GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

<2010有明テニスの森 ナダル初来日!>

2010年10月11日 | Weblog
10/6 神戸空港を7:25発のスカイマークで羽田へ(8:40着)。
予約していたトヨタレンタカーでヴィッツを借りていざ、有明テニスの森へ。

日本のテニスの聖地・有明コロシアム。
出張で何度も来たビックサイトのすぐ近くにあることを初めて知る。
ドロー表を見て今日の6日にはナダルを見られないことを知り、連れ添いと顔を見合わせる。
全米で初の優勝を飾り、生涯グランドスラムを獲得したナダル。
しかも、日本初来日。その彼を見たいと衝動買いしたチケット。
こんな機会も衝動買いも二度とない。
私はコロシアム入口にあるチケット売り場の前でこう云った。

「明日のチケットを買おう!」連れ添いのうれしそうな顔。
「ホント!?」

二人の気持ちは一緒だったようだ。
「和して同ぜず」を座右の銘にしている私をテニスに填めたのは間違いなく連れ添いだ。
WOWOWの加入もこのテニス中継を見たさに彼女が決めたこと。
今回の旅行も多少彼女は責任を感じていたようだが、私もナダルを見たかったのだ。
ナダルにはそれだけの魅力がある。
小学校の頃、梅田の阪急百貨店に007「ゴールド・フィンガー」で使用した
名車アストン・マーチンが飾られたことがあり、一人で見に行ったことがあった。
その時の幼い自分の押さえられない衝動を思い出した。
まだこんな想いが残っていた自分に驚き、
そしてその衝動を突き動かしたナダルの魅力を改めて感じた。

Sチケット(有明コロシアムでの当日試合を何度も再入場可能・このチケットがあれば他のコートのすべての試合を観戦できる)を購入。とりあえずホッとしてまずは腹ごしらえとなった。

 コロシアム(いわゆるメインコート)でロディックの試合を見たり、第1コート第2コート、第3、第4コートで日本人選手の試合を移動しながら見たりするのもかなり疲れる。この日の昼は青天でとても暑かったが、夜には寒くなった。テニス観戦もスポーツだと思い知る。錦織選手が昨日一回戦で負けたためにダブルス出場が決まり、ただの練習にも群がるファンの多さに驚く。錦織の人気を改めて感じた。こんな選手が沢山でてくれば女子プロゴルフのように底辺が広がってくるのだが…。錦織圭にも遼くんのような実績がついてくればテニスはもっとメジャーになるはずだ。錦織選手が出場するダブルスの試合はなんと深夜にまで伸びるが、私たちは睡眠不足と体力の限界を超えていた。とにかく、明日7日の最終試合、ナダルの試合を見ることができると安心して、有明を後にする。

 <コバラヘッタ>というイタリアンの店に入り、パスタメニューを選ぶ。ウエイターはインドかインドネシア系のイケ面だった。大阪の難波では中国人だった。これからもどんどん海外からの出稼ぎ者がサービス業にも進出してくるに違いない。3Kと呼ばれる仕事から日本人はますます遠ざかる流れにある。私たちはいったいどんな職を目指そうとしているのか…。

10月7日(木)
 目覚めはすこぶる快調だった。目が覚めた瞬間、「ここはどこ?」朝の光が届かぬ妙な部屋がどこか分かるまでに数秒の時間を要した。急いで身支度をして有明に向かった。約10kmの行程だったが9時台の都内はやはりよく込んでいた。バスの路線規制もきちんとされており、お回りさんの動きも軽快に見えた。有明近くのローソンで食糧を買い込み、新聞も2紙買い込んだ。日本人のノーベル賞受賞が一面だった。

 ナダルの試合は18時頃と思われ、私たちは有明テニスの森の一角にある“ビーチテニス”会場横にあるテーブルに腰をかけた。ラケット担いだ親子連れや若いカップル、ごくたまに私たちのようなカップル、そしてとても健康そうで細身のスポーツ実践者達の姿を多く見受けた。時間はとてもゆっくりと流れていた。こんな時間をかつて一度も持ったことはなかった。名所旧跡が好きな私たちはスポーツ観戦と呼ばれるものは野球以外体験はなかった。そして2日間に渡って18時間も同じ場所にいるなど前代未聞と云える。そんなことを考えていると何故テニスなるスポーツにこれだけの時間と金をつぎ込むくらいにのめり込めたのか? 不思議に思えてきた。

 そもそもテニスに惹かれたのは結婚してからの事。彼女がクラブで軟式テニスをやっていたことがきっかけだ。私の経験と言えば高校時代授業で軟式テニスを少し体験しただけに過ぎない。結婚して初めてボルグ、マッケンロー、レンドル、ベッカー、エドベリ、そしてアガシ、サンプラスを知った。エバートとナブラチロワの名勝負、頭脳的プレーのヒンギス、うなるセレシュ、女王グラフなどどんどん名前が挙がってくる。

