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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

米国の賃金の男女格差不況で縮小 Gender Pay Gap Smallest

2010-09-19 | 米国・EU動向
2010年9月19日(日)

米国における男女間の賃金格差が、記録的な水準まで縮小していると、US Today 紙が伝えている。主な理由は、女性がニュー・エコノミーの恩恵を受けていることに対して、男性が不況の影響をもろに強く受けているからだと説明している。

2010年の第2四半期における女性の週給の中間値は、男性のそれに比して82.8%となったが、10年前の同期には、その値は76.1%であったとの労働統計局が発表である。

この男女格差の縮小傾向について、USA Todayは、労働市場では大きな地殻変動が起こっているとして、次のような分析を試みている。

「格差が縮小しているのは結構なことだが、理由を考えると手放しで喜べない。従来から、男の職場とされてきた製造業や建設業での男性の失業の増加率が高いことが目立つ。 それとは対照的に女性の進出が目覚ましい官庁や医療関係の職場が安定していることが女性の平均賃金を押し上げているからである。」

女性はすでに労働人口の49.7%を占めるに至っているが、いろいろの角度から見ても、女性の進出度合いは男性のそれを上回っている。

人種: 黒人女性の賃金上昇はこの10年で8.8%であったが、黒人男性のそれは2.2%減少した。

年齢:どの年齢階層でも女性の賃金上昇率は男性のそれを上回っている。
職業別:女性は弁護士や会計士、医師などの高給職への進出が目立つのに対して男性は、従来女性が大部分であった職場、たとえば」銀行の窓口、交換手、司書などの職場に入りつつあるのが大きな特徴となっている。女性が、職業訓練や資格を要する看護師や実験助手などの職場の大半を占めていることに変化はない。一方男性が女性を凌駕しているのはIT関連の職域である。

しかし、男女間格差が、縮小したとはいえ、絶対額では絶対額では、女性は、たとえば35-45歳の階層では週給で200ドルの差が存在している事実は見過ごすことはできない。

そして、USA Today紙も言っているが、「女性の進出が、男性の職域を侵しながら拡大していることは問題である。なぜならゼロサムゲームの勝利者に女性がなっても社会全体からみれば「幸せ」が増大したことにはならないからである。



オバマの米国金融改革法案両院通過 A Sea Change

2010-07-16 | 米国・EU動向
2010年7月16日(金)

米国上院が60対39で、オバマ政権が悲願ともしてきた金融改革法(the Dodd-Frank bill)を承認した。

1年の紆余曲折の末、民主党は一部共和党議員の説得に成功し、最終段階まで薄氷を踏む経過を経て、数時間前に上院100名のうち絶対的多数(supermajority)と称される60名の賛同を得たのである。

The Wall Street Journalは、「議会は金融のあらゆる場面を規制する法改正を承認した。これで自動現金支払機から、ウォール・ストリートのトレーダーの挙動までが影響を受けることになる。銀行・証券に対する政府の規制が一段と強化される」と報じ、「大恐慌以来の画期的な改革となる」と冒頭で寸評している。そしてこの新法に与えた表現は「未曾有の大変化」(a sea change)である。

そして, これから大統領署名を経てから、10に及ぶ規制当局側が、この法律の施行細則を決める作業に着手するが、同紙は法律そのものよりも、それをもとにした規制当局の編成の組み換え、数百本に及ぶと予想される細則の内容の方が、影響が大きいと解説している。

また、規制を受ける側も大がかりな準備に入っている。たとえばJPMorganでは、社内に100の作業チームを立ち上げているという。

「規制緩和がすべてを解決する魔法の杖」と信じて、金融・証券活動を市場経済の手に委ねたら、放埓の横行が起こりついには破綻に至った。そしてその次に、政府権限の強化と規制強化へと揺り戻しが起こっている。これは歴史上の「いつものサイクル」である。

今回、オバマ大統領は、経済界からの強い批判と、彼らの激しいロビー活動を乗り越えてついに改革の糸口をつかんだ。フランクリン・D・ルーズベルトから80年目の「世直し大統領」として名を残せるかどうか、これから1年が勝負である。

米経済界、オバマと対決姿勢強める anti-business/pro-union

2010-07-14 | 米国・EU動向
2010年7月14日(水)

Financial Timesは、米国商工会議所会頭のTom Donahue氏とのインタビュー記事を掲載し、ビジネス界とオバマ政権の間にある対立の構図を鮮明に描き出している。その記事の見出しは、「オバマ、企業政策で非難ごうごう」(Obama berated on business)となっている。

