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害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)

ブログ人のサービス停止に伴い、gooに過去記事を保管させてもらうことにした。

ゴミだらけな河口のハネカクシ

2013-03-29 00:06:18 | インポート

ハネカクシのことはサッパリ分からないけれども、分類のサワリ部分あたりを勉強中。
とりあえず、身近な場所をウロついているハネカクシを採集して名前を調べてみることにした。
ハネカクシからすれば、放っておいてくれってトコロだろうけど。

先日、相生湾に面した河口付近で昼休憩をとったときに、潮間帯のハネカクシにチャレンジしてみた。
イソユビダニなどを採集しているときには、ウジャウジャいたハネカクシを無視ってた場所だったが、いざ採集しようとすると姿を見せてくれないという、ありがちな展開におちいった。ゴミが多くてニオイもヒドい場所だったが、アオサがこびり付いた岩のまわりで、砂利を引っかき回したりして、2-3mmの黒いのやら黄色っぽいのやらを、なんとか数個体採集できた。

黒いのも黄色っぽいのも、顔つきでヒゲブトハネカクシ亜科と決めつけた。
このグループは幸いなことに、その筋では有名な「日本産ヒゲブトハネカクシ亜科データベース」という九州大学の山本周平さんの詳しい情報サイトがある。

そこで分類のとっかかりとなる様々な情報を頂いた。特に文献リストはありがたく、フリーでダウンロードできる論文のいくつかを読んで、おおまかな分類を試みた。

黒い種はふ節式が4-5-5で、体側が平行で細長いシルエットなのでAthetaの仲間かその近縁と見当をつけた。爪間体(甲虫でもそう呼ぶんだろうか?)がエラく長い。上唇前縁は透明な部分を除けばかすかにへこんでいるように見える。下唇前縁の真ん中あたりのY字型突起には、片側5個くらいの微小突起がかすかに見える。貯精嚢は端が渦巻いているカタチ。体表の微細なパターンは等径的に見える気がするって特徴などから、最終的にAdota sp.と考えた。
Athetini_gen_sp02
↑黒っぽい種の全体図。ハネカクシってムシは、かねてより写真の撮り方で印象が恐ろしく変わってしまうと思っていたが、自分で撮影した同じ個体でも、ナマっぽい状態の写真(図1)と乾燥状態(図2)の写真は、別種か?と思ってしまうくらい違って見える。
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Photo_4

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黄色っぽい種は、ふ節式が4-4-5。以前、淀川の干潟で大量にみた種の淡色タイプって感じ。交尾器はみていない。
Bryothinusa sp.と考えた。属の検索は北米産のを参考にしたので自信なし。
同僚からガラス台紙を1枚ちょろまかして頂いてマウントしてみた。
いたく気に入ったけど、ケント紙の台紙よりお高いので購入は悩む。

Photo_6

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ひとまず終了。こんな序の口もいいところなのに、すでに我が探求心は「明日のジョー」の最終回の主人公状態で、かなり燃え尽きているが、もう少しくすぶってみる。


われら塵にかえり

2012-09-08 23:59:00 | インポート

Kumazemi01

朝は少し雨が降っていたが、会社に着く頃には晴れていた。
ベランダで朝日を浴びながら、動かないクマゼミが転がっていた。

7月初旬にクマゼミの踏みつけられた新成虫をみて、夏の始まりを感じたが、ヤルべきことはやったご様子の亡きがらをみて、夏の終わりを感じた。

もう4ヶ月も経たないうちに除夜の鐘をきくことになるのか・・・。1年が早すぎる。

木材害虫飼育用コンテナの廃墟化したものをつついていると、またエグリゴミムシの成虫が出てきた。ウチの放置木材では、マヨイダニとササラダニ類とイトダニとエグリゴミムシとトビムシ類というメンツが最後まで生きていることが多い。
エグリゴミムシは、トビムシが多い材に5個体移してみた。産卵するかも知れない。などといっているが、絶対また忘れたままになりそうな予感。


知らないことが多い普通の害虫

2012-08-30 23:26:50 | インポート

コクヌストモドキが新築家屋で大量発生という話題は、ここのところあまり聞かなくなってきている。
10数年前は、ホントに怪現象と思ったものだった。

結局、いろいろと推理してみたり、現場の調査をしてみたりしてみたけれど、問題の核心部分は、合板工場や住宅メーカーの「非公開」な部分の奥にあるため追求できなかった。

不快害虫がどういう問題をもたらすのかということを、いくつかの現場で思い知らされた。
この「虫の不快さ」という件は、少し掘り下げてみたいテーマだけれど、今はまだ考えがまとまらない。