 テニスに惹かれた象徴的プレーがネットにかかって相手コートにボール落ちると、「ゴメン!」と云って手を上げてこんな点の取り方をして自らを恥じるところだ。「加点して相手に謝る」スポーツを私は初めて知った。そこには騎士道的な精神「勝者は驕らない」・「勇気ある敗者を称える」ものを強く感じる。観客も競技場によっても多少異なるが、弱者の頑張りを褒め称えるように拍手する。圧倒的に強者が弱者を攻めると観客は試合が早く終わるの惜しむかのように弱者への応援に移行する。こんなことは野球やサッカーにはない。ここに強く惹かれたことに初めて気づいた。

 私はかつての大阪(難波)球場や甲子園でのように応援しているチームの投手が打ち込まれ、交代させられる場面で「死んでしまえ」「引っ込め!」という野次を何度も聞いてきた。負け続けると監督への野次は、幼い私の心を悲しませた。「彼らは本当にファンではない」幼な心に思ったものだった。

 テニス中継を何度も見てきた。お目当ての選手を応援するために会場にファンが集まる。しかし、コートを囲む観客席に入り一旦試合が始まると、どの選手にも惜しみない拍手が送られれる。野球やサッカーのように一塁側、(ホーム)、三塁側(アウェー)とファンは一応別れるが、テニスにはそうした客席の区別はない。素晴らしいエースサーブ、奇跡的なショット、ロングラリーには会場が割れんばかりの拍手が鳴り響く。それはお目当ての選手への拍手でもあるが、テニスというスポーそのものを愛する人たちの温かい拍手に聞こえてならない。

 するどいパッシングショットを放ったつもりがネットにかかり、相手側にポトリとボールが落ちても、決してガッツポーズなどしない。反対に(悪いな!こんな点の取り方をして)と云うように手を恥ずかしそうに手を上げる。ここにテニスというスポーツの真髄を私は感じる。

 悪童と呼ばれたマッケンローのように審判の判定に文句をつけて何度も罰金を取られた選手もいたが、殆どの選手は紳士淑女として誇りを持った言動が数多く見られた。そんな選手達がグランドスラム大会で優勝して、コートからコーチや家族が座るファミリーボックスへ駈け上って行って彼らと抱き合うシーンは何度見ても目頭が熱くなった。そして優勝コメントは必ず対戦相手を言葉だけでなく心から褒め称える。

「今日は私に少しだけ運があっただけです。彼が(彼女が)、この優勝カップを手にする実力を十分持っています。そんな彼に勝てたことを本当に心から誇りに思います」
そして、必ずコーチ陣への感謝の言葉と家族への温かい感謝の言葉で締めくくられる。

 有明コロシアムで声援を送っているうちに、私はそんな彼らの誇りに満ちたプレーに人間的魅力を感じてテニスファンになったことを初めて知ったのだ。プロ野球の試合を見ていて相手のエラーに喜んで拍手する応援が嫌いなワケがようやく分かったように思う。1984年、オリンピック柔道の決勝戦で、エジプトのモハメド・ラシュワンが山下の怪我した右足を狙わず銀メダルになってしまったが、そのフェアプレーの精神を称えられ世界の柔道界で認められたことを思い出す。

<フェアプレー>こそ私の求める本質のような気がする。
たとえ賞金がかかった試合であっても、誇り高きプレーヤーでいて欲しい、誇りあるファンでいたい、そして素晴らしいプレーに声援を送りたい。

 横道にそれ過ぎたが、ナダルは全米テニスで初めて信じられない高速サービスを身につけた。今夜の相手ドミトリー・トゥルスノフ(ロシア)は、そんなナダルのサービスを越える227km/時を見せつけた。しかし、ナダルの驚異的なレシーブ力、そして流れを変える強烈サーブと奇跡的なアングルショットで6-4,6-1で後半はあっけなく終わってしまった。それでもあの動き、あのショット、あのサーブを生で脳裏に焼き付けることができた。


(10/9 準決勝のナダル戦を見た)

 相手は一回戦で錦織選手を破ったビクトル・トロイツキ(セルビア)。
 7-6、4-6、7-6で勝つには勝ったが、サービス、ショット共にナダルを圧倒していた。
 第三セット、ようやくナダルはブレイクしたにも関わらず、
 次のゲームをブレイクバックバックされる。
 そしてもう一度必死でブレイクし、ナダルのサービング・フォー・ザ・マッチを
 またもブレイクされタイブレイクに突入した。
 こんなに攻められ続けるナダルを見たことがなかった。
 負けると80%思えた。
 その要因を強いていえばトロイツキの畳み込むように強打してくるサーブに
 圧倒されたように思えてならない。
 そして、そのサーブに匹敵するサーブを打とうとしてファーストサービスが入らなくなり、
 自滅寸前に追いやられた、というのが私の印象だった。

(10/10 決勝戦)
 ナダルは、決勝で第5シードのガエル・モンフィスを6―1、7―5で下し初優勝した。
 昨夜と比べるとあっけないくらいの勝負だった。
 ナダルはあっさり第1セットを奪うと、
 第2セットは5―5から相手のサービスゲームをブレークして一気に押し切った。

 ナダルを心底苦しめた準決勝戦のトロイツキ(セルビア)を私は忘れない。
 きっとトップ10に入ってくるに違いない。