米国商工会議所は最大のビジネス界を代表するロビー団体で、今夏にオバマ大統領の失政を追及する「雇用拡大サミット」(a jobs summit)を計画している。それに向けてオバマ政権に対する批判のトーンを上げているが、特に「オバマ大統領が、あまりにも労働組合寄り」(pro-union)で、「規制導入にばかり熱心すぎて、その結果企業はあえいでいる」という点に攻撃の的を絞っている。

Donohue氏は語る。「大統領選挙で、労働組合がオバマ大統領に献金した額は、およそ450億円。これで労組のための政策に熱心な理由がわかる」と手厳しい。これに対して商工会議所側は、今秋の中間選挙で共和党を強く支持することを表明していて、約50億円の献金を行うことを決めている。

民主党は、今週「金融再規制法(the financial re-regulation bill)」の議会通過のために全力を挙げているところだ。これを「企業の活力を削ぎ、投資活動を鈍らせるもの」と同会頭は批判している。

さらにまた、共和党や米国商工会議所が強く反対している環境関連法案には、温暖化ガス削減のための排出権枠を各産業・企業に割り当て、もしその枠を企業が守れなければ排出権を外部購入させるといういわゆる、「キャップ・アンド・トレード」(cap and trade)が含まれている。

一方、産業界を代表する巨大企業GEのトップ、Jeff Immelt会長は、今月初め、イタリアでの民間経済人との夕食会でオバマ大統領を批判したことは既報のとおりである。

「やっと回復し始めたばかりの米国景気に水を差すのが、金融危機後の経済立て直しと称して大統領が取っている『過剰規制』(over-regulation)政策である」と批判したうえで、

「米国経済界は大統領を好きでないし、大統領は経済界のことを好きではない。大統領と、こうも馬が合わなければ(not in sync)どうしようもない」とまで言った。

もっとも、この発言の引き起こした波紋の大きさに驚いたImmelt会長は、今週火曜日に、Financial Timesのインタビューに応じて、「景気は回復している。成長路線は、政府と産業界で整合性がなければならない。成長も雇用拡大もオバマ大統領と産業界にとって等しく重要だ」と、前言を実質的に撤回した。

財界・共和党の連携と、労組・民主党の連携は、米国政治のもっとも基本的な構造であることに変わりはない。オバマ大統領が就任以来、倒産した大型企業の救済を行い、景気刺激のために大型の財政支出を断行したおかげで、産業界も恩恵をこうむったはずなのに、財界は、「大統領を責め」、「共和党支持」を外せないし外さない。

米国金融改革法徹夜審議でようやくまとまる A Tougher Leash

2010-06-26 | 米国・EU動向
2010年6月26日(土)

米国の金融改革法は、昨年12月に下院案が議決されたあと、上院が今年の5月に上院案を議決した。米国議会の運営規則に従い2週間前から、両院から選ばれた43人の議員で構成される審議会の場で、両院案の一本化に向けての調整が行われてきた。

そして20時間に及ぶ激しい応酬が行われたあと、金曜日朝の5時に、調整案に関する合意を見た。今後は、来週再び両院それぞれで再投票に掛けられたあと7月4日にオバマ大統領の署名を得て成立することとなる。

The Wall Street Journalはこのマラソン審議の模様を、「議場は緊張(tension)が走る場面、脈絡を失った議論が横行する場面(levity)を経て最後は疲労困憊(exhaustion)で力尽きた」と描写している。またFinancial Timesはその見出しで、「涙と癇癪が暴発する鉄火場」(Tears and tantrums of those in the boiler room)の趣があったことを伝えている。

そして、WSJは合意に達した金融改革法を評して、「今後数十年に渉って金融界を規制する画期的なもの」と論評し、「リーマン危機の際に多額の政府資金すなわち税金で大きな金融機関が救済されたような事態を繰り返さないための法律」であると解説している。そして、「これで大金融機関は、より厳しい引き綱に結わえつけられる」(Large financial companies are facing a tougher leash.)と結論付けている。

法案には、消費者保護、デリバティブ取引制限、政府介入の権限強化、巨大金融機関の監視、銀行の自己勘定投資の制限、巨大金融機関とヘッジファンドへの特別課税などが含まれている。


オバマ、アフガン司令官失言に激怒 The Runaway General

2010-06-23 | 米国・EU動向
2010年6月23日(水)

音楽芸能雑誌”Rolling Stone”の最新号に掲載された、McCrystalアフガン駐留米軍最高司令官とその側近への密着取材記事『逃亡将軍』(the Runaway General)が、ホワイトハウスを揺るがせる大失言(gaffe)事件と発展している。

