシなどの多様性に富む大所帯の科でも、丸い種はちらほらとみられる。
背面からみて楕円や円形の体型は、外部環境に接する表面積が小さく、捕食者からの防御姿勢をとることも容易などの利点があるため、多くの分類群で出現する形質と思われる。
と聞いた風なことをのたまっているが、そんなことなら全てのムシが丸くなってもよさそうなのに、実際にはゼンゼンそんなことはない。むしろ珍しい種さえいると思う。

円形タイプの種は目立つ特徴が少なくて、どれもこれも一見しただけでは科の区別すらつきにくいので、分類するときはかなり厄介である。どれもこれもみんな同じように見えてくる。

昨年末に豊岡市の食品工場から回収してきた小型粘着版に、体長約1mmの小さなコウチュウが1個体だけ捕獲されていた。Eidoreus_sp01


カクホソカタムシの一種 Cerylonidae gen. sp.と思われる。(てる氏にコメントを頂き、調べ直してみるとテントウダマシ科のEidoreusの一種だった。こんな形のふ節でテンダマって無いわとマジで思う。日本からはツヤチビテントウダマシ E. japonicusという種が記載されているらしい)ふ節の数は、前脚から後脚にかけて4-4-4だった。
低倍率の観察だとキスイムシ科のようにもに見えるけれど、触角の付着点がキスイムシ科のように頭部前縁真ん中よりではなく、触角球桿が2節だ。キスイムシ科は3節が多数派であるが2節の種もわずかにみられる。
カクホソカタムシ科では1節の種が多数派であるが、2節の種もいる。
丸いムシと無縁な感じの科名であるが、貯穀から見つかる種のなかに、いくつか丸い体型の種が知られている。それらは、貯穀害虫の専門書でも取り扱いが小さいグループで、私は生きた個体にお目にかかったことがない。
今回みつかった種は、貯穀と関連があるのかどうかは不明で、野外から迷い込んできた種なのかも知れない。

コウチュウにまん丸な種が、それほど多くないのはいまだ進化のさなかであって、遠い未来の地球は丸い種ばかりになるかもしれない。
ちょっと正月太りで、自分の体型がなんだか丸くなったような気がしてヤバイと思っていたが、生き物が行き着く最終形態だとすると致し方無しである。Eidoreus_sp02

Eidoreus_sp03

Eidoreus_sp04





*テントウダマシ(Eidoreusを含む)の形態についての詳細な研究をダウンロードして読むことができた。なんつーか、テンダマってもんへの考え方が思いっきり変わった。
Tomaszewska, K.W., 2000. Morphology, phylogeny and classification of adult Endomychidae (Coleoptera: Cucujoidea). Annales Zoologici 50 (4): 449-558.
http://www.miiz.waw.pl/pliki/pracownicy/tomaszewska/TomaszewskaphylogenyofEndo2000.pdf