ソダーバーグ監督が「演じている役者よりも本人のほうがハンサムな映画はこれが初めて」というように、あの超かっこいいゲバラ役にしてはちょっと…というベニチオ・デル・トロではありますが、わたしはこの人、けっこう好きです。ベニチオの渋さがあってこそ、ゲバラのカリスマ性が描けるというもの。確かに「モーターサイクル・ダイアリーズ」のガエル君がそのままゲバラを演じるという選択肢もあったと思うけど、彼ではまだまだ甘さが残りすぎる。
本来ならば一本の映画として上映すべきものを2本に分けて第1部、第2部として上映するとは、「レッドクリフ」と同じ手ですな。こういうの、止めてほしいわぁ。せめて2本連続見る客には2本目半額とか特典をつけてほしい。2本分の入場料と2本分のパンフレットを買わなければならないわたしにしたら大変痛い出費ですぅ~(T_T)。
さて、第1部はゲバラがカストロと出会ってバティスタ政権を倒すまでの数年間を描く。その合間合間に後に革命政府の閣僚となったゲバラの国連総会での演説場面などがモノクロで挿入される。モノクロの場面はほとんど実写の記録映像と見間違うほど。また、「現在時間」であるところのゲリラ戦の場面もドキュメンタリータッチの映像なので、観客はゲバラとともに革命戦争を戦っている気分を味わえるというもの。しかし、そうであるだけにシエラ・マエストラの山中を行軍する場面の淡々と暗いのには参った。さすがにサンタクララの街頭戦では手に汗握る迫真の場面が続くのでここではしっかり目が覚めるが、そこに行くまでがつらいです。
しかも、カストロがほとんど登場もしないし活躍もしないため、この革命がいったい何を主張し何を目指して戦われているのかその理念に当たる部分はまったく説明がない。これは既にゲバラについて相当の知識がある人向けの映画であって、これを見てもなぜたった82人のゲリラが政府の正規軍を破ることができたのか(しかも生き残ったのはそのうち12人!)、理解に苦しむだろう。ゲバラが土地の解放を約束して農民達を兵士に加えていったこと、捕虜は殺さなかったこと、政府軍とはいえ大部分が貧農出身の兵士であったためにゲリラに寝返る者も大勢いたこと、バティスタ政権の腐敗ぶりが度を超していたことなど、革命軍が勝利できる条件はいろいろあったのだが、それについては映画を見てもきちんとした説明はないので、予習は必須。
一人の医師であったゲバラがいかに自らを革命家として鍛え上げていったのか、彼の内面をほとんど描かないという、ある意味伝記ものとしては致命的な映画なので、そういう部分はなくてもいい、という人にとってのみ面白い映画ということはできる。この第1部は革命が成功へと向かう高揚感に満ちているため、まだしも後半になるほど面白かったが、問題は第2部である。今度は革命が失敗する話ですからね、暗いよ~。爆睡しないように気をつけたいと思います。
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チェ 28歳の革命
CHE: PART ONE
THE ARGENTINE
アメリカ/フランス/スペイン、2008年、132分
監督: スティーヴン・ソダーバーグ、製作: ローラ・ビックフォード、ベニチオ・デル・トロ、脚本: ピーター・バックマン、撮影: ピーター・アンドリュース(=スティーヴン・ソダーバーグ)、音楽: アルベルト・イグレシアス
出演: ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、サンティアゴ・カブレラ、エルビラ・ミンゲス、ジュリア・オーモンド、カタリーナ・サンディノ・モレノ
本来ならば一本の映画として上映すべきものを2本に分けて第1部、第2部として上映するとは、「レッドクリフ」と同じ手ですな。こういうの、止めてほしいわぁ。せめて2本連続見る客には2本目半額とか特典をつけてほしい。2本分の入場料と2本分のパンフレットを買わなければならないわたしにしたら大変痛い出費ですぅ~(T_T)。
さて、第1部はゲバラがカストロと出会ってバティスタ政権を倒すまでの数年間を描く。その合間合間に後に革命政府の閣僚となったゲバラの国連総会での演説場面などがモノクロで挿入される。モノクロの場面はほとんど実写の記録映像と見間違うほど。また、「現在時間」であるところのゲリラ戦の場面もドキュメンタリータッチの映像なので、観客はゲバラとともに革命戦争を戦っている気分を味わえるというもの。しかし、そうであるだけにシエラ・マエストラの山中を行軍する場面の淡々と暗いのには参った。さすがにサンタクララの街頭戦では手に汗握る迫真の場面が続くのでここではしっかり目が覚めるが、そこに行くまでがつらいです。
