松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

ホームページ(shoganji.or.jp)では書ききれない「今月のことば」の背景です。一ヶ月にひとつの言葉を紹介します

春はあけぼの

2015-03-01 | インポート

春はあけぼの、やうやうしろくなり行く、山ぎはすこしあかりて、むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる 清少納言『枕草子

 3月のことばはご存じの『枕草子』冒頭です。
毎月、ことばを選ぶ条件の一つに、「あまり知られていない」というのが大きな要素になります。
「どうだ、こんなの知らないだろう」と、自慢するわけです。それから言うと、今月は「エイ!」という感じで掲示版に墨書しました。何を今さら、という感じです。
何を今さらではあるけれど、この時期にこの言葉はあたりまえすぎて、逆に意表をつくのではないか。意表とは予想の向こう側にある驚きのことです。
それとは反対に、予想どおりはつまらないなぁー、と感じた出来事を数日前に経験しました。
境内の梅の花が一輪咲いたのは、2月22日の日曜日でした。日曜日は朝6時から坐禅会をしています。2月20日頃の朝6時はまだ暗かった。その暗い中、梅の木の前を通った時は気がつかなかったけれど、坐禅をすませて明るくなって梅の前を通りました。前日の温かさに誘われて一つ二つ咲いてます。「わっ、咲いた」と感激すればよいのですが、「あー、咲いたか」という感じで、気分の高まりなどとはほど遠い無粋な私です。
なぜかというと、その数日前から、つぼみがだんだんふくらんでくるのを丹念に観ていたのです。観ていたから、開花は予想できた。予想できていると慣れてしまって、つまらないものです。
今年の開花は例年通りの時期だといいますが、2年前は3月1日に開きました。2年前のブログにそう書いてある。そして、あの時の開花には心が動きました。大きな行事があって、1泊2日で寺を留守にして、帰ってきた翌朝に気がついたからです。そして、その行事のために、数日前からひどく緊張した時間を過ごしていた。その緊張から放たれた朝にみた花一輪だったから、今でも記憶に残っています。
結局のところ、言葉といい花といい、そのもの自体に心動くのではなくて、おのれの心の持ちようで動くのではないでしょうか。
そんなわけで、これまたご存じ橋本治桃尻語訳『枕草子』(河出書房新社刊)冒頭をご紹介する今月の言葉です。

春って曙よ!だんだん白くなって山の上の空が少し明るくなって、紫っぽい雲が細くたなびいてんの!夏は夜よね。月の頃はモチロン!闇夜もねェ……。

と引用してみて、やっぱし橋本治ってスゴイ!、と思うのです。

 

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