山地帯につくられた宗教の結界。宗教なんてのは科学同様に、もっともらしかったりワケが分からなかったりするのだが、結界がもたらす明瞭な効果として、自然が残っているということは誰しもが認めるだろう。
結界により形成されるのは浄刹という空間だそうで、「女人ならびに牛馬」とか「村民全部」を段階的に進入禁止にしてしまうというキマリ事が昔はあったらしい。今でも少し残っているところがあるけど。
結界をめぐって宗教は、人間の際限なく拡大しようとする経済活動と、何百年ものあいだ争ってきたらしい。餓鬼やら悪神だのから善男善女を守るものが結界だと、なんとなく思っていたのだが、宗教が本当に締め出したかったのは人の欲だったりするわけだ。
先日仕事をした京都市左京区の山中も結界の中だったので、自然の豊かさをたっぷり感じた。オオセンチコガネが沢山飛んでいたが、最近はこの虫を見ると反射的に自分のズボンとかにマダニ類が付着していないか点検してしまう。 そういえばこのあたりは、モモブトカミキリの一種とかホタルモドキの類とかで、タイプ標本だけしか採集されてないなんてのがいた気もする。
そのときに建物の中の畳の上から採集したカツオブシムシのペアを、本日検鏡してみた。やけに発育不良のヒメカツオブシムシやなと採集時は思っていたが、みたことのない種類だった。触角球棹3節で、後脚付節第1節より第2節のほうが顕著に長いことなどから、Attagenus sp. としておく。
ムシを知りたいというのも、ヒトの勝手な欲望なのかもしれない。虫屋の欲望の目から逃れることができる神秘の結界が、ココの密かなムシ達にはあるのだろうか?
丑寅のかどからおとなう虫屋に、このカツオブシムシ君は捕まってしまったということになるな。スマン。