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スティーブ・マックイーン監督『それでも夜は明ける』

2014-06-03 | 映画
ルイ・ヴィトン表参道ギャラリーで、スティーヴ・マックイーン監督の
映像=短編映画『Ashes』を初めて見たことはここに書いたけど、公開
中の映画『それでも夜は明ける』を渋谷CINEMA RISEで観る。

アカデミー賞作品賞、助演女優賞(ルピタ・ニョンゴ)、脚色賞やゴー
ルデン・グローブ作品賞を受賞したほか、112の映画賞に輝やく。奴
隷制度の物語を映画という形で成立させた監督はほんと凄い。



アメリカ北部の自由黒人でバイオリンの演奏家が、ある日拉致され、
南部の農園で1841年から12年間もの奴隷生活を強要された自叙伝
の映画化。

南北戦争が勃発する8年前の1853年に出版されベストセラーとなっ
たそうだ。生まれながらの自由黒人だった彼が奴隷にどうして従属
させられたか驚愕の映像だ。



12年たてば足ヌケできる筈という結末を知ってるボクには耐えられ
るけど、そんな未来も保証もない主人公は何度も失敗して落胆する
けど諦めない。黒人同士の会話も痛々しい。ムチなどの拷問は日常
茶飯事、諦める黒人、所有者にとりいる黒人、殺される黒人・・

1808年に海外からの黒人輸入がまず禁止されたそうだ。それが喜ば
しいと言ってられないのは、奴隷の供給がストップし価格が高騰し、
主人公のような自由黒人を売り飛ばすという犯罪が増加したから。



「犯罪」という認識は立場によって変わる。主人公を「購入」した
白人農園主は、主人公を失う時に「俺のモノだ、借金して購入した
ものを渡さない」といった科白を吐き、裁判を起こそうとして断念
したらしい。

「俳優ブラッド・ピットが製作に参加してくれたから映画化できた」
とマックイーン監督は感謝を込めて言う。ブラッド・ピッドは「あと
1本しか映画を作れないとしたら、作るべきはこの作品」と宣言して、
プロデューサーになり、小さいけど重要な役で出演。



2月26日には国連で上映会があったそうだ。3月25日の「奴隷及び大
西洋間奴隷貿易犠牲者追悼国際デー」
に向けたもの。上映会には
監督も呼ばれたそうだが、潘基文国連事務総長スピーチが印象的;

過去の記憶を超えて、今日、私たちが取り組むべき差し迫った
課題があります。世界中で、主に若い女性の人身売買が行われ
ています。数百万の男女が搾取されています。負債の呪縛、性
的奴隷化などを強要されています。

映画の話は過去の物語ではない。奴隷、人身売買、拉致、誘拐・・
人権を損なう犯罪が社会に染込んでいる。

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