その雑誌記事は、Rolling Stone誌のネット版には、発行前ながらすでに全文が掲載されている。政権批判を縦横無尽に繰り広げたのは、オバマ大統領が、昨年就任直後に、「NATO軍をアフガニスタンから2011年7月までに撤退させる」と宣言して以来、信任してきた同将軍である。将軍が側近とかわした赤裸々な会話の記録が記事になったのである。

オバマ大統領は、この記事に激怒し、同将軍を直ちにワシントンに召喚し直接査問することになったと、三大TVネットワークは言うに及ばずThe New York Times、The Wall Street Journal、Financial Timesなどの一流紙も一斉に、オバマ中東戦略と対タリバン戦争の今後に極めて影響の大きい事件として報道している。

仔細にその発言を読めば、内容は同将軍と側近の交わした、いわば「現場の兵士たち」の「軽口」の政治家や外交官批判であるが、これをTimeやNewsWeekではなくRolling Stone誌に取材させ、全く記事内容に頓着しなかった同将軍の真意の方こそ謎である。問題が起こって将軍は、件の記者取材を仲介した報道官を解任した。

どんなことを将軍は言っていたのだろうか?

たとえば、Joe Biden副大統領のことを、「Baidenて誰のことだ?Bite meていったの?」と完全無視を装う発言。かつて同将軍は、公式記者会見のあと、Biden批判をしたことがあり、その時もオバマ大統領から専用機内に呼ばれて、叱責を受けたことがある。

Holbrookアフガン問題担当政府代表に関しては、「あいつのメールは開きたくもないね」と侮蔑。そのほか国家安全保障補佐官や、しょっちゅう喧嘩をしているアフガニスタン大使などもなで斬りにされている。

そしてオバマ大統領についても、「就任時はアフガンのことも、私のことも知らなかった」と評し、初めて軍幹部とホワイトハウスで面会した時は、「将軍たちに囲まれて萎縮されていたね」といい放題。

McCrystal司令官は、ホワイトハウスの激怒を知って、「間違った判断にもとづく過ちであり、決して起きてはならないものでした。私は大統領と安全保障担当官、それに文民高官や戦場にいる兵士たちには多大の尊敬の念を抱いています。そしてこの戦争を成功裏に遂行させるよう全力を挙げます」との謝罪のメッセージを発したが、その命運は水曜日のホワイトハウスでの大統領との会談後に決まる。

アフガン戦争は、開戦以来8年を超え、ベトナム戦争より長く戦っていることになった。米軍の死者は1,000名を超え、英軍の死者は300名を超えた。隣国パキスタンとアフガンを自由往来するタリバン制圧のめどは立たない。ホワイトハウスと、戦場の間のぎすぎすした関係がこの「大失言事件」の背景にある。




米議会BPたたきに、英大衆紙一斉激怒 Stalinist Show Trial

2010-06-19 | 米国・EU動向
2010年6月19日(土)

木曜日に行われた米国下院小委員会の公聴会に召喚されて、宣誓証言を行ったBPのTony Hayward氏に対する追及は厳しかったことは昨日の本欄でも取り上げた。

一方同氏の「英国流」の「慇懃無礼」を地で行く対応が米国内での反発を買った。その結果、BPの会長は、事故対策を同CEOの職務範囲から外すとの決断を余儀なくをせざるを得なくなた。

一方、英政権は、Cameron首相を含めてBPの責任を認めつつもBPには同情的である。それでも中には、オバマ政権の言動を過剰反応としつつも、「これほどの環境汚染が発生している状況では致し方はない」との見方を公にする人もいる。そしてほとんどの政治家は、様子見状態である。

しかし、おさまらないのは英国の世論である。

Tony Hayward氏が公開の席上で、米国の議員たちに7時間にわって面罵に近い扱いを受けたことに激怒する庶民感情を直截的に代表するのが、発行部数を誇る日刊タブロイド紙であり、Washington Postは、各紙の紙面を米国民に紹介している。

まず、日本でいえば「夕刊フジ」に対応するThe Sunは、憤懣やるかたない論調で、「唾棄すべき反英感情」と切って捨てている。

Daily Mail:「Hayward野蛮な言葉による拷問(a savage grilling)を受けた。議場はまるでローマ時代の見世物処刑場と化した。彼と会社は、『公敵』("Public Enemy No. 1.")の扱いを受けた」

The Daily Express:「Haywardは、百叩きの刑に処せられた(a caning)。たっぷり退職金をもらって英国に帰ったらどうか、などとの言辞を議員が弄するのはそれだけで、反英感情が見え見えで、語るに落ちている」

