松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

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感激だけなら誰でもする 白洲正子

2019-09-01 | インポート

感激だけなら誰でもする。発心することも、さしてむつかしいことではない。が、その時の 気持ちを、一生保つというのは、決してやさしいことではありません。白洲正子著『明恵上人』(講談社学芸文庫)

 

 

明恵上人 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)
白洲 正子
講談社

 

さて、本年1月から8月までの「今月のことば」を集計すれば、短歌・和歌・俳句・詩が6つもあって、通常の文章は2つだけ。だから、どうしても9月のことばは長めの散文にしたかった。というわけで、白洲正子著『明恵上人』(講談社文芸文庫)からの引用です。冒頭で紹介した言葉の前には、次のような一節があります。 「明恵の強さは、若い頃の情熱を、老年に至るまで、そのまま持ちつづけたことでしょうか。持ちつづけるだけでなく、いっそう深めたといえましょう」  この一節は、今月の言葉とした「 感激だけなら誰でもする……」の拠り所となる説明であり、そして「感動だけなら」の一節は、「明恵の強さは……」の一節を総括した詩だというのがわかります、とわかりにくい事を書いてしまいましたが、白洲正子さんの人となりを、自著『ほんもの』(新潮文庫)から拝借してみます。  「東京・永田町生れ。薩摩隼人の海軍軍人、樺山資紀伯爵の孫娘。幼時より梅若宗家で能を習う。14歳で米国留学、1928(昭和3)年帰国。翌年、実業家の白洲次郎と結婚。'43年「お能』を処女出版。戦後、小林秀雄、青山二郎らを知り、大いに鍛えられて審美眼と文章をさらに修業。」  すげぇーお嬢さまなわけだけど、ご主人・白洲次郎といえば、昭和二十年代に、“吉田茂首相に請われてGHQとの折衝にあたるが、GHQ側の印象は「従順ならざる唯一の日本人」。高官にケンブリッジ仕込みの英語をほめられると、返す刀で「あなたの英語も、もう少し勉強なされば一流になれますよ」とやりこめた(旧白州邸武相莊HPより)”という痛快なエピソードが有名です。正子氏自身の逸話といえば、先に略歴を拝借した新潮文庫の『ほんもの』には、次のような出来事が書かれてします。

 大分前のことだが、小林秀雄さんに、「あんた、いつ鹿児島から出て来たの?」と真面目な顔で聞かれたことがある。私は先祖代々鹿児島人だが、むろんお国には住んだことはない、酔っているにしても、ずい分突拍子もない質問だと可笑しかったが、今にして思えば、これ程真をうがった言葉はない。外国の教育も、社交界のしきりたりも、ついに持って生れたものを変えはしなかった。その時々でどんなに見えようと、あたしは生来の野蕃人、神代以来ハダシで野山を駆けめぐった獣面人身の薩摩隼人なのであろう。  かえりなん、いざ。だが、何処へ。それは私にもわからないし、また知ろうとも思わない    

 確かに「気持ちを、一生保つというのは、決してやさしいことでは」ないのでしょうが、意識しなくても、一生保っている何かがあるから、こわいというかおもしろいというか!

 


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