いよいよ最終巻。1917~1979。巻第二十は、「釈教歌」(しゃっきょうのうた)となっている。釈迦の教え、仏教の経典由来、あるいはまた、憑依(ひょうい。仏が乗り移る)による歌、などなどである。巻頭三首には、作者名が空白になっている。この作品も、そのままで現代に通用する。
ひらかなy160:よのなかの なやみなげきの もろもろは
あさがおにのる ただのつゆだよ
ひらかなs1918:なにかおもふ なにとかなげく よのなかは
ただあさがほの はなのうへのつゆ
【略注】○朝顔の花の上の露=「朝顔」「露」ともに、ほんのひとときの、果敢ない
命。二つ重ねて、人の世の果敢なさを強調した。
○藤原清輔=悠 154(02月07日条)既出。『新古今集』には作者名がないが、
この歌は清輔著『袋草紙』所収なので、ここでは詠者とした。歌あとがきに、
「清水の観音の御歌となんいひ伝へる」とある。清水寺(京都市)の観音が
詠んだ歌、というのだ。