「米国の飽くなき石油がぶ飲み社会構造こそがそもそも問題なのだ。深海底まで油を求めなければならないからこのような事故も起こる。それを改めるまでは、非難は偽善だと言っておく」

「VirginのBranson氏の言うとおりだ。木曜日の査問は、スターリンの公開見せしめ裁判(a Stalinist show trial)だった。ひざまずいて非を認めているBPを何回も蹴飛ばしているのがオバマ大統領だ」

そして米国の人気TVショーに出て、「BPの失敗は英国全体の責任」と言ったアカデミー賞受賞の大女優 Helen Mirrenにも向けられた。

The Daily Express:「そんなことを言うのは売国奴だ(treachery)」。

Daily Mail:「彼女にふさわしいのは、大英帝国勲章も受章している淑女として、エリザベス女王に扮した経験を生かして、オバマ大統領に、英国を敵に回すたわごと(anti-British rhetoric)をおやめなさいと優雅に諭す役のはず」。



BP問題、米英二国間政治問題化 'BEST PUBLIC RELATIONS'

2010-06-11 | 米国・EU動向
2010年6月11日(金)


アフガニスタン訪問中の英国のDavid Cameron首相は、水曜日のNY株式市場でBP社株が暴落したことに関して、「BPを支援していきたい。今週末のオバマ大統領との電話会談で本件も取り上げたい」と発表し、同社株はその発言を好感して前日比11%高と急反発した。

しかし事故以来失ったBP株の時価総額は約8兆円、率にして50%に達している。BPは私企業としては、英国経済の中核に位置しており、その収益は、多数の年金生活者への配当原資として極めて重要な意味をもっている。それゆえ、BPの帰趨は、保守党新政権にとって無視できない政治問題でもある。

BPのCEO Tony Hayward氏は、17日に米国議会に召喚されており証言を行う。この前に、Cameron首相としてはどうしてもObama大統領と話しておかねばならないという切迫した事情がある。

一方、オバマ大統領は、国内世論に呼応する形で、連日BPに対する圧力を強める発言続けている。それは長年にわたる政府の石油業界の探鉱・試掘・生産に関する許認可と監督の甘さが、今回図らずも露呈し、しかも4月20日に発生した今回の事故への初動対応が遅れたことへの非難をかわすためでもある。

大統領は、Tony Hayward氏の個人に対しても、「自分が責任者であればとっくに辞任させている」とまで言い切り、今回の事故対策費用と損害賠償は、「全額同社に負担させ、ビタ一文(every dime)米国は負担しない」と宣言している。

議会側も、有力議員から、「BPは配当を中止すべきである。原資があるならすべて事故対策につぎ込め。それがBPにとって最善のPR活動('BEST PUBLIC RELATIONS')だ」との趣旨の発言が相次いでいる。現在メキシコ湾岸の石油探査・採掘活動が停止しているが、これに伴う休業補償もBPに求めるという動きも出始めている。

原油流出は、3度目に適用された工法で部分的に流出原油の回収に成功しているが、あくまで部分的なものにすぎない。現在日量2500klが回収されているが、本格的な対策による完全封じ込めは夏から秋以降になることが明らかにされている。一方、重質の油膜が、水曜日にFlorida海岸に到達しており、被害地域が拡大している。生態系に対する影響は深刻であることは連日のメディア報道で米国民の最大関心事になっている。

事故発生から52日間で、BPはすでに対策費用を1430億円支出しているが、そのうち個人ベースの被害補償は、39000件に対して53億円が支払らわれたと、Reutersが伝えている。

「木曜日のBP株急反発の裏には、BPの窮状を見た、中国のオイルメジャー、PetroChinaが買収提案を行うのではないかといううわさが市場関係者の間で駆け巡ったこともあった」との、アナリストの意見をReutersが紹介している。



NY株下落、引き金は欧州財政危機とBP  The time has come

2010-06-10 | 米国・EU動向
2010年6月10日(木)

数時間前に引けたNY市場では、午前中市場心理にとり重要な1万ドル台(the psychologically important 10000 level)にまで載せたが、その後その上昇は悪い材料によって入り帳消しにされ。結局ダウ工業株30種は40.73ドル(0.41%)安の9899.25ドルまで下落した。

