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ねがうこと、ゆだねること

宮崎駿監督「風立ちぬ」

2013-08-16 | 映画
話題の「風立ちぬ」を観る。新しいことが満載だ。実在の
人物、歴史を描くこと、30年という長い時間を描くこと、
効果音を人の声で表現すること、主役の声が声優素人であ
ること70歳を過ぎても挑戦する姿勢が素晴らしい。

ファンタジーを簡単に作れない時代にきているという認識
があって、ジブリの方向性についての模索していたから生
まれた作品だそうだ。



1、宮崎監督の自分の投影

戦前の1920年代「まことに生きるのにつらい時代」に飛行
機を作りたいという夢をどうやって実現していったか、とい
う本作のテーマは、まさに戦後の不自由な時代に生まれ育っ
た宮崎監督が、どうやって好きなアニメを実現していったか
という生き様にそっくりだ。



夢の実現にもがいている人達、とくに若い世代に共感がひろ
がるといいなと思う。子ども達もけっこう観に来てたけど、
楽しめのかな?女性スタッフが「子どもはわからなくてもわ
からないものに出会う必要がる」と言ったので、企画が進ん
だそうだが。


2、関東大震災はあっても戦闘シーンはないこと



関東大震災のシーンが冒頭にある。圧倒的。地震が生命体の様に
動きと唸りを発し、甚大な被害がうまれることがアニメで描かれ
る。。なのに主人公が設計していく戦闘機の実戦シーン、つまり
第二次大戦のシーンはない。零戦の残骸が積み上がる墓場のよう
なシーンがエンディングにあるだけだ。

東日本大震災の影響はないことはないだろうが、関東大震災のシ
ーンの絵コンテは、震災の前日に完成していたそうだ。

戦闘シーンという宮崎監督の「得意技を封じられるとき、作家は、
往々にして傑作をモノにする」と鈴木敏夫プロデューサーはカタ
ログに書いてるが、描きたい「得意技」を封じて、ヒロインの創
出にとりかかったのではと想像する。

3、ヒロインが寄り添うこと

主人公が恋人であり妻になる女性=ヒロインとの関係は堀辰雄の
「風立ちぬ」に向かう。当時を描いた小説だし、結核に冒されて
いる婚約者の死の影におびえながらも、2人で残された時間を支
え合いながら共に生きる物語に強く惹かれたからだろう。



戦闘機を設計したかったわけではない、美しい飛行機が作りたか
った少年の夢が、現実には「美しさと呪わしさ」にぶつかる。あ
る意味むなしい仕事ぶりを愛する女性に認めてもらう必要性とい
う、男の弱さが、宮崎監督いや日本の男性に根付いていることを
表現しているのかも。


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