GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「鳩山由紀夫考」

2009年09月03日 | Weblog
■鳩山由紀夫氏の日本構想 http://www.hatoyama.gr.jp/masscomm/090810.html

『…「友愛」が導くもう一つの国家目標は「東アジア共同体」の創造であろう。もちろん、日米安保体制は、今後も日本外交の基軸でありつづけるし、それは紛れもなく重要な日本外交の柱である。同時にわれわれは、アジアに位置する国家としてのアイデンティティを忘れてはならないだろう。経済成長の活力に溢れ、ますます緊密に結びつきつつある東アジア地域を、わが国が生きていく基本的な生活空間と捉えて、この地域に安定した経済協力と安全保障の枠組みを創る努力を続けなくてはならない。
 今回のアメリカの金融危機は、多くの人に、アメリカ一極時代の終焉を予感させ、またドル基軸通貨体制の永続性への懸念を抱かせずにはおかなかった。私も、イラク戦争の失敗と金融危機によってアメリカ主導のグローバリズムの時代は終焉し、世界はアメリカ一極支配の時代から多極化の時代に向かうだろうと感じている。しかし、今のところアメリカに代わる覇権国家は見当たらないし、ドルに代わる基軸通貨も見当たらない。一極時代から多極時代に移るとしても、そのイメージは曖昧であり、新しい世界の政治と経済の姿がはっきり見えないことがわれわれを不安にしている。それがいま私たちが直面している危機の本質ではないか。
 アメリカは今後影響力を低下させていくが、今後二、三〇年は、その軍事的経済的な実力は世界の第一人者のままだろう。また圧倒的な人口規模を有する中国が、軍事力を拡大しつつ、経済超大国化していくことも不可避の趨勢だ。日本が経済規模で中国に凌駕される日はそう遠くはない。
覇権国家でありつづけようと奮闘するアメリカと、覇権国家たらんと企図する中国の狭間で、日本は、いかにして政治的経済的自立を維持し、国益を守っていくのか。これからの日本の置かれた国際環境は容易ではない。
 これは、日本のみならず、アジアの中小規模国家が同様に思い悩んでいるところでもある。この地域の安定のためにアメリカの軍事力を有効に機能させたいが、その政治的経済的放恣はなるべく抑制したい、身近な中国の軍事的脅威を減少させながら、その巨大化する経済活動の秩序化を図りたい。これは、この地域の諸国家のほとんど本能的要請であろう。それは地域的統合を加速させる大きな要因でもある。』

このような論文をCIAの分析官はどのように分析・洞察するだろうか?

 CIAの主な仕事は各国の動向を分析することにあります。シドニー・ポラック監督・ロバート・レッドフォード主演の映画「コンドル」やトム・クランシー原作『恐怖の総和』を映画化した映画「トータル・フィアーズ」を見ていただければよく分かります。
「トータル・フィアーズ」では一つの核が武器商人の手に渡ります。その核が米国に持ち込まれ、米国大統領が入場したスーパーボール会場で爆発します。CIA分析官の主人公ジャック・ライアンはその核が米国製であることを被爆地まで行って突き止めます。そしてロシア大統領が発射した核ではないことも突き止めます。米国政府はロシアへの報復を考えますが、J・ライアンはCIA分析官としてロシア大統領を以前から分析していたので「米国を攻撃するような人物ではない」と報告しますが、米国政府高官はそれを信じようとはしません。自国で発射した核でないこと知っているロシア側でも米国の報復攻撃を恐れ、先制攻撃をしなければロシアは滅ぶと主張する軍幹部と政府高官との衝突が沸騰していきます。超大国2国の「恐怖の総和」が物語の主題です。

 話を戻しますが、日本の首相となる鳩山氏の論文は、首相になるような人ではなく、大学教授が発表するような内容です。鳩山氏は、東京大学工学部を卒業しスタンフォード大学博士課程を修了。専攻は経営工学。東京工業大学助手を経て、専修大学経営学部助教授から政治家に転身しました。日本の政治家ではみたことのない経歴です。しかも祖父は自民党を創設した鳩山一郎氏という超サラブレットなのです。1960年の東大安保闘争の5年後に東大入学。1986年、自民党の公認を得て田中派(田中派の特色:田中が首相在任中に日中国交正常化を成し遂げたこともあり、台湾とは距離を置く親中派が多い)から政界進出。こうして自民党本流の保守左派に身を置くことになったと思われます。

 鳩山由紀夫氏は、鳩山家が牧場を所有し、鳩山神社のある祖父の代からの地盤、北海道から第38回衆議院議員総選挙に出馬、初当選しました。地方区分の選挙区自体は祖父と重複していないため、祖父の地盤を世襲していません。「言語明瞭・意味不明」的な言動が日本の大物政治家の典型ですが、工学部出身の彼はそのような曖昧な表現ができない性格なのでしょう。鳩山氏について調べていると、「私利私欲」を持たず、真摯に日本の将来を憂いている一学者のように思えます。また、明治維新のスタートを作った坂本龍馬を思い出します。龍馬もまた日本の将来を私利私欲なく真摯に考えた人でした。天真爛漫と思えるような純粋さ、堅固な信念と新たな発想は「薩長連合」「大政奉還」を編み出しました。龍馬は西郷を味方(?)につけパワーを手にしました。西郷に当たるのが豪腕小沢一郎氏に思えます。田中角栄派閥として政治家となったが、金にまつわる泥だらけの中では息ができなくなり、岸・福田の流れをくむ理念の錦を掲げるクリーンなスタンス(小泉・安倍流)を信条とする政治家と云えるかもしれません。同じくもっと深く田中派で学んだ小沢氏は、今後の政財界の防波堤とブルドーザー的役割を担うものと思われます。菅直人氏は両氏の中間に身を置き、鳩山氏よりの立場を取るのではないでしょうか。私がCIA分析官ならこのような分析をするでしょう。

 米国大統領のオバマ氏は、4,000万人を超える(人口比で6人に1人)の医療保険未加入者がいると言われている「医療保険制度」で大きな壁にぶち当たっています。「米国を社会主義化するのか!」という大きなデモが始まっています。「欲しいなら勝ち取れというフロンティア精神が今のアメリカを作ったのだ!」、「必死に働かない人を保護するような法案を作って血税である税金に投入するなどもっての外だ!」、という人たちが多数米国にはいるのです。(驚きです)弱者の救済は、政府の大きな課題であり、宗教の要でもありますが、一部の米国市民には受け入れられない問題なのです。

<予算の配分こそ政治の命題>と高村薫氏が述べましたが、鳩山由紀夫次期総理大臣も就任直後からこの命題で心を痛めることになります。民主党の試算では、4年間で16.8兆円の財源を節約できることになっています。仮に捻出できなかった場合、鳩山由紀夫氏は、政治的な責任を取るとも明言しています。「子ども手当(半額実施の場合)」で2.7兆円、「農業の個別所得補償」約1兆円、「高速道路の無償化」で1.3兆円。そして「暫定税率廃止」で2.5兆円。企業人の一員として気になる地球温暖化対策(90年を基準として20年には25%削減、50年よりもできるだけ早い時期の60%削減という目標値を掲げている。)も、大企業からの反発は避けられません。オバマ政権と同じく鳩山新内閣は発足直後から様々な人々、様々な企業、様々な団体からバッシングを受けるに違いありません。その中で最も恐ろしいのはアメリカからのバッシングであることは言うまでもありません。