午前中の上げを支えたのは、バーナンキFRB議長の米国景気の先行きに関する楽観的な議会証言と、5月に対前年比で50%近く増加した中国の輸出回復のニュースであった。

一方大引けにかけて一方的な下げに転じた大きな理由としては、まずドイツのメルケル首相が「景気刺激策を撤回する時が来た」(Chancellor Angela Merkel of Germany says the time to withdraw stimulus has come.)と宣言したことが欧州の景気後退懸念を強めたことがある。

さらに、メキシコ湾の原油流出事故の補償問題で、オバマ政権の強い圧力によってBPが配当の減額ないしは中止に追い込まれるとの懸念が広がったことである。年金ファンドをはじめ機関投資家はじめ投資家は一斉にBP株を売りに出た。

BPの株価は、水曜日15.8%安の29.20ドルまで下落したが、事故発生から7 週間で、時価総額は半分になり、金額にして8.2兆円を失ったことになる。BPの社債の価格は下落し、債務保証保険の料率も跳ね上がっている。

BPについては、他社による買収や、破産のうわさが市場関係者の中で広まりつつあることが嫌気を増幅したとBloomberg放送が伝えているが、同社の今後の帰趨に関しては、米国内の政治状況が強い影響を持ち始めている。

議会内には、原油流出阻止に資金を優先的に使うべきだとする意見が強まり、オバマ大統領も、「一銭たりとも損失補償責任から見逃さない」と言明している。現在BPの損失額は、3.3兆円程度と推定されるとThe Wall Street Journalは報じている。

BPは関係4州政府には対策費用を支払い始めているが、個々の企業・個人からの損害賠償請求にも支払いに応じている。小額の請求にはすべて満額支払ったとしており、その額も49億円になっている。

オバマ大統領は先の「一銭たりとも(a dime) 」という発言に続けて、BPに対して、「個人請求者を見殺しにするな」と警告を発している。( Mr. Obama warned BP not to "nickel and dime" claimants.)




ギリシャ破綻からユーロ危機に拡大  ECB as An Exit Vehicle

2010-05-16 | 米国・EU動向
2010年5月16日(日)

先週金曜日、通貨ユーロは、月曜日の対ドル最高値1.3093から続落し、2008年11月以来の安値1.2359で引け、1週間で実に5%も減価した。

ギリシャに続いてスペインとポルトガルが財政緊縮政策(austerity pacakges)をとることを発表し、ユーロ圏の経済成長が大きく減速するとの懸念が市場を覆い、外貨準備通貨としてのユーロへの信認は完全に失われた。

EU内でPIGSと総称されたポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペインという周辺弱小国(peripheral small economies)の国債は、リスクと引き換えに高利回りを狙ったPimcoなど米国系の機関投資家が買い進んできたが、ここに来て完全に流れが変わり、資金をどんどん引き上げている。

「ギリシャとポルトガルはもう買えない。債務繰延(restructuring)のリスクが高すぎる。もう金主たちは国債に手を出すなと指示してくるから買えないのだ」とPIMCOのファンドマネージャーの言葉をFinancial Timesが伝えている。

一方欧州中央銀行(ECB)は、先週緊急対策の一環として、ユーロ圏内各国の国債の買い入れを発表し、国債の投売りに歯止めを掛けようとしている。しかしこれに対し「ECBのこの政策は逆作用(backfiring)する可能性が高い」との市場の声を同紙が伝えている。

国債を保有している銀行や投資家は、ECBが買うという安心感から、逆に保有から売りに転じて、国債は売り浴びせられるかも知れない。すなわちECBは投資家の出口(a vehicle to exit their positions)として機能することになるわけである。

また、ECBが各国の国債を買い続けると、大量のユーロ通貨が市場に注入されるが、それによる過剰流動性を再吸収するための政策方針は来週ECBが説明することになっている。金融の量的緩和策との兼ね合いはどうするかが問題となる。

そもそもEU内といえども各国財政政策は、国家主権の壁に阻まれて、統一的な政策が取れない。一方各国の経済の規模と成長力に大きな差があるのに、それを単一の通貨で16カ国を結びつけている。これが通貨ユーロの持つ制度設計上の基本的欠陥である。国家財政と徴税権は各国に残したままでは、単一通貨維持は不可能であることが証明されつつある。

EUの「指令」で緊縮策を強制された各国では、「国民」が異議を唱える。アテネではすでに暴動化した「異議申し立て」は、今週マドリッドや、リスボンでも起こる可能性が高い。公務員の給料の引き下げ、一部年金の凍結と、出産手当て(baby checks)の廃止を決めたスペインで今週何が起こるか。

