むかしむかし 三千年
花さきにおう春八日
ひびきわたったひと声は
天にも地にも我ひとり
『花まつり行進曲』(赤尾白嶺作詞・成瀬鉄治作曲)明治41年より
4月8日はお釈迦さまの誕生日、降誕会(ごうたんえ)です。灌仏会(かんぶつえ)ともいいます。もっとも、身近な言葉でいえば、花まつりでしょうか。やはり4月は釈尊誕生に関したことばと思うのですが、よい言葉がみつからない。もちろん、不勉強だから適当な言葉が見つからないのですか、 後に釈尊となるゴータマ・シッダルタは「無憂樹の花の枝の枝に手をかける美しい母の右手の脇から生まれ、七歩あるいてー天上天下、天人の尊となり」(『普曜経』)なんていう後世の神格化された文章を紹介してもしょうがないし、だからといって禅僧がいう「その場所に居合わせたならば、ブッダを一棒に打破して狗にくわせる」(『雲門広録』)なんていうショッキングな一節を紹介しても誤解をうむ。
だからといって、「山寺の障子締めあり仏生会」( 高浜虚子)なんていうのも少し似合わない。
随分といろいろと探しました。そして、中村元・田辺和子共著『ブッダ物語』(岩波ジュニア新書)の冒頭にあったのが、今月の言葉にした「むかしむかし 三千年」の歌でした。これほど、かんたん明瞭に降誕会を教えてくれた詩歌に出会ったことはない。ただし、『ブツダ物語』にはこの4句があるだけで、出典もなにも明かではないのが残念です。ジュニア文庫という性格上、出典や根拠を明示する必要がないのかもしれないけれど。この本、1990年初刊だから、その当時は出典を調べるのは、ほとんど不可能だったけれど、今はネットで検索できるんですね。
この詩は、明治41年頃に作られた『花まつり行進曲』というらしい。冒頭の4句は1番で、続きはというと、
2.立派な国に 生まれいで 富も位も ありながら 一人お城を ぬけいでて 六年(むとせ)にあまる 御苦行
3.円い世界の まん中に 教えの門を うち開き かわける人に ふりまいた 甘露の水は 限りなし
4.何年たっても 変わらずに 咲いたままなる法(のり)の花 綺麗な一つを 胸にさし 我等もまけずに 励みましょう
作詞者と作曲家については、関心のある方は調べてみてください。面白い事実がでてくるかもしれません。というわけで、4月のことばは、知っている人は知っているけれど、マイナーな百年以上前の仏教賛歌からとりました。これってちょっと愉快な句です。