しかも、カストロがほとんど登場もしないし活躍もしないため、この革命がいったい何を主張し何を目指して戦われているのかその理念に当たる部分はまったく説明がない。これは既にゲバラについて相当の知識がある人向けの映画であって、これを見てもなぜたった82人のゲリラが政府の正規軍を破ることができたのか(しかも生き残ったのはそのうち12人!)、理解に苦しむだろう。ゲバラが土地の解放を約束して農民達を兵士に加えていったこと、捕虜は殺さなかったこと、政府軍とはいえ大部分が貧農出身の兵士であったためにゲリラに寝返る者も大勢いたこと、バティスタ政権の腐敗ぶりが度を超していたことなど、革命軍が勝利できる条件はいろいろあったのだが、それについては映画を見てもきちんとした説明はないので、予習は必須。
一人の医師であったゲバラがいかに自らを革命家として鍛え上げていったのか、彼の内面をほとんど描かないという、ある意味伝記ものとしては致命的な映画なので、そういう部分はなくてもいい、という人にとってのみ面白い映画ということはできる。この第1部は革命が成功へと向かう高揚感に満ちているため、まだしも後半になるほど面白かったが、問題は第2部である。今度は革命が失敗する話ですからね、暗いよ~。爆睡しないように気をつけたいと思います。
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チェ 28歳の革命
CHE: PART ONE
THE ARGENTINE
アメリカ/フランス/スペイン、2008年、132分
監督: スティーヴン・ソダーバーグ、製作: ローラ・ビックフォード、ベニチオ・デル・トロ、脚本: ピーター・バックマン、撮影: ピーター・アンドリュース(=スティーヴン・ソダーバーグ)、音楽: アルベルト・イグレシアス
出演: ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、サンティアゴ・カブレラ、エルビラ・ミンゲス、ジュリア・オーモンド、カタリーナ・サンディノ・モレノ
「観たい!観たい!」
と思いつつ、英語とフランス語の重圧に耐えられるか…小心者のわたしは、未だ、映画館に足を運んでいません…
でも、このレビュー見て、「やっぱり観に行きたい!」と強く思ったのでした。
…でも、日本に帰ってからでもいいかな…
しょぼいわたしです…
わたしは、ポスターで見ただけですが、ガエルではなく、ベニチオ・デル・トロにして正解だと思いました。不細工ですが(笑)、ゲバラの雰囲気をすごく漂わせてる気がしました。
「…こいつ、さすがやな…」って、ポスターの前でつぶやいてしまった、わたしです。
英語でもフランス語でもなく、スペイン語です! そちらではフランス語の字幕ですね(^^)
ベニチオがかっこいいですよ。ゲバラもまあそこそこかっこいいです。フランスでは二部上映かしら? だとしたら第1部は絶対、見るべきですね。第2部はちょっとしんどいみたいですよ。
演じているベニチオはかっこいい。そして、描かれているゲバラじたいは伝説の人、というほどには偶像化されていないけれど、そこそこかっこよく描かれている、という意味です。
う~ん、要するに、革命の必要性とゲバラ個人の内面というこの種の作品の二本柱がともに描けてない、ってことでしょうか。これって、きつい言葉は使ってないけどどん底評価?
おまけに、革命を描いた作品にとって「暗い」というのは致命的評価だと思うんですよ。革命活動の中にある「希望」が見えてないというか、結局「わかってない」人が作った映画ってことだから。
そうか、そういう映画なのか。少々期待してただけに残念。(自分で見たらぜんぜん違ってたりして(^o^;;;)
> 革命の必要性とゲバラ個人の内面というこの種の作品の二本柱がともに描けてない
というか、正確には「描く気がない」のです。これはそういう映画ではなく、ゲバラを追体験する映画なのです。だから、ゲバラのことを知っている人、キューバ革命について知識のある人向けのマニアックな映画であって、ゲバラが山岳戦を戦った様子をリアルタイムで体験したい人のためのシミュレーション映画だと思ってください。
もちろんゲバラの高潔な人柄は描かれていますよ。それに国連総会の演説はかっこいいし。問題は第2部です。第1部以上に暗くてたまらんわ~。第2部の感想文は後日アップします。