ユーロ16ヶ国の危機は、EU27ヶ国の危機に拡大する可能性がある。英国新政権の財政緊縮政策によっては、ポンドもさらに売り浴びせられるかもしれない。

英国、保守党・自民党連立内閣電光石火に成立 A Love-in

2010-05-13 | 米国・EU動向
2010年5月13日(木)

英国の総選挙は5月6日に行われ、David Cameron率いる保守党(Conservatives)が306議席、与党労働党(Labour Party)が258議席、Nick Clegg,率いる自由民主党(Liberal Democrats)が57議席を獲得し、ブラウン前首相が率いた労働党は13年ぶりに政権の座を明け渡した。

選挙戦中これら3党の主張の差は大きく、政治的対立はきわめて厳しいものがあった。結果はどの党も絶対多数を確保することができず、特に世論調査結果に反して保守党も自由民主党も期待されたほどには議席を取ることができなかった。

しかし、開票結果が分かってからの各党の連立政権樹立への動きは早かった。まず労働党と自民党の連立形成が不可能とわかった時点でブラウン前首相は早々に退陣を表明した。

また自民党内部では左派が保守党との連立に強硬に反対したが、Nick Clegg党首は、「それでは労働党と組むしかない」とたくみに反対を封じて、保守-自民党連立政権が誕生した。

新内閣の性格を的確に現している表現を、Financial TimesとBBC放送の報道から拾ってみる。

The unlikely new ruling coalition(誰も現実化するとは思わなかった連立政権): 両党の主張があまりにへだたっているので、連立基盤が脆弱であることを指している。このため両党は、今後5年間は総選挙を行えないように選挙制度改革を立法化することで、簡単には連立離脱ができないようにしようとしている。

A new kind of government:両者は、経済・財政政策などで隔たりが大きいだけでなくあれだけひどい中傷合戦の後遺症が残っていることを会見でも認めた。この新政権の性格つくりのために、Nick Clegg党首は、「連立内閣では対立ではなく協力を旨とする『新しい形の政権』つくりをしよう」と呼びかけた。

A “love-in”: 最初の記者会見に臨んだ両党首は、「巨額の財政赤字削減や防衛問題での意見の違いを乗り越えて真剣に取り込む」姿勢を示し、お互いに旧友のごとく芝居気タップリに冗談を言い合った。この様子を記者団の一人が「ベッドイン」と表現したわけである。「同床異夢」の危険をも示唆しているのかも知れない。

John F. Kennedy: 1812年以来の最年少宰相となったCameron氏は、就任に際して、ケネディの大統領就任演説を模しているとFinancial Timesが評している。

「ここ英国により責任感あふれる社会を築くよう努力したい。社会に求めるばかりではなく、社会にどれだけ借りがあるのだろうかと、またそしてそれ以上に、社会に何をすることができるかと、自問しよう」(When we don’t ask, ‘What am I just owed?’ but more, ‘What can I give?)

ベテラン労働党ブラウン党首が、首相を辞任しさびしく官邸を去っていく姿と、若くエネルギーに満ちたキャメロン新首相とクレッグ副首相の二人がにこやかに記者会見に臨むTV報道を見た日本の有権者は何を思ったのだろうか。



ダウ続伸、米国経済復調か Upbeat signals on US economy

2010-04-15 | 米国・EU動向
2010年4月15日(木)

NY株式市場は数時間前に続伸で引けた。S&P500Sは約6週ぶりの大幅高の1,210.65で、1200ドルの大台にのせた。また、ダウ工業株30種平均は103.69ドル(0.9%)高の11123.11ドルとなった。

発表が始まった第1四半期決算の出だしが好調で、今後大手も引き続き好調決算の発表が続くと予想される中、3月の小売業績が予想を上回る伸びを示したことを率直に反映した。The Wall Street Journalは、これを「景気回復の証拠は数多」(Evidence mounts of strong recovery)と見出しにつけて報道している。

また、Financial Timesは、同日のバーナンキ連邦銀行議長の議会証言を、「強気の景気見通し」(a bullish tone on the economy)、そして、「見方は明るくなった」(upbeat)と評している。

同議長は、議会証言で、「われわれは、緩やかな景気回復軌道(a path to moderate recovery)にある。二番底の危険は否定できないが、数ヶ月前に比べればその可能性は低くなっている」としたが、同時に「景気にはまだ足枷(“significant restraints”)が残っている。なかなか下がらない失業率、低迷する住宅建設、連邦政府・州政府の惨憺たる財政状態がそれだ」との警告も忘れなかった。

同議長は同時に、3月の公開市場委員会(FOMC)の「連邦銀行は、相当期間例外的に低い金利水準を維持する」との発表通り、米国経済が完全に回復するまで政策を継続すると確認した。


