ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ぼくを葬る(おくる)

2007年12月03日 | 映画レビュー
もしあなたの余命があと数ヶ月と言われたらどうしますか? しかもあなたはまだ31歳だとしたら。この映画の主人公、写真家のロマンはある日突然、癌死を宣告される。彼は放射線治療を拒否し、残された日々を孤独に生きようとする。ゲイの恋人とも別れ、家族にも真実を告げず、淡々と死を迎えようとするのだ。だが、そんな彼もやはり気持ちは揺れるし、死は恐ろしい。ただ一人、離れて暮らす祖母の元へ行き、真実を告げる。そのおばあちゃんが、ジャンヌ・モロー! 懐かしい。一目見た瞬間に、「あ、あのたらこ唇はジャンヌ・モロー!」と思ってしまうからやはりこの大女優の存在感はすごい。おばあちゃんとの場面は胸にこみ上げるものがあるが、意外と淡々としているのが日本人から見ると不思議な気がする。

 家族愛が大きなテーマになっているこの物語では、その愛の形が少しいびつでひねりがある。同性愛者であるロマンは家族を作らないし、自分の子どもは残せない。そして、自分を育んでくれた家族(姉)との関係も悪い。その彼が死を前にして姉と和解し、自分の子どもを遺そうとする。同性愛者がどうやって子どもを作るのか? このシーンはいささか驚いてしまった。

かなりハードなゲイ・セックスシーンが出てくるので、それさえクリアできれば、あとは実に美しい映画です。特にラストシーン。ああいう死に方もいいなぁと思ってしまった。そうだ、死に方は人それぞれ、どんなふうに死のうと勝手だし、死に方は自分で選びたいものだ。自殺以外の死に方であれば、それはもう何処でどう死のうと誰と死のうといいのだと思う。ロマンの死に様は幸せそうで、寂しそうで、悲しくて、とても美しい。彼は遺される家族の悲しみや後悔も顧みず、究極のわがままを通した。彼の家族愛は結局のところ自己満足にすぎない。しかしこれは、孤独を受け入れる強い意志がなければできないこと。強い人は美しい。メルヴィル・プポーの美しさは奇跡のようだ。

 とにかくわたくしとしましては、メルヴィル・プポーが美しいからそれだけで大満足の映画。もうメロメロ。ずっと画面に釘付けでメルヴィルの表情ばかりうっとり眺めていた。(レンタルDVD)(R-15 )

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LE TEMPS QUI RESTE
製作国 フランス,2005年、上映時間 81分
監督・脚本: フランソワ・オゾン、製作: オリヴィエ・デルボスク、マルク・ミソニエ
出演: メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ダニエル・デュヴァル

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