またの名は子規と絵解きし花の玉
最初に買った、いや、買ってもらったギターはご多分にもれず
クラシック・ギターだった。
角の質屋のショーウィンドウの奥の方に飾ってあった。
3500円という値段は今にして思えば、それなりに高価だったのだろう。
勉強をするだの、なんだのという理由をならべ手に入れたギター。
茶色から黄土色に変化する表板を、磨いては眺め、
眺めては裏返し、また裏板を磨いた。
ぼろろろろ~んと弦を弾いてみるのだが、それはすぐに飽きてしまう。
調弦、ポジション、弾き方、何もわからない者にとって
憧れのロックをやるギターは、目の前にあるコレではなかった。
しかたなくギター通信教育のレコードを買った。
ターンテーブルに載せた17cmのレコードを廻し、ギターの音を合わせる。
しかし、糸巻きをいくら巻いても、音はレコードの音に届かない。
もうこれ以上は廻らないというところまできて、ようやく音が近づいた。
その瞬間にバチっという嫌な音がして、瞬間目の前を白いモノが過ぎた。
糸巻きは空回り。巻き過ぎの弦が千切れて宙を舞った。
風船を割った子がしばらく膨らますのをためらうように
その後ひと月近く、ギターは部屋の隅に放っておかれた。
後ろ向きに立てかけられたそれは、淋しそうに丸い背中を見せていた。
後になってわかったことだが、そのレコードは33回転で廻すべきものだった。
レコードは45回転で廻すもの。
当時シングル盤しか買えない者にとって、やはりレコードはそういうものだった。
厳つい使い