メディアによっては、この後半部分の警告を中心にして報道しているところもある。全体の証言トーンが、強気(bullish)で明るい(upbeat)であったことは変化としてより注目すべきなのであろう。

また業績回復の著しい第1四半期決算を公表したJPMorganのCEO Jamie Dimon氏も、NYで「景気がふたたび失速する危険は薄いとし、景気の底堅さに対する投資家の自信が戻った」とのコメントしている。しかし、同時に同社の復配は、「雇用と消費の本格的回復を確認するまで(until it saw sustained rises in employment and continued good news from consumers)は見送るとしている。

このように有力な経済人が、二人とも、「景気の二番底の可能性は低い」(the risk of a “double-dip” recession)としながらも留保条件をつけたことで共通しているので、「楽観しつつ慎重な態度を取っている」ことに注目しておく必要がある。






健保改革に15州が違憲訴訟 the Supreme Law of the Land

2010-03-24 | 米国・EU動向
2010年3月24日(水)

米国東部標準時の日曜日の深夜11時過ぎに、下院で219対212の僅差ながら、民主党が過半数の216票を押さえ、同党が半世紀にわたってその実現を目指してきた健保改革法が成立した。

しかし、ここにいたるまで1年を要し、当初法案からは大きく後退したものとなり、最後の段階で民主党議員のうち34名が反対に回り、共和党議員が全員反対したことが、この法案をめぐる政治的情勢の複雑さと難しさを雄弁に物語っている。

ABC放送は、この大統領署名後の第一の反応として、「大統領の署名が乾ききらないうちに14州が違憲訴訟を提起した。新法は憲法が保障している州の特権と個人の権利を侵害しているというのが訴因である。具体的には、州側は今回の法律で国民に健康保険に加入を強制し、財政的な負担を強いることが自由の侵害であると主張している」と解説を加えている。

また訴訟を提起した州のひとつであるフロリダ州政府の弁護士の、「この法律を実行する財政的な余裕は州には無い。憲法では、連邦政府が州や個人に一方的に何かをすべきと強制することを許してはいない」という意見を紹介している。

また州レベルの反旗として、少なくとも36州において、州憲法に則って健保関連支出を拒否ないし制限する州法の成立を目指している。このあたりは、連邦と州の二重構造となっている米国政治システムの複雑なところである。

しかし、連邦の権限は最終的には州権を超越するという「連邦法優先原則」(the supreme law of the land)によって退けられることは、法律家であれば誰でも知っていることなので、あくまで州側の政治的ジェスチュアに終わるのは間違いない。

一方、共和党は、今週水曜日から始まる上院での健保改革法への下院が付けた付帯法案(the fixes)の成立を絶対に阻止するために、最後の抵抗として、この法案に対して多数の修正案を動議して時間をかけさせ廃案に追い込むという作戦を考えている。

しかし、上院民主党議員団は、先に法案が上院に戻された段階で、「過半数の投票でそれを可決させる」との言質を下院民主党に与えているので、まず可決の公算は高い。

Financial Timesは、オバマ大統領の「上院は速やかに、健保法案への改善議案を可決するはず」との言葉を紹介して記事を結んでいる。


オバマ健保改革、明日天下分け目 On the Verge of Victory

2010-03-20 | 米国・EU動向
2010年3月20日(土)

就任以来紆余曲折の1年を経て、明日日曜日にオバマ大統領が政治生命をかけている健保改革(healthcare reform)の上下両院決議の一本化法案が、下院の投票にかけられることとなった。情勢は「ほぼ多数を得て法案は通過の見通しは立った」(on the verge of victory)とFinancial Timesが報じている。

議会予算局が作成した最新の法案に基づく所要費用見積もりは『今後10年間で9400億ドル(94兆円)』となり大統領の試算に近いものが出てきた。それに基づいて、オバマ大統領は、「一世紀にわたる論争に決着をつけるべく、日曜日に歴史的な投票が行われる。政争の具としてはどういうことになるかには関心が無い。私はこれが正しい道であると信じるのみである」(I don’t know how this will play politically. But I do know it is right.”)と演説した。

昨年末以来、上下院で別々に採決された法案の一本化作業が行われてきたが、その作業は、オバマ大統領がクリスマスのころに予想していた以上に難航し、大統領とPerosi下院議長は、ここ数週間民主党内の反対派議員の説得工作に全力を挙げてきた。

下院民主党では、前回の投票では、40人の反対者が出た。しかし両院決議の一本化にあたっては、さらに上院案の内容に反対する議員が出てきたことを無視できず、また世論の逆風もあり216票の必要数を集められるかが微妙とされてきた。

