松岩寺伝道掲示板から 今月のことば(blog版)

ホームページ(shoganji.or.jp)では書ききれない「今月のことば」の背景です。一ヶ月にひとつの言葉を紹介します

心の直きこと箭の如く  遂翁元盧

2013-03-03 | インポート

2013thumb270xauto376_270x308心の直きこと箭の如く 善を積み仁をほどこす 奢らず足るを知る 是れを名づけて福神と名づく 遂翁元盧

標題の言葉は平成25年1月元旦に掲示した言葉です。元旦の言葉を3月3日の桃の節句にコメントしているのは、某師から「たまにはブログを更新しなさい」と叱られたので、過去にさかのぼってまとめて書いているわけ。
平成25年元旦の言葉は、遂翁元盧(すいおう・げんろ)禅師の画賛です。どこから引用したかというと、平成25年の禅文化カレンダーが遂翁特集。その表紙が「恵比寿、大黒に酒を酌む図」で、「心の直きこと箭の如く 善を積み仁を施す奢らず足るを知る 是れを福神と名づく」と賛が添えられています。恵比寿さんと大黒さんが酒を酌み交わしている楽しそうな画で、二人の前には1本の真っ直ぐな箭が置いてあるります。
禅師の略歴禅風画風の解説は辞典と評論にお任せするとして、このほほえましい画をみていると、大黒さんと恵比寿さんの酒盛りは、足るを知って適当な酔い具合で終わるとは思えない。ちょっと一杯のつもりが、大黒さんも恵比寿さかもお酒が強そうだから、二日酔いにはならないだろうけれど、果てしない酒盛りが続きそうな絵柄です。
お酒に関する禅語は幾つかありますが、私がいちばん好きなのは「泉州白家酒三盞 喫了猶言未沾唇(せんしゅうはっかさけさんさん きっしおわってなおいういまだくちをうるおさずと)」です。
「大吟醸の銘酒を大茶碗に三杯ものみほしたけれど、呑んだ覚えもない」といった意味の禅語です。禅語の深意は機会を改めて書きたいけれど、3年前に亡くなった大酒飲みの坊さんの葬式で、某老師が引導の送別の一句にこの句を使ったのが忘れられない。私の葬儀も、この一句で送ってもらえたらと思うのですが。
遂翁の略歴については、一昨年(2011年)に花園大学歴史博物館で開かれた、遂翁の禅画墨跡展のパンフレットに次のようにあります。

ユーモア溢れる禅画により、世界的に注目を集めている白隠慧鶴(はくいん・えかく/1685~1768)。近年、人々を魅了する禅画は白隠画だけにとどまらず、白隠の弟子たちによって受け継がれた禅画にも目が向けられています。
白隠下において、その筆頭にあったのが東嶺圓慈(とうれい・えんじ/1721~92)と遂翁元盧(すいおう・げんろ/1717~89)。東嶺と遂翁の禅画には、「微細東嶺、大器遂翁」と評される禅風とは相反する個性が見られます。東嶺は大胆な筆遣いによる豪放さが特徴であるのに対し、遂翁は白隠画を謹直に学ぼうとする姿勢があらわれています。


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法句経63

2013-03-03 | インポート

『ブッダ 真理のことば』 2012年3月 (NHK100分de名著) 『ブッダ 真理のことば』 2012年3月 (NHK100分de名著)
価格:¥ 550(税込)
発売日:2012-02-25

愚かな者が自分が愚かであると自覚するならば、彼はそのことによって賢者となる  法句経63

平成25年2月のことばは読んだだけで、なんとなくわかる言葉だと思います。なんとなくわかるのと理解して体得するのは別ですが、なんとなくで良いのではないでしょうか。原典は法句経です。法句経は佐々木閑教授がNHKテレビテキスト『真理のことば』で次ぎのように定義しています。

仏教の開祖であるブッダの言葉を短い詩の形にして四百二十三句集めたのが『ダンマパダ』です。漢訳は『法句経』と言い、日本では『真理のことば』という題名でも翻訳されています。数ある仏教の経典の中でも、とくに古い部類に属するものです。(途中略)「釈迦の仏教」は、念仏を称えれば救われるといったような、誰かに救いを求める宗教ではありません。自分の道は自分で開けという厳しい教えです。しかし、むしろそういう厳しい仏教のほうが、現代の人びとには受け入れやすいのかもしれません。アメリカでは、この「釈迦の仏教」にもとついて、普段の生活の中に羅を取り入れ、自律的な生き方を目指す「ナイトスタンド.ブディスト」と呼ばれる信者が急増していますし、私が受け持っている社会人学生の方々も百分の力で自分の人生をなんとかしようというブッダの考えに共感している人が多いようです。いわゆる「神頼み」でないブッダの教えは、拝んで助けてもらう救済の宗教よりも、合理的な現代人の志向に合っているということでしょう。

今は「教育テレビ」といわずにEテレというらしいけれど、Eテレ「100分de名著」シリーズのテキストから引用しました。最初の放送は2011年9月で、12年3月にも再放送された。続いて、今年2013年1月の「100分de名著」シリーズで佐々木教授が取り上げたのは、「般若心経」だった。このテキストがひとときベストセラーの一画を占めていたので、買って読んでみた。最初の数ページを見ただけで、売れている理由がわかります。切り口が、これまでの般若心経本と違うのです。なんで、これまでこの視点から心経を読んだものがなかったのか、と新鮮さに驚く本です。どういう視点かというと……、テキストかを買って読んでください。斬新さに驚くけれど、もし私が般若心経の執筆を頼めまれたら(誰も頼まないけれど)、心経の秘密として、不とか無という否定語の多さから解き明かそうとは思っていた。と書けば、「100分de名著」版般若心経の斬新さのヒントになるでしょうか。
佐々木閑教授の論文でない一般書は、超難しい仏教を平易に説いてくれるので、なんとなくわかる気になるところが凄い、と思うのです。


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