コクヌストモドキは木材を食べないとされていて、私も「木は食いまへん。」と今でも他人には説明している。
でも、木材をかじることがまったくないわけではない。食物とするかどうかは判断が難しいものの、広葉樹材の軟質な辺材はかじったりすることがある。コクヌストモドキを大量飼育している容器に、割り箸を短く切ったものや、爪楊枝を1ヶ月も置いておけばかなり表面がデコボコしてくることが分かる。
興味深いことに、一度、木材表面にカビ(アルテルナリアやトリコデルマなど)が生えてちょっと乾き気味になったような材だと、成虫がカビを材ごと活発に食べることが分かっている。
だが、誘引性や繁殖に寄与するかという点は不明なままだ。

普通種と思ってナメている種に限って、問題になってから、実のところ大して知っていることがないことに気づくというのはよくあるパターン。

ゴミムシダマシ類では、木製パレット(フォークリフトで使ったりするモノ)をかなりシッカリかじる大型種が問題になったことがある。個人的には、ド普通種弓脚君と呼んでいる種だが、最近、かなり目立つ被害が生じている例が他にも出てきて、シイタケの害虫くらいしか資料が無いためアセリ中。
Promethis_valgipes


いろいろある

2012-08-23 23:58:00 | インポート

浸水家屋の消毒とか、特定外来種(ラスカル)とか、不特定在来種(ネコノミの宿主)への対応とか。
同僚たちの消耗が激しい。
まったく儲けにならないが、困っている人から「ありがとう」とかいわれると、みんなツイ頑張ってしまう。

今月、西宮市の埋め立て地で、工場のライトトラップに捕獲された見慣れないケシキスイとかは、標本にしても誰からも感謝されないだろう。でも、ケシキスイを集めているような人が地球のどこかにいないとも限らないので、標本にしておこう。

セスジデオキスイの一種 Brachypeplus sp. と思う。

Brachypeplus_sp01
細長い体型のケシキスイは、かつて石垣島でクワガタムシ採集していた頃、パイナップルトラップに群がっているのを見かけた気がするが、採集したことは今までにないと思う。というかケシキスイを意図して持ち帰った記憶がない。分類がムズ過ぎるので。

一昨日から、息子が北海道のどこかにいるらしい。クラーク先生の像の前で記念写真を撮るというお約束はこなせただろうか。近頃の高校の修学旅行は贅沢だ。フイルムケースを押しつけようとしたが、オコトワリシマスな対応をされてしまったので、正直もう帰ってこなくてヨイ。


エンボス調な観察

2012-08-10 23:59:00 | インポート

Laelius_yamatonis_female

Laelius_yamatonis_male01

建物内の捕虫紙に捕獲された、小さなアリガタバチを観察してみた。
前伸腹節(ハネの付け根の後あたり)に、浮き彫りのような模様があった。その模様は重厚な趣きがあり、中世ヨーロッパの鍛冶屋さんとかが作りそうな感じ。
キアシアリガタバチLaelius yamatonis Terayama,2006と同定した。
雄の交尾器も標本にしてみた。

 

Laelius_yamatonis_male02
彫刻模様を観察するにあたり問題なのは、普通に落射光で観察すると、アリガタバチの平滑な体表からの反射光で模様を判別しにくいこと。
なので、真横から光を当てると凹凸がクッキリハッキリ見えて、楽勝に同定できるのではないかと考えた。
光を拡散させるために、小さな筒状の白い樹脂板をムシのまわりに置いた。真横からファイバー光をあてた。対物レンズに強い余計な光が入り込むことを避けるため、黒い紙にパンチ穴をあけて、チョキチョキと丸く切ったフタを樹脂板の筒にかぶせてみた。

Wakka29
コリメート法で撮影した4枚の写真を焦点合成して、さらにヒストグラムをズリズリしまくって、コントラストを上げたりとか、もうどうしたのか覚えていないくらいデジタル処理をイロイロ施した。

 すると化石?って感じの写真になった。
Laelius_yamatonis_male03_3

 

本種を含め、いろいろなアリガタバチに刺されたことがあるが、どれも皆とても痛がゆい。

 

独身の頃に住んでたアパートに、南の島から持ち帰った材をたくさん保管してたことがあって、ろくでもないムシばかりがでてきたものだけれど、最悪だと思ったのがクロアリガタバチに似た種が大量発生してきたときだった。めちゃくちゃ痒かった。
痒いだけではなく、アリガタバチ類の自然な分布に悪い影響を与えやしてないかと、今ではちょっとビクビクしている。好きな虫のコトしか考えてないと、他の種に犯罪的な影響をおよぼしている可能性もありそう。