ここまで持ってきた大統領の「意思の力」と「政治的妥協」が奏功するか注目しよう。



オバマ健保改革イースター休会迄が山場 Until Easter Recess 

2010-03-01 | 米国・EU動向
2010年3月1日(月)

米国の国論を二分している健康保険改革法案の行方が混沌としてきた。先週木曜日に、オバマ大統領やNancy Pelosi下院議長を始めとする民主党有力議員は、大統領選で敗れたマケイン議員を始めとする共和党議員団と、両党妥協案(a bipartisan agreement)を探るべくいわゆる頂上会談に臨んだが、結果は双方の隔たり(polarization)の大きさを再確認することに終わった。

健保改革案は、下院案は昨年11月に議決され、上院案は昨年のクリスマス休暇寸前にかろうじて可決された。現在は、米国議会の規則にしたがって、上下両院の調整案を作成し再度、両院の議決を経て、大統領の署名によって正式に発効する過程にある。

しかし共和党はオバマ政権の人気低下を背景に頑強な抵抗をしており、議会内では採決に入ると数では民主党に勝てないために、時間稼ぎによって他の重要法案も含めて上院での審議を遅らせる戦術に出ている。

こうした局面を打開し、両党合意を模索するための会談であったのであるが、共和党のマケイン議員は敵意むき出しで、オバマ大統領の上院決議に関する議会対策を「裏工作」(backroom deals)と攻撃するなど、対立をあおるための議論を蒸し返した。

これにはオバマ大統領は、「もう選挙は終わったのだ」("We are not campaigning any more. The election is over.")とたしなめる一幕もあった。総じて「これはオバマ大統領の製作・演出による「政治劇場」(a political theater)に過ぎなかった」というのが共和党側の今回の協議に対する評価である。

この後、Pelosi下院議長は、週末のABC放送の人気番組’This Week’に出演し、本案に関する議決結果が危ぶまれている上院の状況に対して、「十分審議を尽くしてもらえれば、法案の通過に向けてよい結果(a "very positive result")が得られるとの期待を表明した。ただし同時に、「上院通過に十分な得票(100のうち60票)を確保できるかどうかは、ここ数週間の展開しだい」との懸念も示したのである。

秋の中間選挙に向けて改選対象議員は浮き足立っている。こうした状況下、4月上旬のイースター休会までが、オバマ大統領に与えられた時間である。


EUのギリシャ救済策に市場は落胆 Message of Solidarity

2010-02-12 | 米国・EU動向
2010年2月12日(金)

EU加盟27カ国首脳会議は、サルコジ仏大統領とメルケル独首相の主導によって、ユーロ防衛のため、財政破綻で国内の混乱が続くギリシャ救済で合意し、共同声明を出したが、具体的な内容を欠いていたため、市場は失望し、ギリシャ国債相場と通貨ユーロは下落した。

Financial Timesの見出しは、「EUギリシャ支援決議、市場沈静化に失敗」でありABC放送の電子版の見出しは、「EUギリシャ支援決意表明するも具体策なし」となっている。

何よりも現在の状況を象徴的に物語っているのは、EUがギリシャに明確な連帯のメッセージ(clear message of solidarity)を送ったにもかかわらず、当事国のギリシャが支援をEUに求めていないということである。

ギリシャはEUに対して、今年財政赤字をGDPの4%まで削減し、財政赤字を2012までに解消すると表明したことが今回の支援決議に結びついたのであるが、公式にEU援助を求めれば、当然金融財政政策への介入と更なる緊縮策を受け入れなければならない事態となることを恐れているのである。

ギリシャでは、ストライキが続くなど内政不安が続く中、外圧に屈した印象を国民に与えるわけにいかない政治情勢である。ギリシャでは、街の商店主から、弁護士・医者に至るまで、消費税・所得税を逃れることに罪悪を感じない文化であることは広く知られている。

一方ドイツ側も、ギリシャ救済のためにドイツ国民の税金が投入されることを選挙民に説得できる政治情勢でもない。ドイツでもフランスでも国民にとって、「ギリシャが長年にわたって、放漫な経済政策、経済指標の捏造、公務員の汚職、国民に浸透した脱税行為( Greek profligacy, manipulation of financial statistics, public sector corruption and tax evasion)のつけを払わされるのは真っ平」というのが真情である。

これが、「連帯」(solidarity)と「支援」(stand by Greece)という言葉でしか今回の首脳会議をまとめることのできなかった背景である。