新潟県長岡市寺泊は、かつての港町、北国街道の宿場町として栄えたところ。
この地に
民謡が何曲か残されているが、中でも唄の藤乃井月子さんと三味線の大矢千代栄さんがおられた。
なかでも《寺泊おけさ》のレコードをはじめて聴いたとき、すごく変わった三味線の伴奏だ…と思ったのがはじまり。「ツッチャ・ツッチャ…」と別に何かを叩いているようなサウンドで、「何だろう?」とナゾであったのだが、学生時代に寺泊の先輩を便りに、このご両名にお目にかかることができた。そして、その三味線をわずかばかりお習いした。
そのヒミツは、撥を持つ右手の親指を撥の外側にずらして、絃を弾いた瞬間にその親指で残響を消していくのだ。自分もやってみたが、どうしてもうまくいかない。どうしてこんな弾き方ができるのだ!という思いであった。千代栄師の指は、人より長いのかも?と思わせるほど、ナゾの多い奏法。
その後、何回か通って、少しは近づけたかな?などと勝手に思うものの、不十分なまま、昨年「お別れ」となってしまった。今日は、千代栄さんの1周忌であった。そして「寺泊おけさ中興の祖」という民謡顕彰碑が建つということで、寺泊に向かった。
しかし、今日はどうしても外せない会があったので、法要には間に合わなかったが、あとの「偲ぶ会」には何とかうかがうことができた。
着いたのが夜であったので、顕彰碑は翌日、墓参とともにうかがった。生福寺境内のお墓の横に建てられていた。
寺泊の花柳界を知る最後の方と、わずかながらお目にかかれたことに感謝しつつ、寺泊を後にした。